“実母の老い”が受け止められない! その対処法は?

第2回 実母の老いが受け入れられない!
習い事の送り迎えをしてくれた母、授業参観で自慢だった母…そんな母親も、孫が生まれて頼れるおばあちゃんとなり、やがては老いてゆく…。育児で頼れる味方だった“実母の老い”に直面し、娘は戸惑うこともあるのではないだろうか? そこで、数々の親子問題に救いの手を差し伸べてきた、NPO法人「ファミリーカウンセリングサービス」代表の村田雅春氏に、どうすれば実母の老いを受け入れられるのか…その秘けつを聞いた。

●一緒に旅行に行けるのは、お母さんと闘っている今のうち

「まず、ぜひ皆さんに知っておいて頂きたいのが、キューブラー・ロスが提唱した”喪失の5段階”という心理学的な理論。物事を受け入れる際、私たちは、以下に挙げる5つの段階を経過しながら行っていくと言われています。衰えとともに、あなたのお母様方が直面するこの5段階を知っているだけで、あなたの悲しみやお母様に対するイライラは、少しずつ解消されていくはずです」(村田氏 以下同)。

【喪失の5段階】
1.否認(できていたことが1つずつできなくなっていく。が、自分の老いを拒否する)
2.怒り(自分の老いが認められず、怒りを覚えるようになる)
3.取り引き(サプリや整体サロンなどに頼り、老いを何とかごまかそうとする)
4.憂鬱(老いに逆らえなくなり、次第に落ち込む)
5.受容(自分の死を受け入れる。悟ったようなことを言い始める)

実母自身も老いに困惑している

「人は死に向かってこのような順序をたどると言われています。今、あなたのお母さんはどの状態にありますか? お母さんの様子を否定するのではなく、分析してこの5段階に当てはめてあげると、娘さんの怒りは自然と消滅し、“あぁ、今はこの段階にきているんだな…”と受け止めてあげることができるようになるはずです。親孝行をするならば、3の“取り引き”くらいまででしょうか。老いと闘い、ジタバタしている間は元気なので、娘さんはどうかそんなお母さんの状態を知って、理解を示す努力をしてあげて欲しい。一緒に旅行に行ったりできるのは、お母さんと闘っている今のうちなのです。口論している時間がもったいないと思って下さい」

たまに訪れる親戚にはいい顔をして、娘にだけは毒を吐く…そんな実母に苦しめられる娘も多いと聞くが…。

「怒りをそのまま出せるのは、それほど信頼している証なのです。お母さんが何を言おうが、決してあなたに対して怒っているのではありません。お母さんは、自分自身への情けなさから、怒りやすくなっていると捉えましょう。これは母親だけでなく、父親にもよくあてはまる現象です。人が去りゆく時、病床に呼ぶのは、通帳でも功績を記した賞状でもありません。最後に求めるのは“家族”ですから…」

家事や育児、仕事で忙しいなか、完全な親孝行はできないかもしれないが、後々後悔せず、「母とこんな話もした、あんな話もした…自分なりに頑張ったかな?」。そう思えるような、安らかな日々を送りたいものだ。

(取材・文/蓮池由美子)

お話をうかがった人

村田雅春
村田雅春
NPO法人「ファミリーカウンセリングサービス」代表
家族関係心理士、基礎インストラクター、スーパーバイザー。幼少時代からの極貧生活のコンプレックスから吃音症になり、大人になっても人間関係が苦手だったが、素晴らしいカウンセラーに出会ったことで心が癒される。吃音症から解放された後は、東京、横浜、愛知、岐阜、大阪、福岡で牧師としても活動。「スプリングオブライフ命の泉」(岐阜放送)の講師も担当している。
家族関係心理士、基礎インストラクター、スーパーバイザー。幼少時代からの極貧生活のコンプレックスから吃音症になり、大人になっても人間関係が苦手だったが、素晴らしいカウンセラーに出会ったことで心が癒される。吃音症から解放された後は、東京、横浜、愛知、岐阜、大阪、福岡で牧師としても活動。「スプリングオブライフ命の泉」(岐阜放送)の講師も担当している。