乳頭保護器とは

乳頭に痛みを感じて先輩ママや助産師に相談すると、乳頭保護器をすすめられるかもしれません。どのように使うアイテムなのか、乳頭保護器について紹介します。
授乳時の乳頭を保護する器具
乳頭保護器はその名の通り、授乳によって痛みを感じたり、傷を負ってしまったりした乳頭を守ってくれるアイテムです。「ニップルシールド」と呼ばれることもあります。
「赤ちゃんを産めば母乳は出るもの」という印象がありますが、最初は母乳の通り道でもある「乳管」が開通していないことも珍しくありません。詰まりをとるためのマッサージをするほか、赤ちゃんにもたくさんおっぱいを吸ってもらう必要があります。
そんなとき、赤ちゃんの口の形とママの乳首の形がはまらないと、授乳がしにくくうまく吸えません。上手にくわえてもらえるまで、乳首を赤ちゃんの口に入れては離し…を繰り返すこともあります。
元々敏感な部分でもある乳頭は傷つきやすく、授乳期間中は何かとトラブルが起きやすい場所です。つらいと感じたときは乳頭保護器をうまく活用しましょう。
乳頭の大きさが一般よりも大きかったり小さかったりして赤ちゃんがおっぱいを吸いにくいときにも、装着することでくわえやすくなることもあります。
選び方のポイントは3点

大きさの違いや、使用している素材の種類など、今は様々な乳頭保護器が流通しています。購入しようとしても、どれがよいか悩む人も多いでしょう。乳首の形も百人百様です。ぴったりなものを選ぶポイントを紹介します。
自分に合ったサイズを選ぶ
服や靴を選ぶのと同じように「自分の乳頭に合った大きさ」のものを選びましょう。そのためには、乳頭のサイズ確認が重要です。
乳頭の直径を、メジャーや定規などを使って測ります。このとき、測るのは「乳首の直径」で、乳輪にあたる外周ではない点に気をつけましょう。商品によっては、乳首の直径ではなく「乳首の高さ」でサイズ分けされているものもあるようです。
乳頭保護器のパッケージには、商品の対応する直径または高さが記載されています。事前に測っておいた値と照らし合わせ、当てはまるものを選びましょう。もしサイズがわからない場合は、かかりつけの助産師や医師に相談するのもひとつです。
なお、日本のメーカーと海外メーカーは、同じサイズでも対応している大きさが異なります。「前に日本製のLサイズでぴったりだったから」と海外製のもので同じサイズを選ぶと大きく感じるかもしれません。
密着性が高いソフトタイプ
シリコン素材で作られたソフトタイプは、乳頭にぴったりくっつきやすいようにやわらかく薄い設計です。ママも赤ちゃんもあまり「付けている」という違和感なく授乳ができるでしょう。
一般的にワンサイズしかないハードタイプと比較して、大きさがS・M・Lと2~3種類展開しているものが多く、よりフィットしたものを選べるのも利点です。
「上の部分が欠けた半円形」が主流で、装着しながら授乳しても赤ちゃんの鼻を塞ぎません。赤ちゃんの鼻とおっぱいとの距離が近いことで、ママの匂いを嗅いで安心しながら母乳を吸わせてあげられます。
赤ちゃんにしっかり吸われている感覚がわかりやすいため、乳頭を刺激しながら授乳できる点も魅力です。
保護力に優れたハードタイプ
乳頭に激しい痛みを感じたり、深い傷があったりするときは、薄いソフトタイプでは十分に保護できません。乳頭のダメージが重度な場合は「厚み」のあるハードタイプを選びましょう。赤ちゃんの口が直接乳頭に当たらず、摩擦などの痛みをやわらげます。
ハードタイプは「硬さ」もあります。やわらかく赤ちゃんの口元を支えにくいソフトタイプに対して、「哺乳瓶の乳首と似た形状」と硬さから赤ちゃんの口元を安定させやすいのも利点です。
しかし、ママの乳頭の感触とはまったく違うため、赤ちゃんが授乳を嫌がることもあります。また、通常のときよりも吸う力が必要になるため、授乳に時間がかかるかもしれません。赤ちゃんが授乳拒否を起こさないよう、一時的な使用がおすすめです。
乳頭保護器の使い方

授乳の負担を軽減してくれるアイテムも、使いこなせないともったいないことです。乳頭保護器を付ける前に行う準備や、装着の仕方を確認しておきましょう。
授乳前に乳房マッサージ
母乳は、直接吸われることで出やすくなるとされています。乳頭保護器を付けると母乳が出にくくなるかもしれないため、授乳をする前に「乳房マッサージ」をしておきましょう。マッサージ前に「ホットタオル」でおっぱいを温めて血行をよくしておくと、ほぐれやすくなるはずです。
両手を使って乳房を下から支え、動かせるところまで持ち上げたり下ろしたりを繰り返します。余裕があれば、斜め下から斜め上も行うのがおすすめです。
もし指で触っても痛くないようであれば、乳頭をつまんでみましょう。刺激を受けることで乳管が開通しやすく、母乳の出がよくなることもあります。
ソフトタイプの場合
ソフトタイプの多くが、円の上の部分が欠けている半円状になっています。欠けている部分が通気孔となるため、授乳時赤ちゃんの鼻が当たりやすい上側に来るよう装着しましょう。
乳頭に付ける前に乳頭保護器を水で濡らし、裏返すようなイメージで少しめくり上げた状態で装着すると、ぴったりと密着するはずです。
しっかりフィットして外れにくければ、授乳中は乳頭保護器を手で押さえなくて済みます。ママの乳頭とあまり変わらないとはいえ、最初は赤ちゃんも慣れないかもしれません。慣れるまでは、飲みやすいよう乳頭の先端に母乳をためておいてあげます。
ハードタイプの場合
ハードタイプは、通気孔を上にして装着します。傷ついているママの乳頭には直接触れないよう、注意しながら装着しましょう。
乳頭にかぶせるようにしているだけのため、授乳中にずれたりしないよう、乳頭保護器の外周を指でしっかりと押さえて密着させます。
慣れているママの乳頭やソフトタイプと比べると硬く、最初のうちは赤ちゃんも吸いにくいはずです。態勢を少し前かがみにし、乳頭保護器の先端に母乳を出し、ある程度ためてあげましょう。しっかり吸えるようになるまでは、ママの手動でお乳を出しておきます。
どのようなことに注意する?

