5、ひき逃げ加害者が不明な場合には政府保障事業制度を利用できる
加害者が不明な場合に、被害者の利益が一方的に奪われ、かつ回復できなくならないように、日本ではひき逃げの被害者を保護するための制度が設けられています。
この制度のことを政府保障事業制度言います。この制度は、自賠責保険や自賠責共済では被害者の保護を図れないひき逃げ事故や無保険車事故について、法定限度額の範囲で政府がその損害をてん補してくれるもので、自動車損害賠償保障法に定められています。
補償の範囲は、基本的にはこの法律に定められている自賠責保険や自賠責共済の範囲と同様ですが、健康保険や労災保険等の他の社会保険の給付(他法令給付)等がある場合にはその金額が差し引かれることや、仮渡金の制度がないといった点などが違います。
被害回復が全くできない場合に比べれば、一定の被害回復がはかれますので政府保障事業制度は被害者にとって大変有益な制度であると言えますが、政府保障事業制度で被害者の被害が回復されるのは、法律で定められる最低限度の範囲に限られてしまいます。
6、ひき逃げ被害に遭った場合自分の保険から補償を受けられる場合がある?
(1)人身傷害補償保険
この保険は、契約車両に乗っている人が、死傷してしまい、人的な損害が生じたときに、あらかじめ保険契約の内容で定められた保険金が保険契約に従って保障されます。
通常、自損事故等を含め自身の過失が大きい事故によって怪我をし、又は死亡したときに利用されることが多いですが、交通事故にあって死傷した方と保険会社との間に契約さえあれば、当該契約に従って保険金が支払われますで、ひき逃げのように加害者がいる(被保険者に過失がない)けれども加害者が判明しないといった場合であっても利用できます。
(2)無保険車傷害補償特約
この特約は、加害者が任意保険に未加入の場合や、任意保険に加入しているものの故意による事故等任意保険の適用が認められない場合、さらには上限金額が設定されており被害者の損害を補てんしきれない場合で、ひき逃げなどのように加害者不特定の場合でも、自身の保険会社が賠償してくれるという特約です。
人身傷害補償保険と異なる点は、人身傷害補償保険が慰謝料額等については原則として保険契約の内容に従った保険金が支払われるにすぎないのに対し、無保険車傷害補償特約では、加害者が負うべき損害賠償額を基準に自らが加入している保険会社が保険金を支払ってくれる点です。また、大きな違いとしては、この特約では、死亡または後遺障害を被ったときに限って利用できるという内容となっていることが多いという点です。
(3)車両保険
政府保障事業制度や上記の人身傷害補償保険、無保険車傷害補償特約は、身体的な損害についての補償であって、車両同士の事故で加害者が逃げてしまった場合の被害者の方の車両の損害については補償してくれませんが、被害者の方が車両保険に入って入れば、ご自身の加入する保険会社から保険金を受け取れます。
配信: LEGAL MALL