面会交流で子どもの福祉を実現させる方法と問題点とは?|東北学院大学遠藤教授に取材

面会交流で子どもの福祉を実現させる方法と問題点とは?|東北学院大学遠藤教授に取材

親子法全体を貫く基本方針のひとつに「子どもの福祉(子の利益)」という考え方があります。その「子どもの福祉」をどのようにして守ればいいのか。そもそも「子どもの福祉」とは何なのかについて東北学院大学遠藤教授にインタビューをしました。

 離婚をする際にはさまざまな問題が生じます。その中でも、子どもの処遇や面会交流は重要な問題です。こうした問題を解決するためにはどうしたらよいのでしょうか?

 

親子法全体を貫く基本方針のひとつに「子どもの福祉(子の利益)」という考え方があります。

 

しかし、この「子どもの福祉」があるからといって子どもに関する争いがなくなるわけではありません。「子どもの福祉」というのは、「どこからどこまでが子供のためである」と明確な基準をもったものではないからです。ではどのようにして「子どもの福祉」を守ればいいのか。そもそも「子どもの福祉」とは何なのかについて東北学院大学遠藤教授にインタビューをしました。

 

この記事はそのインタビューの内容を会話形式にまとめたものとなっています。

 

「子どもの福祉」の現状

アシロ取材班

子どもの福祉に関する法的な見解の現状についてお聞かせください。

 

遠藤教授

「子どもの福祉」(民法の表現では「子の利益」となっています。)という概念は親子法全体を貫く基本指針ですが、これによって、子どもに関する紛争を解決する基準が一義的に導き出せるというものではありません。

 

つまり、「これこそが子どもの福祉のための基準である」という決定的基準になるものが存在しているわけではありません。
というのも、第一に親子法は、実親子の成立や切断、養子縁組の成立、親権・監護権に関する種々の決定といった、多様な要素を含みます。

 

これらはそれぞれに独立した課題を持っていますので、それに対応する「子どもの福祉」は一律ではありえません。


また、子どもの監護に関する紛争の場面に限定した場合でも、論者によって、また時代によっても「子どもの福祉」の概念は異なり、ときにそれらは相互に矛盾することもあります。例えば、過去には、幼年期の子の監護者は母親であることが望ましい(テンダー・イヤー・ドクトリン)ということが説かれた時代もありました。今なお3歳児神話などとともに語られることもありますが、裁判規範としてはすでに基準としての役割を終えています。


また、面会交流に焦点を当てて考えてみると、例えば、子どもにとって両方の親との関係性を途切れさせずに維持すべきである、ということが子どもの福祉に沿うとなれば、面会交流は原則として認められるべきでしょう。

 

他方で、子の監護をしている一方の親との関係性が強固になればなるほど、そして、父母間の感情がこじれていればいるほど、面会交流の際、子が両親との間で板挟みになる危険性が高まります(このような状況を忠誠葛藤といいます)。

 

子どもをこのような板挟み状況に置かないことが子どもの福祉だと考えれば、面会交流は慎重にするべきだということになります。「子どもの福祉」の内容をどのように捉えるかによって、面会交流を推進すべきか、慎重に判断すべきか、結果が異なることになります。

 

なお、現在の裁判実務は前者に重きを置き、面会交流を特段の事情がない限りは実施するという立場だと言ってよいと思います。しかし、このような運用には、後者の立場に立った、有力な反論がなされています。


別の観点からいうと、「子どもの福祉」は確かに法的概念ですが、福祉学や心理学など、様々な科学的、学問的知見をもとにしてはじめて形が与えられるものです。そのため必ずしもこれらの知見に精通していない法律の実務家や専門家がその基準を語る際には、抑制的な態度が求められるのではないでしょうか。

 

また、各紛争における「子どもの福祉」はあくまでも個々の事件の特性や親子の関係性に応じて異なります。さらに、個々の特性を無視し、「このようにすると子どもの福祉は積極的に増進する」などとして、子どもの福祉を過度に振りかざすことは、家庭への過度な介入にもなり得ますから、この点への配慮も必要でしょう。


結局のところ、まず法律家がやるべきことは「子どもの福祉にとって害になる」という類型を明らかにし、それを積み重ねていくことで、子どもの福祉の外延を徐々に明らかにしていくという作業ではないかと思います。

「子どもの福祉」親の対処法

 

 

アシロ取材班

では、「子どもの福祉」に向けて当事者がやるべきことは何でしょうか。

 

遠藤教授

今まで述べたように、何か一つの基準に従って事を進めると、それで子どもの福祉が実現されるというわけではありません。

 

その意味では、当事者である父母が、自分たちのエゴからではなく、どんな幼い子であってもその子の人格を尊重し、「子どもの福祉」の実現に向けて協力しようという思いを持つことが求められるのではないでしょうか。

 

当事者が葛藤状態に置かれているときでも、子どものことについてだけは協力し、一緒に考えるべきであるということを改めて認識するための「シグナル」としての役割を担うのが「子どもの福祉」概念であるという視点もまた重要であると思います。

 

他方で、このような葛藤状態に置かれている父母にこの作業を丸投げすることは酷ですから、適切な調整をするサポーターが必要です。

 

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