恐喝事件に強い弁護士の探し方〜恐喝事件を早期解決するために

恐喝事件に強い弁護士の探し方〜恐喝事件を早期解決するために

「恐喝事件を起こしてしまった!弁護士に依頼して早期に解決したい……」

このように悩んでいる方もいらっしゃることでしょう。

恐喝罪は、暴行または脅迫を用いて相手を怖がらせ、金銭等の財産を交付させることによって成立する犯罪です。

他人に貸したお金の返済を求めるような場合であっても、要求の仕方によっては恐喝罪に該当する可能性があるので注意が必要です。

恐喝罪は法定刑として罰金がなく、懲役刑のみが定められているとおり、軽い罪ではありませんので、犯してしまうと逮捕される可能性が十分にありますし、前科がついたり、実刑を科せられるおそれもあります。

しかし、早期に対処すれば、穏便に事件を解決できることもあります。

そこで今回は、何をすれば恐喝罪に該当するのかについてご説明した上で、

  • 恐喝事件で弁護士がしてくれること
  • 恐喝事件に強い弁護士の条件
  • 恐喝事件における弁護士費用の相場

などについて、刑事事件の経験豊富なベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。

この記事が、恐喝事件を起こしてしまったことを悔やみ、早期解決を望んでいる方の手助けとなれば幸いです。

1、恐喝罪で弁護士を探す前に!何をしたら恐喝罪?

恐喝罪とは、暴行または脅迫を用いて相手を怖がらせ、財物または財産上不法の利益を交付させることによって成立する犯罪です(刑法第249条)。

暴行・脅迫の程度は、相手に恐怖心を感じさせる程度のものであれば足ります。暴行・脅迫が、より強い恐怖心を与えて、相手方の反抗を抑圧する程度に足りるものと評価できる場合は、「強盗罪」の対象となります。

また、恐喝罪における脅迫とは、害悪を告知することを言い、相手に恐怖心を感じさせる程度のものであれば、害悪の種類や、害悪を加える相手を問いません。

「財物」には金銭はもちろん含まれますが、その他にも財産的価値のある物はすべて含まれます。

「財産上不法の利益」は、何らかのサービスの提供や、債務の免除・猶予をすることを含みます。

財物または財産上不法の利益の交付を要求せず、相手に義務のない何らかの行為を行わせた場合は「強要罪」、単に相手を脅しただけの場合は「脅迫罪」となります。

恐喝罪の刑罰は10年以下の懲役です。

第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

引用元:刑法

抽象的な説明では、何をしたら恐喝罪に該当するのかが分かりにくいと思いますので、「恐喝で罪になる事例」、「恐喝の罪にならない事例」を以下でご紹介します。

(1)恐喝で罪になる事例

恐喝罪が成立する具体的な事例として、以下のようなものが挙げられます。ただし、これらは一例に過ぎず、他にもさまざまなものが考えられます。

①みかじめ料の要求

暴力団員が飲食店に対して、「毎月○万円を払わなければ商売できないようにしてやる」と言って金銭を要求する行為に恐喝罪が成立する可能性があります。

②カツアゲ行為

路上で通行人に対して「所持金を渡さないと痛い目に遭わせるぞ」とすごむ行為に恐喝罪が成立する可能性があります。

③相手の弱みにつけ込む行為

「不倫したことを家族や会社にばら撒かれたくなかったら100万円をよこせ」

「盗撮したことを警察に通報されたくなければ100万円を払え」

「裸の写真をばら撒かれたくなければ10万円をよこせ」

このように、たとえ相手が悪いことをしている場合であっても、その弱みにつけ込んで金銭等を要求する行為は恐喝罪に該当する可能性があります。

④美人局行為

出会い系サイトなどで知り合った女性と性行為をした男性に対して、女性と口裏を合わせた犯人が「俺の女に手を出した以上は許せない。100万円を払わなければ家族にバラす」と言って金銭を要求する行為が恐喝罪に該当する可能性があります。

