川上未映子さんの「こんなときには、これを読むのよ!」 Vol.6

川上未映子さんの「こんなときには、これを読むのよ!」 Vol.6

第11回 気になる“あの人”のインタビュー
芥川賞や中原中也賞など数々の賞を受賞した川上未映子さんが、独特な世界観のテーマで「こんなときに読みたい本」を推薦します!どんなテーマで、どんな本が登場するのか、新たな本との出会いをお楽しみください!



≪今回のおススメPOINT!≫

最近わたし、「本当のこと!」とか、「なぜ!」とか「どうして!」とか、そういうのまるっと無かったことにして生きてるなあ……って遠い目をして、しんみりしたときに読みたい本!!

 

たとえば、なぜ人を殺してはいけないか、という「なぜころ問題」がいっときたいそう流行りました。専門家からお茶の間まで、色々な意見や回答があふれ、それはもちろん今も昔も重要かつ有効な問いなのだけれど、しかし「本当のこと」というのは常に危険を孕むものであり、社会の恩恵に与っている「人」という存在には、言えないこともあるのです。しかし、人間社会のルールを共有していない動物たちなら、どうでしょうか。このみっつの作品は、動物を語り手にすることで、わたしたちには言いにくい、見つめにくいものをさらりと目のまえに差し出してくれます。

子どものための哲学対話

子どものための哲学対話(講談社文庫)

永井均(著)
出版社:講談社
『子どものための哲学対話』は、猫のペネトレが主人公で、少年の「ぼく」との対話ですすんでゆく本です。「なぜころ問題」はもちろん、「しあわせとは何か」、「人は何のために生まれてきたのか」、「死んだらどうなるの」などなど挙げればきりがないけれど、いつかどこかで考えたことのある40の疑問について、そのへんの大人ならぜったいに言わないだろう、「本当のこと」について話してくれます。

吾輩は猫である

吾輩は猫である

夏目漱石(著)
出版社:新潮社
『吾輩は猫である』は、もう説明がいらないほど有名な小説ですが、こちらも猫の目を通して社会や人間のあり方の機微を明らかにしてゆきます。

雪の練習生

雪の練習生

多和田葉子(著)
出版社:新潮社
そして『雪の練習生』は、なんとシロクマが主人公です。シロクマの親子三代が生きた、それぞれの社会背景と生活を串刺しにしながら、言葉を獲得してゆく過程、サーカスでのできごと、などをとおして、この小説を読むことでしかふれることはなかっただろう世界が鮮やかに広がります。


プロフィール

川上未映子
川上未映子
1976年、大阪府生まれ。
2007年、デビュー小説『わたくし率 イン 歯ー、または世界』(講談社)が芥川龍之介賞候補に。早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。
2008年、小説『乳と卵』(文藝春秋)で第138回芥川賞を受賞。
2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』(青土社)で中原中也賞受賞。
小説『ヘヴン』(講談社)で芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部文学賞受賞。初出演の映画『パンドラの匣』でキネマ旬報新人女優賞を受賞。
著書に『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』(講談社)、『ぜんぶの後に残るもの』(新潮社)、『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)など。
1976年、大阪府生まれ。
2007年、デビュー小説『わたくし率 イン 歯ー、または世界』(講談社)が芥川龍之介賞候補に。早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。
2008年、小説『乳と卵』(文藝春秋)で第138回芥川賞を受賞。
2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』(青土社)で中原中也賞受賞。
小説『ヘヴン』(講談社)で芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部文学賞受賞。初出演の映画『パンドラの匣』でキネマ旬報新人女優賞を受賞。
著書に『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』(講談社)、『ぜんぶの後に残るもの』(新潮社)、『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)など。

ピックアップ

川上未映子さんの「こんなときには、これを読むのよ!」 Vol.7
川上未映子さんの「こんなときには、これを読むのよ!」 Vol.5
川上未映子さんの「こんなときには、これを読むのよ!」 Vol.4
川上未映子さんの「こんなときには、これを読むのよ!」 Vol.3