森林の課題解決と災害時の助けとなる薪の備え「備蓄木プロジェクト」<後編>

森林の課題解決と災害時の助けとなる薪の備え「備蓄木プロジェクト」<後編>

「備蓄木ステーション」を安全な場所としての目印に

—備蓄木プロジェクトについて、具体的に教えてください。

(河村さん)
森林から比較的搬出しやすい、長さ60センチの間伐材の薪です。薪というと、普通は広葉樹が使われることが多いのですが、針葉樹の人工林から間伐されて出されてきたものなので、薪の樹種は、杉やヒノキです。
ヒノキは「火の木」というくらい、油分を含んでいて火付きが良いので、災害時に屋外で暖をとるのに向いています。そういった実用性も踏まえつつ、3立方メートルほどのスペースで30人ほどの人がぐるっと火を囲んで暖をとることのできる「備蓄木ステーション」と、個人や少人数の事務所などでも備えることのできる「ペール缶の備蓄木セット(BICHIKU-BOKU S-Kit)」を用意しています。

—現状では、備蓄木ステーションは、どういうところまで進んでいますか

(河村さん)
備蓄木ステーションの設置をとにかく増やすっていうことから始めました。実は、一番最初は、ボランティアで置いて頂いていたのですが、ただ資金的なところで、難しい状況になりました。また、置いていただくところにも、「置いてあげているでしょ」という感じになってしまうと、場所の選定が難しくなるという課題に直面しました。これまで、モデルケースとして置いていただいたのは、建設業と飲食業、そして自治会の敷地内という、三重県いなべ市で3か所です。

今後は、ボランティアというかたちではなく、企業や行政に必要なものとして買って頂いて、企業の敷地内や、避難所・避難場所などに置いて頂けるようにシフトチェンジを図っています。BCPに取り入れて頂いたり、公助・共助の一環として、備蓄木ステーションを購入して設置していただきたいと考えています。

—今後の目標として、どのエリアにいくつまでとか、街の中でどれくらいの間隔で設置していくといった、具体的なものはありますか

(河村さん)
やはり、多くの避難所や避難場所に置いて頂きたいと考えています。

日本森の十字社を始めるきっかけになった、東日本大震災で被災された方のお話は、たまたま逃げてたどり着いた高台の山の中で、偶然、暖をとることができて助かったということでしたが、こういったことを必然にしたいのです。屋外の公園や駐車場など、屋外の避難場所か、避難所の外に設置してもらえるようにしたいんです。
設置の間隔ということで言えば、各避難場所・避難所に置いていただきたいですね。

さらに、避難場所・避難所だけでなく、企業に協力していただきたいと思っています。特に、工場や大型のショッピングモールに置いて頂きたいと考えています。それから、できればコンビニにも。コンビニは、災害時帰宅支援ステーション(災害時に、水道水やトイレ、テレビおよびラジオからの災害情報を行うことで、徒歩による帰宅者を支援する場所)でもあるので。

他にも、道の駅やサービスエリア、パーキングエリアなどにも設置して頂きたいです。
以前、寒波が来た時に、高速道路で雪の中でたくさんの車が立ち往生してしまったことがありましたよね。ああいう時にでも、焚き火ができると車から外に出て少し温まったりもできるので。
そういう、雪で閉鎖されてしまうようなエリアもですが、最悪の時に避難するのは高速道路上ということも考えられます。高速道路って高いところにあるので、津波などが来た時にも一時避難場所のような扱いをされていると思うので。
そういうことも踏まえて、高速道路のパーキングエリアやサービスエリアには、備蓄木ステーションをぜひ設置していただきたいですね。

—日本森の十字社の本部は三重県いなべ市ですが、備蓄木ステーションなどの設置に関して、全国エリアで対応していけるということでしょうか
(河村)
もちろんです。ご希望いただければ、全国どこでも対応できます。

