相続財産が例外的に財産分与の対象になる3つの事例を解説

相続財産が例外的に財産分与の対象になる3つの事例を解説

3、例外的に相続財産が財産分与の対象となるケース

婚姻中に取得した財産が夫婦共有財産となるのは、その財産を取得するために夫婦がお互いに貢献したといえる場合です。

相続財産についても、あてはまる場合があります。

それは、夫婦のどちらかが相続で取得した財産の維持や散逸を防止するために、もう一方の配偶者が何らかの特別な貢献をしたことが認められる場合です。

裁判例では、夫が親から相続した旅館について、妻も女将として経営を切り盛りしていたケースについて、離婚時に妻への財産分与が認められた事例があります。

裁判所は、旅館そのものを夫の特有財産であるとしつつも、その財産の減少防止に妻も協力したことが認められるため、一種の持ち分的権利を有すると判断しました。

この裁判例ように、相続財産について維持・散逸防止のための貢献が認められる場合には、貢献度合いに応じて、例外的に財産分与が認められることがあるのです。

ただ、どのくらいの財産分与が認められるのかについては、貢献度などによってケースバイケースであり、明確な基準があるわけではありません。

次に、財産分与を請求できるかどうかを事例別にみていきましょう。

4、事例で解説!こんなときは財産分与を請求できる?

相続財産について財産分与が争われやすいのは、どのようなケースなのでしょうか。

いくつかの事例を紹介して、それぞれ説明します。

(1)妻が相続した財産を夫が管理していたケース

例えば、妻が親から賃貸用アパートを相続で引き継いだものの、夫がもっぱらそのアパートを管理していたケースを考えてみましょう。

アパートの固定資産税やリフォーム代、その他の諸経費も夫が支払い、賃貸人の管理も夫が行っていたとします。

この場合、賃貸用アパートの維持・運営や収益に夫が貢献していますので、夫が貢献している状態がある程度の年数続けば、財産分与で考慮することが認められるでしょう。

何年経てば財産分与が認められるかについては一概に言えませんが、おおよそ10年ほど経てば認められると考えられます。

10年より短い期間であっても、夫がアパートの管理に費やした費用や労力応じて、2分の1とは行かずとも何割かの財産分与が認められる可能性があります。

(2)妻が夫の亡き父の生前に介護をしていたケース

次は、妻が夫の父を長年にわたって無償で介護した末に父が亡くなり、夫が相続で財産を取得したケースを考えてみましょう。

この場合、妻の介護によって父は介護費用の支出を免れているため、相続財産の維持に妻が貢献しているといえます。

しかし、理論的には財産分与は認められないでしょう。

妻が貢献したのは夫の父の財産の維持に対してであって、夫婦の財産の問題とは切り離して考えるべきだからです。

では、妻は夫の父の介護に多大な貢献をしたにもかかわらず、相続財産を一切受け取れないのでしょうか。

そんなことはありません。

妻は「特別寄与料」として、夫の父の相続人に対して、貢献した度合いに応じて金銭の支払いを請求することができます(民法第1050条)。

妻はこの権利を行使すべきであり、離婚に際する財産分与を請求することはできないと考えられるのです。

もっとも、夫婦間の話し合いによって財産分与を行うことは自由です。

夫の父の死亡と夫婦の離婚の時期が近い場合には、話し合いによって合意すれば、特別寄与料ではなく財産分与として相応の財産を清算するのもよいでしょう。

(3)夫が相続した財産と夫婦共有財産とが混然一体となっているケース

次に、夫が現金を相続した場合について考えます。

例えば、もともと夫婦共有財産として500万円の預金があったところ、夫が相続で300万円の現金を取得し、同じ口座に預金したとします。

夫が相続した時点で、預金残高は800万円となっていました。

夫婦の共同生活のためにその口座からお金を引き出して使っていたため、離婚時には400万円に減っていたとしましょう。

400万円の預金が減っていますが、もともと夫婦共有財産としての500万円から引き出したものか、夫が相続したお金を引き出したものかが混然一体となっています。

夫婦としても、お金を引き出す時点でどちらのお金を引き出すかを意識していたわけではなく、単に口座に残っているお金を引き出すつもりだったはずです。

民法では、夫婦のどちらの財産かが明らかでない場合には、夫婦共有財産であると推定すると定められています。

第七百六十二条 

(1項は略)

2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

引用元:民法

したがって、口座に残っている400万円は夫婦共有財産であると推定され、全額が財産分与の対象となると考えられます。

夫としては、300万円が特有財産であることを主張するためには、引き出した400万円が相続したお金ではなく、もともとあった預金であることを証明しなければなりません。

この証明は通常は困難であるため、夫は400万円全体について財産分与に応じざるを得ないでしょう。

夫としては、納得できない場合は割合的にでも特有財産を主張して、話し合いで解決すべきことになります。

夫が相続した時点では預金の8分の3(800万円のうち300万円)が特有財産となります。

したがって、離婚時の預金残高のうち8分の3は特有財産であり、8分の5のみが財産分与の対象であることを主張して話し合うべきです。

話し合いで解決できない場合は、裁判で有力な証拠を提出しなければなりません。

確実に証拠を提出するためにも、弁護士に相談することをおすすめします。

このような場合が、特有財産が夫婦共同生活の中で共有財産に変化し、財産分与の対象となるケースの典型例といえるでしょう。

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