⑤権利行使が行き過ぎた事例

「借金を返さなければ妻と子どもがどうなっても知らないぞ」

貸したお金の返済を求めるといった権利行使の場面でも、その行為の態様によっては恐喝罪に該当する可能性があります。

(2)恐喝の罪にならない事例

一方で、暴行や脅迫を用いたり、金銭を要求する行為であっても、以下のような事例は恐喝罪には該当しません。

①「害悪の告知」がない事例

「お金に困っているので、少しでいいから貸してほしい。もし、断られたら、私は死にます」

このようなことを言われた方は非常に困惑しますが、「害悪の告知」がないため、恐喝罪に該当しません。

②単に脅す行為

妻の不倫相手に対して「殺すぞ」、「怪我をさせるぞ」などとすごむだけの事例では、金銭等財物の交付を要求していないので、恐喝罪には該当しません。もっとも、脅迫罪が成立する可能性はあります。

③義務のない行為を要求する行為

元恋人や元配偶者に対して「よりを戻してくれ。さもなければ裸の写真をばら撒くぞ」と言う事例でも、金銭等財物の交付を要求していないので、恐喝罪には該当しません。もっとも、復縁という義務のない行為を要求していますので、強要罪が成立する可能性があります。

④抵抗不能なほどに暴行・脅迫を加える行為

お金を貸した相手が返済しないため、反抗を抑圧する程度の暴行を加えて所持金を差し出させた場合には、暴行の行為が恐喝罪の範囲を超えていますので、恐喝罪には該当せず、強盗罪が成立します。

2、恐喝罪の経験豊富な弁護士が目指すこととは

では、恐喝罪の加害者が弁護士に依頼した場合、どのようなことをしてもらえるのでしょうか。

弁護活動の方針や内容は弁護士によって異なることもありますが、恐喝罪の経験豊富な弁護士なら、以下の成果を目指して活動します。

(1)逮捕されないようにする

逮捕前に依頼した場合、弁護士は依頼人が逮捕されることなく、穏便に事件を解決することを目指します。

そのために最も重要な弁護活動は、被害者と示談をすることです。いちはやく示談を成立させ、被害者が被害届や告訴状を提出することを阻止し、警察が介入しないうちに事件を解決することを目指します。

もっとも、恐喝事件の被害者は加害者を恐れて、接触を拒否するのが通常なので、加害者が自分で示談交渉をするのは容易ではありません。

そこで、弁護士に依頼して、示談交渉を代行してもらうことで、加害者に代わって弁護士から被害者に謝罪をします。専門的な知識と高度な交渉力によって的確な交渉を行うことができるので、その結果、円満に示談が成立しやすくなります。

被害者との間で「警察に被害届や告訴を行わないこと」を条件とした示談が成立し事件が警察に発覚しないまま解決できれば、逮捕されることはなくなります。

(2)早期釈放

逮捕された後に依頼した場合、弁護士はまず依頼人の早期釈放を目指します。

この場合も、被害者との示談が弁護活動の中で大きなウエイトを占めます。

逮捕される法律上の要件で重要なものは、「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」です。

罪を犯したのが事実である以上、「逮捕の理由」が認められることはやむを得ません。しかし、逃亡や罪証隠滅のおそれがない場合には「逮捕の必要性」の要件を満たさない可能性があります。

そこで、弁護士は担当の警察官に対して、示談が成立したこと等により逮捕の必要性が消滅したことなどを告げて協議を行い、依頼人の釈放を求めます。

また、送検され、勾留が行われた後であっても、弁護士は同じように被害者との示談を成立させた上で、検察官に対して「勾留の必要性」が消滅したことを告げて協議を行います。