乳頭保護器は授乳の負担を軽減してくれるものですが、使用する場合は気を付けなければならないポイントがあります。どのようなことに気を付けるとよいのでしょうか?
無理のない範囲で使用する
乳頭保護器を使用するシーンは、多くが乳頭に傷があるときでしょう。母乳をあげたい気持ちが強くても、痛みや出血がある場合は無理をしないようにします。
乳頭保護器を付けたとしても、授乳時間が長引くと乳首はダメージを受け続けているままです。傷が治りにくくなるため、できる限りおっぱいをあげる時間は短くしてあげましょう。
「母乳をあげなければ!」と焦る気持ちが出てしまうかもしれませんが、乳頭の状態が悪化したり、痛みが続くことで授乳がストレスの原因になったりします。無理しすぎないよう、粉ミルクに頼ってみるのも手です。
向きをしっかり確認する
乳頭保護器はメーカーによって形状が異なるため、使用前に取り扱い説明書を熟読し、向きを確認しておきましょう。
赤ちゃんが授乳中に息苦しくないようにするため、通気孔が付いているものや円の上部分が欠けた半円状のものがありますが、向きを間違えるとその機能をうまく活用できません。
授乳を快適にさせるアイテムも、装着方法を誤ると宝の持ち腐れになってしまいます。おっぱいタイムをよりよくするためにもきちんと装着し、赤ちゃんが母乳を吸いやすいようにしてあげましょう。
常に清潔なものを使う
大切な赤ちゃんの口と敏感なママの乳首へ直に触れるため、乳頭保護器は清潔な状態を保つことが不可欠です。使用後そのままにしておくと、カビが発生したり、ママの乳首に雑菌が入って痛んだりする原因となります。
哺乳瓶やおもちゃと同じように、乳頭保護器も使用毎に「洗浄」と「消毒」を行いましょう。まずは「赤ちゃん用の洗剤」を付けて洗い、泡やヌメリを流水で流します。
そのあと、煮沸や電子レンジでの加熱、専用の消毒液での浸け置きなど、やりやすい方法で消毒しておきましょう。
ポットの熱湯などでも、場合によっては雑菌が繁殖していることがあります。用意できるのであれば、専用の消毒液がおすすめです。乾燥させたらケースなどに入れて、ホコリが付かないように保管します。
おすすめの乳頭保護器

様々なメーカーから乳頭保護器は販売されているため、違いや使いやすさなど、売り場コーナーでたくさん悩むかもしれません。購入するとき参考にしやすい、乳頭保護器のおすすめ商品とともにその特徴について紹介します。
カネソン ママニップルシールド
やわらかいシリコン素材の保護器で、円形の上部分がカットされています。赤ちゃんがママの匂いを確認しやすい仕様です。
吸い口が「Y字」にカットされているのは、おっぱいへの密着を高めるとともに、赤ちゃんの飲み方に合わせて母乳が出るようにするためです。
本体は2枚入っており、万が一洗いそびれても慌てなくて済みます。保管ケースは電子レンジの使用可能で消毒の容器としても使えるため、1箱買うだけで完結できるのもうれしいポイントです。SサイズとMサイズの2種類があります。
メデラ コンタクトニップルシールド
装着することで、うまくおっぱいを吸えない赤ちゃんが乳頭部分をより広く口に含めるように助けます。薄くやわらかいシリコン素材で、赤ちゃんとの距離がより近く感じられるよう、肌にフィットしやすい特別な設計が特徴です。
サイズ展開がS・M・Lの3種類で、乳頭の大きさに合うものを見つけやすいでしょう。2枚入りで、携帯に便利な専用ケースも付いています。
ピジョン 乳頭保護器 授乳用 ハードタイプ
度重なる授乳で深く傷ついてしまった乳頭を、しっかり保護してくれるハードタイプです。赤ちゃんの口が直接乳頭へ触れないよう守り、傷があっても直母を諦めなくて済むでしょう。
乳頭の大きさに関係なく使用できるフリーサイズで、ソフトタイプが付けられない大きめな乳頭にも装着可能です。ハードタイプながら肌にフィットし、違和感が生じにくくなっています。
赤ちゃんの口に入りやすい哺乳瓶「母乳実感」の形状です。サイズはワンサイズで、専用ケースが付きます。
まとめ
赤ちゃんを産むと、長い授乳期間がスタートします。繰り返し吸われ続けることで、敏感な乳首は痛みを感じやすかったり、傷ができやすかったりします。
痛い思いをしながらの授乳は、とてもつらいものです。そんなときは、乳頭保護器を使って授乳してみましょう。乳頭の上からかぶせるだけで、おっぱいトラブルを防いでくれます。赤ちゃんの口とママの乳首の形が合いにくいときも救世主となってくれる、頼もしいアイテムです。
乳頭の大きさや傷の具合に応じて、ソフトタイプがハードタイプかを決めます。乳頭保護器を使って、ママも赤ちゃんも負担の少ない幸せなおっぱいタイムを過ごしましょう。