親の感染も心配
はしかの場合、もうひとつ心配なのが、親の中にも十分な免疫力を持っていない人がいて、感染がさらに拡大する可能性があることです。
はしかのワクチン接種が始まったのは1966年ですが、定期接種となったのは1978年です。また、現在のように2回の接種となったのは2006年。つまり、この間に産まれた人には充分な免疫力がない可能性があります。もちろん、自然感染などにより免疫を獲得している場合もあるので必ずしも免疫がないとはいえません。なので、今からでも予防接種をしたほうがいいです。一度接種した人が、もう一度接種をしても問題はありませんから。
大人の場合、そもそも行動範囲が広いので感染を広げてしまう可能性も高く、また子どもと同じように合併症による重症化のリスクもあります。さらに妊婦の場合は流早産の原因となることもあります。
不安を軽減するためにも予防接種を
当たり前のことですが、新型コロナウイルスをはじめとする感染症の感染リスクをゼロにするのは難しいことです。しかし、だからとって予防接種を見送ることは他の病気にかかるリスクにつながることは間違いありません。
病院はすでに様々な感染対策をしていますし、小児科クリニックに関しては、これまでクラスターが発生したケースはなく、新型コロナウイルスに感染するリスクはとても少ないと思います。しかも、予防接種外来を設けているクリニックや病院は、予防接種を受けに来る元気な子しか来ないため病気をもらう可能性がまずありません。
病院に行くこと自体を不安に感じていることはあると思いますが、その他のリスクや不安を軽減するためにも予防接種はしたほうがいいと思います。これからどのような行動を選択するか、この機会に一度考えてみてください。
森戸やすみ
1971年、東京都生まれ。
1996年私立大学医学部を卒業し、医師国家試験合格。一般小児科、NICU勤務などを経て、現在は台東区の『どうかん山こどもクリニック』に勤務。専門的な学術書と手に取りやすいマンガの中間の方法で育児を支援していきたいと考えている。
著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、『産婦人科医ママと小児科医ママのらくちん授乳ブック』、『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』(メタモル出版)、『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)
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