ハザードマップがどんどん進化① ~受動的な学びから能動的な学びへ③~

ハザードマップを見てみよう

防災のマップと言えば、都道府県や市町村が作成して配布している紙のハザードマップやホームページで公開しているデジタルのマップを思い浮かべます。このハザードマップを時々チェックしている人はどれくらいいるでしょうか。見たこともないとか存在すら知らないという人もいるかもしれませんね。
大学の講義でハザードマップを取り上げたことがあります。対象は、防災を専門に学ぶ学生ではなく、他の専攻があってたまたま防災に関する科目を受講している学生です。講義の後、案外多くの学生が自分の家の周辺のマップを自主的にチェックしてくれたようです。同じことは大学だけではなく、小中学校、高校の授業でも言えるのではないでしょうか。まず、授業でハザードマップを取り上げること、それが防災に関心を持つこどもたちを育てる第一歩です。
既存のハザードマップを活用するだけではなく、こどもたちがマップを作り、それを活用する防災学習活動が広がってきました。マップの名称は危険を念頭に置いた「ハザードマップ」や「防災マップ」だけではなく、ポジティブなイメージが持てる「安全マップ」や「地域安全マップ」、さらに他の要素も取り入れた「防災福祉マップ」など様々です。

始まりは「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」

全国的な広がりのきっかけは「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」でしょう。こどもたちがまちを歩いて防災、防犯、交通安全などの視点でマップを作って発表するプログラムで、日本損害保険協会と朝日新聞社、日本災害救援ボランティアネットワークが主催しています。年に1回のペースで開催され、現在は18回目の募集中です。ここで蓄積されたマップづくりのノウハウはマニュアル化されており、だれもが簡単に開始できます。
このコンクールのマップを初めて見たのはもう15年以上の前のことですが、ちょっと驚かされました。小学生の作ったマップに自転車に乗った高校生が描かれていたのです。小学生から見ると猛スピードで疾走する高校生の自転車は危険極まりない存在なんだなと妙に納得したのを覚えています。
マップコンクールの実践の積み上げに加えて、新しい学習指導要領では地図を活用した学習が多く取り入れられ、マップづくりにとりくむ土壌がますます整ってきました。また、防災の学習は危険と安全だけを学ぶ活動ではなく、地域の暮らしや文化、自然、歴史、福祉などの多様な視点を重ねてより総合的に学ぶ活動だという認識が広がってきたのも、マップづくりの流行の背景にあると考えられます。

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