理想としては、ハザードマップで安全な場所とされているところには、備蓄木ステーションをおいて頂きたいと考えています。そういった場所に置いて頂くことで、ハザードマップの可視化もできるのではと考えています。
例えば、津波が来るような地域であれば、いざ津波が来るとなった時に、どこへ向かって逃げていけば安全なのだろうという目印って、普段は意識っている人ってあまり多くないと思います。

でも、備蓄木ステーションの棚のようなわかりやすいものが安全な場所に設置されていて、「備蓄木がある場所に逃げればいいんだ」ってことを、普段、生活している中で、なんとなく「そういえば、あそこに備蓄木ステーションの棚があったな」って記憶をしておいてもらえれば、備蓄木ステーションの設置してあるところに感覚的に、迅速に避難する行動につなげてもらえるのではということも考えています。
「備蓄木ステーションの設置してある場所が安全な場所」と認知してもらえるようになることで、ハザードマップを見ていないようなお子さんや、日本語のわからない外国人など、普段は防災に関してあまり意識しない方や、情報を取得するのが難しい方でも、親などの周りの人から「あれ(備蓄木ステーション)があるところに逃げなさい」って言われていれば、なんとなく安全な場所に行き着けるはずなんです。

平常時から街に備蓄木ステーションのようなものが点在していれば、無意識に災害時を意識すると思いますし、いざという時にちゃんと逃げることができるはずです。

安全な場所としての目印と、実際に備蓄木ステーションのある場所に行って備蓄木を使っていただくということと、2つの役割を果たせるように、ハザードマップで安全とされている場所に、ハザードマップが可視化できるように、安全に避難できる場所を備蓄木ステーションでつなぐ「備蓄木ライン」のようなことができるようにしたいと考えています。

必要に応じてカスタマイズできる備蓄木ステーション

—備蓄木ステーションには薪の他にどのようなものがセットされているのでしょうか

(河村さん)
フルセットだと焚き火台と保管棚と備蓄木ですが、これまでボランティアで置いていただいたところでも、焚き火台はドラム缶などで代用されているところもあります。
保管棚については、木材の活用という意味でこれも杉・ヒノキで作っていて、この保管棚と備蓄木についてはこれまで設置していただいたところでもすべて採用して頂いています。備蓄木ステーションの最小限のセットは、保管棚と備蓄木と考えて頂けると良いですね。

—必要に応じてカスタマイズできるということですね。

(河村さん)
また、備蓄木ステーションを1か所設けていただくと、だいたい30人がぐるっと火を囲んで、36時間。夜の間だけ焚き火を炊くのであれば3晩ほど、日中も炊くのであれば1日半ほどの暖をとれる計算の薪の量がセットになっています。
備蓄木ステーションを設けるために必要なスペースは、3立方メートルが目安です。1立法メートルで約12時間の計算ですね。
キンドリングクラッカーというハンマーで薪を割ることのできる器具があるのですが、こうした薪割り機とハンマーを一緒に備蓄木ステーションに備えて頂くことができると、備蓄木ステーションから個人単位でペール缶などに入れて薪を持っていくこともできて、例えば避難場所であれば、大きなかがり火だけでなく、テントや車中泊などで避難している時にはそうした単位でも焚き火をすることができるので、感染症の拡大が心配でたくさんの人数で火を囲むことに抵抗がある時期でも、火を分けることで安心につながるはずです。
それぞれで火を焚いていただきつつ、薪の大きな備蓄として備蓄木ステーションを設置して頂いて、避難していらっしゃった方各自で薪棚から薪を割って持って行って、補充するイメージですね。
備蓄木ステーションは、今は3立法メートルでご提案していますが、もっと大きな薪棚で備えて頂いても良いかもしれません。

あらかじめ薪を割って備えてしまうと、大きなかがり火として炊く場合には頻繁に補充が必要となったりして使い難くなるので、割りながら使っていただくのが良いですね。基本的には、大きな火は丸太の方が向いています。

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