交通事故の慰謝料を弁護士基準で計算するためのポイント5つ

交通事故の慰謝料を弁護士基準で計算するためのポイント5つ

交通事故の慰謝料の弁護士基準って何だろう?」

「弁護士基準で慰謝料を増額できるって本当なのかな?」

この記事をご覧になった方の多くは、このような疑問をお持ちのことでしょう。

弁護士基準とは、交通事故による慰謝料を計算する際に用いる算定基準のひとつです

交通事故に遭って怪我をすると、治療終了後に保険会社から慰謝料をはじめとする賠償金の額が提示されます。

しかし、保険会社は弁護士基準で慰謝料を計算しているわけではありませんので、そのまま示談すると損をしてしまう可能性が高いです。

適正な賠償金を受け取るためには、弁護士基準で計算した慰謝料額を請求する必要があります

そのためには、弁護士基準について正しい知識を持っておくことが大切です。

そこで今回は、

  • 交通事故の損害賠償における弁護士基準とは
  • 弁護士基準による慰謝料の計算方法
  • 弁護士基準で慰謝料を請求する方法

などについて解説していきます。

交通事故の被害に遭って、どのくらいの慰謝料がもらえるのかが気になっているすべての方に、この記事が手助けとなれば幸いです。

交通事故に遭った際の慰謝料獲得方法については以下の関連記事もご覧ください。

1、交通事故の慰謝料の弁護士基準とは?

まずは、交通事故の慰謝料の弁護士基準とはどのようなものなのか、基本的な事柄について確認しておきましょう。

(1)交通事故の慰謝料を計算する基準の1つ

そもそも慰謝料とは、他人の不法行為によって辛い思いをしたという精神的苦痛に対して支払われる賠償金のことです。

交通事故も過失による不法行為ですので、特に交通事故によりケガを負わされた場合には、被害者は加害者に対して慰謝料を請求できます。

請求できる金額は、本来なら精神的苦痛の程度に応じて計算されるべきものです。

しかし、苦痛の感じ方は人によって様々ですので、個別に金額を算定するのは困難です。

また、個別に算定すると、客観的には同じような被害でも、慰謝料額が大きく異なるケースが生じ、被害者の間で不公平な結果が生じてしまいます。

そのため、交通事故における損害賠償の実務では、慰謝料の計算方法について一定の客観的な算定基準が用意されているのです。

算定基準は次にご説明するように3種類のものがあり、そのうちの1つが「弁護士基準」です。

(2)慰謝料の算定基準は3種類ある

慰謝料の算定基準には、次の3つがあります。

①自賠責保険基準

自賠責保険基準とは、自賠責保険から慰謝料が支払われるときに用いられる算定基準のことです。

自賠責保険は人身事故に対する最低限の保障を目的とする強制保険であるため、その算定基準は3種類の基準の中で最も低く設定されています。

②任意保険基準

任意保険基準とは、任意保険から慰謝料が支払われるときに用いられる算定基準のことです。

任意保険とは、自賠責保険ではまかないきれない損害を補償するために運用されていますので、その算定基準は自賠責保険基準よりは高く設定されているはずです。

しかし、任意保険会社も利益を確保する必要があるからか、交通事故の被害者が受けた損害を十分に保障しているとはいえません。

そのため、次にご説明する弁護士基準よりは低い算定基準となっています。

③弁護士基準

弁護士基準とは、弁護士が交通事故の被害者から依頼を受けて加害者側に損害賠償請求を行う際に用いる慰謝料の算定基準のことです。

具体的には、公平の観点から、同程度の交通事故については同程度の賠償額になるように計算するために、実際の訴訟の中で示された裁判所の考え方や、交通事故についての過去の裁判例で認められた金額を基に導き出された基準です。

裁判所も交通事故に関する損害賠償請求訴訟において同じ基準を用いていることから、弁護士基準は「裁判所基準」と呼ばれることもあります。

(3)受け取る慰謝料が最も高額となる算定基準である

弁護士基準は上記のとおり、過去の裁判例を元に導き出されていますので、正当な根拠に基づいて被害者が受けた損害を評価するものであるといえます。

そして、3種類の基準の中で弁護士基準が最も高額の慰謝料額が算定される基準となっています。

3種類の基準を算定される慰謝料額が高い順に並べると、

弁護士基準 > 任意保険基準 > 自賠責保険基準

となります。

(4)算定基準によって影響を受ける「慰謝料」も3種類ある

ひと口に「慰謝料」といっても、交通事故の慰謝料には次の3種類のものがあります。

なお、基本的に物損のみの交通事故では慰謝料は発生しないことにご注意ください。

①入通院慰謝料(傷害慰謝料)

入通院慰謝料とは、交通事故によって負ってしまった怪我の治療のために、入通院をしなければならなくなってしまった場合に、この入通院によって被害者が被った精神的な損害を賠償するためのものです。

交通事故の被害者は、長く続く痛みに耐えなければならなかったり、度重なる検査・リハビリを余儀なくされたりしてしまいますので、これらの精神的な損害に対する迷惑料のようなものです。

②後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、怪我の治療を一定期間続けても完治せずに症状が残ってしまった場合に、今後の生活や仕事に支障が生じることによる精神的な損害を賠償するためのものです。

なお、後遺障害慰謝料は症状が残ったすべての場合に支払われるものではありません。第三者機関である自賠責調査事務所による審査の結果、後遺障害等級の認定がなされた場合にのみ支払われるのが原則です。

③死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、交通事故によって被害者が死亡した場合に支払われる慰謝料のことで、被害者本人に対する慰謝料と遺族に対する慰謝料とが含まれます。

被害者本人は、たとえ即死の場合であっても、交通事故に遭ってから亡くなるまでの間に多大な恐怖感や苦しみ、絶望感などを味わっているはずなので、交通事故が発生した瞬間に慰謝料請求権が発生します。

そして、本人の慰謝料請求権は相続によって遺族に受け継がれます。

また、遺族自身も、大切な人を失った哀しみや、今後の生活面での苦労などといった精神的損害を受けると考えられますので、固有の慰謝料請求権が発生します。

2、弁護士基準での入通院慰謝料の計算方法

まず、入通院慰謝料については、弁護士基準の中にもいくつか種類はあるのですが、多くの場合、以下のような表を用います。

参考1)弁護士基準における入通院慰謝料(以下は、『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』いわゆる「赤い本」による基準。)


ご覧のとおり、表が2つありますが、別表Ⅱは、「他覚的所見(主にMRIやレントゲン・CT等における画像所見)がないむち打ち症」などの場合に利用され、それ以外の場合には原則として別表Ⅰが利用される、という運用がなされています。

この表の見方ですが、まず、入院していた期間がある場合には、その入院期間に応じて縦の列を決めます。

例えば、入院期間が全くなければいちばん左の列ですし、入院期間が3か月あれば左から4番目の列(「3月」と記載されている列)となります。

そして、通院していた期間に応じて、その縦の列の中で下の方にマス目をたどっていき、入通院慰謝料額を計算します。

つまり、入院なし・通院3か月ならば、一番左の列の3月の行のマス=73万円となります。

もちろん、入院、通院が「●か月ちょうど」とならない場合の方が多いですし、骨折してギプス固定していた場合など、通院はしたけれど1か月に1度のペースで、半年間で10回にも満たないような場合もあります。

そのため、実際には、上記の表を用いて日割りで計算をしたり、実際の通院日数に3.5をかけた日数と通院期間を比較して短い方を通院日数と考える、といったように様々な修正をして計算することになります。

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