養育費調停の申し立て方法や流れ、有利に進める方法を弁護士が解説

養育費調停の申し立て方法や流れ、有利に進める方法を弁護士が解説

養育費について(元)パートナーとの話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停を申立てて支払いを求めることができます。

ただ、調停は家庭裁判所において話し合いをおこなうことによって養育費の金額や支払い方法を取り決める手続きですので、こちらの希望がすべて通るわけではありません。

養育費の調停を有利に進めるためには、注意しなければならないポイントがいくつかあります。

そこで今回は、

  • 養育費の調停とは
  • 養育費の調停の申し立て方法と手続きの流れ
  • 養育費の調停を有利に進めるためのポイント

などについて、弁護士がわかりやすく解説していきます。

この記事が、(元)パートナーから養育費をスムーズに支払ってもらえず、子育てに不安を抱えている方の手助けとなれば幸いです。

1、養育費の調停とは?

まずは、養育費の調停とはどのような手続きなのか、基本的なことをご説明します。

(1)家庭裁判所で養育費について話し合う手続き

そもそも養育費の調停とは、家庭裁判所で調停委員の立会のもと、養育費の支払について一定の内容で相手と合意することを目指して話し合いを進めていく手続きです。

話し合いは調停委員が仲介します。実際の子育てにどのくらい費用がかかっているのか、申立人及び相手方の収入がどのくらいあるかなど様々な事情について、調停委員が当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等の提出を求めます。

調停委員は事情をよく把握した上で、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をするなどして、当事者双方がお互いに納得できる形での解決を図っていきます。

(2)どのような場合に養育費の調停が行われる?

養育費に関することは(元)夫婦の話し合いによって決めるのが基本ですが、話し合いがまとまらない場合や、そもそも話し合いができない場合もあります。

そんなときに行われるのが、養育費の調停です。

具体的には、以下のようなタイミングで養育費の調停が行われています。

  1. 離婚する際に、養育費の支払いについて話がまとまらない場合
  2. 養育について取り決めずに離婚した後、養育費の支払いを求める場合
  3. 離婚時に養育費を取り決めたものの、受け取る側が増額を求める場合
  4. 離婚時に養育費を取り決めたものの、支払う側が減額を求める場合
  5. 離婚時に話し合いで養育費を取り決めたものの、滞納が続く場合

(3)養育費の調停が行われる割合

裁判所が公表している司法統計によると、2019年度において家庭裁判所に申し立てられた養育費の調停の件数は1万7,648件でした。

審判の申し立てを含めても2万0,293件にとどまります。

ちなみに、離婚する夫婦は年間20万組以上いることを考えると、養育費の調停はあまり積極的に活用されていないといえそうです。

もちろん、離婚する夫婦のすべてが未成年の子どもを抱えているわけではありませんし、調停をしなくても養育費がスムーズに支払われているケースもあります。

しかし、養育費を受け取っているシングルマザーの割合は24.3%に過ぎないというデータもあります(厚生労働省「平成28年度)の全国ひとり親世帯等調査」)。養育費を受け取ることができていない「ひとり親」が多いことを考えると、養育費の調停はもっと利用すべきものといえるのではないでしょうか。

(4)養育費請求調停と離婚調停の関係

養育費に関することは、離婚調停においても話し合うことができます。

まだ離婚が成立していない人が離婚後の養育費を請求する場合は、離婚調停を申し立てて、その中で養育費についても併せて話し合うことになります。

一方で、すでに離婚が成立した人で、まだ養育費を受け取っていない人がこれから養育費を請求する場合には、「養育費請求調停」を申し立てます。

これまで、養育費に関する調停のことを一括りに「養育費の調停」と呼んできましたが、正確に言いますと次の4種類の調停があります。

  1. 離婚調停:これから離婚する人が申し立てる調停
  2. 養育費請求調停:すでに離婚した人が養育費を請求する調停
  3. 養育費増額請求調停:離婚して養育費を受け取っている人が増額を求める調停
  4. 養育費減額請求調停:離婚して養育費を支払っている人が減額を求める調停

以下では、もっぱら「養育費請求調停」について解説していきます。

もっとも、その他の3つの調停においても共通する点は多いので、参考になるはずです。

2、養育費請求調停で話し合われる具体的な内容は?

それでは、養育費請求調停においては、具体的にどのようなことが話し合われるのでしょうか。

(1)調停で決定される内容

養育費請求調停では、(元)夫婦間の未成年の子どもの養育にかかる費用の負担に関することが話し合われます。

具体的には、以下の内容について話し合い、取り決めていきます。

  1. そもそも養育費を支払うか
  2. 養育費を支払うことを前提に、金額をいくらとするか
  3. 養育費を子どもが何歳になるまで支払い続けるか
  4. 高等教育の費用や病気の時などの出費の負担をどうするか

(2)養育費はどのような事情を考慮して決定される?

養育費の金額は、当事者が合意すれば自由に決められます。

しかし、調停を申し立てるということは当事者だけでは話し合いがまとまらないということですので、以下のような事情を踏まえて調停委員が話し合いをリードすることにより、合意に導かれます。

  1. 申立人の年収 → 年収が高ければ高いほど、もらえる養育費の金額は高くなる傾向があります。
  2. 申立人の元パートナーの年収 → 年収が低ければ低いほど、もらえる養育費の金額は高くなる傾向があります。
  3. 子どもの年齢 → 子どもが0~14歳の場合より、15~19歳の場合の方がもらえる養育費の金額は高くなる傾向があります。
  4. 子どもの人数 → 子どもの数が多いほど、請求できる養育費の金額は高くなります。

(3)調停で養育費の支払なしとされることはあるのか?

離婚して子どもと離ればなれになった側の親も、子どもとの親子の縁は切れませんので、養育費の支払義務があります(民法第766条、第877条)。

したがって、基本的に養育費の支払なしとされることはありません。

もっとも、相手が現実に養育費を支払う余裕がないという場合もあるでしょう。

病気のために働けない場合や、リストラなどで失職して次の仕事が見つからない場合などが考えられます。

また、相手が多額の借金を抱えている場合、法律上の養育費の支払義務はなくなりませんが、実際に支払ってもらうのは難しいでしょう。

これらの場合には、養育費を請求する側が諦めて調停の申し立てを取り下げるか、合意ができずに「調停不成立」となって調停が終了することになるのが一般的です。

(4)調停で過去の養育費も請求できるか?

過去の養育費は請求できないものと考えられています。

なぜなら、養育費とは現在の子どもの生活や教育にかかる費用のことを意味するからです。

今まで養育費を受け取っていなかったということは、養育費をもらわなくても生活や教育ができていたことになりますので、遡って請求することはできないものと考えられているのです。

ただ、調停は話し合いの手続きですので、相手が合意すれば過去の養育費を支払ってもらうことも可能です。

ですので、過去の養育費についても請求してみて、今後の養育費の金額について相場に上乗せしてもらったり、一時金としてある程度の金額を支払ってもらうということは考えられます。

とはいえ、あくまでも話し合い次第ですので、必ずしも過去の養育費を支払ってもらえるわけではありません。

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