「最近、仕事ばかりで女性ホルモンが足りなくて~」「恋愛して、女性ホルモン増やさなきゃ!」……女性同士でこんな会話を交わしたことはないでしょうか。女性ホルモン=よくわからないけど女性をすてきに見せるモノで、これがないと魅力が下がってしまうように思われていますが、これはまったくの間違いです。
女性ホルモンとは、脳の指令を受けて分泌されるものであって、自分の意志で増やしたり減らしたりすることはできません。恋をしてもヨガをしてもピンクの服を身につけても増えませんし、仕事ばかりで恋愛やセックスがごぶさたでも減りません。女性ホルモンが増えればフェミニンな容姿になって、減ればヒゲが生えてくるということもありません。
というのも、女性ホルモンが分泌される目的は、妊娠して、出産するためのものなのです。現代社会においては、子どもを持つも持たないも個人の自由ですが、生物としての私たちの身体は子どもを宿し、産み出すため、そしてそのために身体を維持するために作られている部分が多々あります。
そのため、私たちはふだん意識することがなくても、自分でコントロールすることができなくても、人生の多くの部分を女性ホルモンとともに過ごします。
女性ホルモンの種類と役割
女性ホルモンには、主に次の2種類があります。それぞれ、妊娠・出産に関わる役割とともに紹介しましょう。
エストロゲン(卵胞ホルモン)
主に卵巣から分泌されます。子宮に作用して、子宮内膜を増殖させ、厚くすることで「受精卵のベッド」を作る働きがあります。
プロゲステロン(黄体ホルモン)
妊娠を維持するためのホルモンです。卵胞(らんほう)という、卵子をなかで育てるカプセルのようなものは、その役割を終えると黄体化します。その組織から分泌されるホルモンで、受精卵が着床しやすいよう子宮内膜のベッドを整えます。
どちらのホルモンも常に一定量分泌されているわけではなく、約28日周期のなかで増えたり減ったりをくり返します。その増減がうまく行われていれば「ホルモンバランスが整っている」といわれる状態になり、排卵も生理も正常に起きます。
ホルモンバランスが崩れる、つまりホルモンが正常な増減をくり返さないと、排卵が起きず、生理周期が乱れ、いろんな不調となって女性の身体を襲います。
無排卵月経といって、排卵しなくても生理が起きることもあります。排卵日に合わせて妊活していたつもりが、実は排卵していなかった……ということもめずらしくありません。排卵の有無、ホルモン分泌のバランスは基礎体温をつけることでおおよそ把握できます。
もしホルモンが恋愛をするたびに増えて、彼氏いない歴を更新するたびに減るようなことがあったら大変だということがおわかりいただけたでしょうか。
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年代別!女性ホルモンとの付き合い方
女性は生涯、ホルモンと付き合っていきます。
10歳を過ぎたころ、「思春期」といわれる時期に入ると、卵巣からエストロゲンの分泌が始まります。エストロゲンには女性らしい身体を作る働きもありますから、それまでは性器以外は男の子とあまり変わらなかった身体が、乳房が発達したり身体が丸みをおびたり、女性らしくなっていきます。
10~15歳で月経がはじまり、10代の半ばごろから「性成熟期」に入ります。性機能が成熟し、卵巣機能が高まってエストロゲンの分泌が順調になります。妊娠し、子どもを産むための準備が整ったということです。エストロゲンの分泌量はその後も増えつづけ、30歳前後にピークを迎えます。
30歳ぐらいを境にエストロゲン分泌量は徐々に下り坂となります。40歳を過ぎると、人によっては生理周期が乱れはじめます。いままでより短くなったり、2カ月ほど間があいたり、これまでにない不規則なリズムを見せはじめることもります。
「更年期」といわれる時期に入ると、エストロゲンの分泌量が急激に減るので、さまざまな不調となって表れる人がいます。のぼせや不眠、過度のイライラ。抑うつ状態となり、これまで活動的だったのがウソのように人づき合いを避けたり、家に引きこもりがちになったり……。症状には個人差があり、なんとも感じないまま閉経を迎える人もいます。
現在、日本人女性の平均閉経年齢は51歳といわれています。以後は「老年期」となり、エストロゲンの分泌量は激減します。エストロゲンは骨を丈夫にする役割もあるため、骨粗しょう症になったり骨折などのケガをしやすくなる人がいます。女性の身体は、エストロゲンによって守られていた部分も多くあることに気づかされます。
エストロゲン分泌の急激な減少によって出る不調は更年期障害といわれますが、減少をゆるやかなものにして閉経にソフトランディングするための「ホルモン補充療法(HRT)」が少しずつ広まっています。閉経前後は仕事や子育て、介護などさまざまな事柄が重なる時期、できるだけ少ない負担で乗り切ってください。
配信: カラダのキモチ
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