場合によっては「準抗告」という法的手段を使って裁判所の勾留決定を取り消し、釈放を求めることもあります。

(3)不起訴

弁護士は、上記の身体拘束に対する活動以外にも、検察官の処分に対する活動を行い、検察官が依頼人を不起訴処分にすることを目指します。

不起訴処分は、検察官が捜査の結果、被疑者を処罰する必要がないか、刑事裁判で有罪を立証するのが難しいと判断した場合に、起訴をせずに捜査を終了させる処分のことをいいます。

検察官が被疑者を起訴するかどうかを決める際にも、重視されるのは被害者との示談が成立しているかどうかです。

その他にも、被疑者がどの程度反省しているか、再犯を防止するために生活態度や考え方をどのように改めるつもりか、本人の今後の日常生活を指導・監督する身元引受人がいるか、等の事情も考慮します。

被疑者が自分で「反省しています」、「二度と悪いことはしません」と言うだけではなかなか信用してもらえません。そこで、弁護士が以上の活動を行い、不起訴処分を獲得することを目指します。

(4)執行猶予

起訴されてしまった後でも、諦めずに恐喝事件に強い弁護士の力を借りることは重要です。

恐喝罪の場合、事件の内容によっては初犯であっても実刑判決を受ける可能性があるからです。

恐喝罪の法定刑は、前記「1」でもご紹介したとおり10年以下の懲役です。「罰金刑」がないことに注意が必要です。

恐喝罪では「懲役刑」しかありませんので、有罪となった場合は実刑か執行猶予付き判決のどちらかのみとなります。

日本の刑事裁判の有罪率は99%以上ですので、恐喝罪で刑事裁判にかけられた場合は「執行猶予」を獲得することが極めて重要です。

執行猶予を求めるためにも、上記の不起訴処分を求める場合と同様、「被害者との示談」、「本人の反省」、「生活状況や生活環境の改善」、「信頼できる身元引受人の存在」等が重要となります。

刑事裁判では、弁護士がこれらの事情を的確に主張・立証し、執行猶予付き判決を求めます。

(5)無罪

依頼人が無実の罪で逮捕された場合、弁護士は当然、無罪を目指します。

起訴されて刑事裁判にかけられた場合でも、依頼人が実際に行った行為が恐喝罪の構成要件に該当しない場合は、無罪を主張することができます。

構成要件とは、簡単にいうと犯罪の成立条件のことですが、恐喝罪の構成要件は「暴行または脅迫を用いて、相手方の反抗を抑圧しない程度に畏怖させ、財物を交付させること」です。

たとえば、依頼人がお金を貸した人に対して、正当な方法で返済を求めたにもかかわらず、相手方が依頼人のことを根に持ち、恐喝罪で告訴したケースで考えてみましょう。

この場合、依頼人は実際には、返済金という「財物」を交付させたものの、暴行・脅迫も行っていなければ、相手方を怖がらせたわけではないので、恐喝罪の構成要件に該当しません。

弁護士は刑事裁判において、被害者に対する証人尋問や、依頼人に対する尋問(被告人質問)、その他の証拠を提出することによって検察官の主張について反証を行います。

弁護士の反証によって検察官が有罪を立証できなければ、無罪判決が言い渡されます。

ただ、刑事裁判で無罪を獲得することは非常に困難ですので、弁護士の中でも恐喝罪に強い弁護士に依頼することが不可欠といえます。

なお、無実の罪で逮捕された場合は、逮捕後できる限り早い段階で恐喝罪に強い弁護士に依頼することが重要です。

取調官の中には、被疑者の自白を得ようとして厳しく追及する人もいるため、身柄を拘束されて一人で戦わなければならない被疑者にとって精神的負担が大きく、厳しい取り調べから逃れたい一心で虚偽の自白をしてしまう人が少なくないからです。

いったん、取り調べで自白をしてしまうと、刑事裁判でもその自白を覆すことは非常に困難となります。

逮捕された場合でも、弁護士を呼べばすぐに接見に駆けつけて、取り調べへの対応についてアドバイスをしたり、精神的な支えとなるので、虚偽の自白を防止することができるかもしれません。

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