森林の課題解決と災害時の助けとなる薪の備え「備蓄木プロジェクト」<前編>

森林の課題解決と災害時の助けとなる薪の備え「備蓄木プロジェクト」<前編>

いかに活用していくのか

—ここまでのお話で、森林の抱える課題が様々なところに波及していることや、その解決のためにはまずは間伐すること、間伐材を森林から搬出することが何よりも必要だということがわかりました。搬出の先には、やはり「使うこと」が必要ですよね。建築業界では、建築用木材の供給が需要に追いつかないというウッドショックが問題となっていますが、国産材についても需要が高まっているのではないでしょうか。

(河村さん)
単純にそうとは言えないのです。建築資材としての木材に関しては、主にベイマツと言われるアメリカから輸入される強度のある松がこれまで使用されてきました。2階を支えるための強度のいる梁などは、松が適していて、住宅を1軒建てるためには平均して3割ほど松を使うことになります。ベイマツに限定する必要はないんですが。
ただ、日本では、松は虫食いが多くて建築資材にできるほど、しっかりと育たないんです。人工林で針葉樹を間伐しなければいけない問題とは、少し違うところにありますね。
ただ、住宅の3割に松が必要ということは残りの7割は松でなくてもいいと言うことです。にも関わらず、日本の木材自給率は約40%程度です。ウッドショックという状況になってから、国産の杉やヒノキの価格も以前よりは上がっていますし、国内にある松ももちろん販売はされていますが。
しかし、建築資材にできるような木材が日本の森林からすぐに出せるのかというと、最初の「暗い森をどうするか」というところに戻ってしまいます。これまで輸入材に頼ってきて、手入れが途中のままになってしまった森林が相当たくさんあります。また、林業はリスクの高い割に給与もあまり良くなく、人材が不足しています。働き手の高齢化も問題になっています。

—建築資材として国産材を使えるようにするためには、森林を育てることとともに、人材を育てることが性急に必要だということなのですね。

(河村さん)
もう一つ、森林から木を出してこようとしても、出してくるための道が森にないという課題もあります。森林組合が管理しているような森林であれば、基本的には道はあるのですが、個人が所有している、私有地となっている森林では森から里までおりる間に勝手に道を作ることができないのです。そのため、搬出することができないのです。所有者不明の森林もあり、そういったところはさらに問題が複雑になります。

ただ、薪として使用するような、短いサイズにすると搬出しやすくなります。

—なるほど。それが、河村さんが代表理事を務めていらっしゃる一般社団法人日本森の十字社が取り組んでいらっしゃる備蓄木プロジェクトでの、間伐材を薪として使用することのメリットでもあるんですね。

ここまでは、一般社団法人日本森の十字社の代表理事、河村ももこさんに、森林の抱える課題についてお話をお伺いしていました。
戦後の木材需要から針葉樹の人工林が全国につくられ、その管理が十分にされてこなかったことで、様々な課題が現在は発生してきていました。それは、森林の土砂災害リスクだけでなく、都市での川の氾濫のリスクなどにも繋がってきています。こうしたリスクを減らすためには、森林で適正に間伐を行い、間伐材を森林から搬出することや、人材の育成、搬出するための道づくり、管理が難しくなっている私有林をどう扱うかなど、多くのことを解決する必要があります。都市で暮らす人たちが、森林に目を向けることも、森林の課題解決の一助になるかも知れません。
後編では、こうした森林の課題解決の糸口でもあり、災害時のライフラインなどとしても活用が見込まれる、一般社団法人日本森の十字社の取り組み「備蓄木プロジェクト」についてお話を伺いします。

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私たち moshimo ストックは「もしも」のための防災情報メディア。 最近、地震や台風がよく起きるようになって心配。 防災をしようと調べてみたものの、何から始めればいいの…? 私たちも始めは知ることがたくさんあって、防災ってちょっと難しいな…と思いました。 でも、ちょっと待って下さい! もし何の準備もなく災害にあってしまったら大変です。 防災は少しずつでも大丈夫、「もしも」のための準備を始めませんか?
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