5、スピード違反で交通事故を起こした場合の違反点数や罰金について
(1)スピード違反自体の違反点数
スピード違反で交通事故を起こした場合、まずスピード違反について違反点数が与えられます。
スピード違反の場合の違反点数は、一般道と高速道路によって異なり、また、超過した速度によっても異なります。
具体的な違反点数は下記の表のとおりです。
違反点数が6点になると、交通違反の前歴がない場合でも一発免停になるので注意が必要です。
<一般道の場合>
超過速度 |
点数 |
~20km未満 |
1 |
20km以上~25km未満 |
2 |
25km以上~30km未満 |
3 |
30km以上~50km未満 |
6 |
50km以上~ |
12 |
<高速道路の場合>
超過速度 |
点数 |
~20km未満 |
1 |
20km以上~25km未満 |
2 |
25km以上~40km未満 |
3 |
40km以上~50km未満 |
6 |
50km以上~ |
12 |
(2)人身事故の場合の加算
人身事故の場合、スピード違反自体の違反点数に加えて、被害者の負傷の程度や双方の程度によって、下記の表のとおりの違反点数が加算されます。
また、スピード違反による人身事故は、スピード違反であると同時に安全運転義務違反(違反点数2点)にもなり、違反点数の高い方の点数のみ適用されるため、スピード違反の違反点数が2点未満の場合は安全運転義務違反の2点に、スピード違反の違反点数が2点以上の場合はスピード違反の違反点数に、下記の表のとおりの違反点数が加算されることになります。
被害者の負傷程度 |
過失(不注意)の程度 |
違反点数 |
|
死亡事故 |
運転者の一方的な過失 |
20 |
|
相手方にも過失があった場合 |
13 |
||
傷害の程度 |
全治3か月以上 |
運転者の一方的な過失 |
13 |
又は |
|||
身体に後遺障害が残ったとき |
相手方にも過失があった場合 |
9 |
|
全治30日以上3ヶ月未満 |
運転者の一方的な過失 |
9 |
|
相手方にも過失があった場合 |
6 |
||
全治15日以上30日未満 |
運転者の一方的な過失 |
6 |
|
相手方にも過失があった場合 |
4 |
||
全治15日未満 |
運転者の一方的な過失 |
3 |
|
又は |
|||
建造物損壊事故 |
相手方にも過失があった場合 |
2 |
(3)物損事故の場合の加算
物損事故の場合は、事故による違反点数の加算はありません。
ですから、スピード違反で交通事故を起こした場合でも、人身事故にならず物損事故にとどまった場合は、スピード違反による違反点数のみが与えられることになります。
6、スピード違反で交通事故を起こした場合の刑事罰について
(1)人身事故の場合
①過失運転致死傷罪
交通事故を起こして相手に怪我を負わせてしまった場合、過失運転致死傷罪が成立します。過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役(もしくは禁錮)又は100万円以下の罰金です。
この場合、まず、警察で取り調べを受けた後、検察に送られ(送検)、検察官が起訴するかどうかを判断します。
起訴されるかどうかは、本人の交通違反の前歴・前科の有無や、その事故における被害者の負傷の程度、被害弁償(示談)ができているかどうか等の事情が考慮されます。
起訴された場合は、裁判所で刑事裁判が行われ、上記の法定刑の範囲内での刑事罰が決定します(ただし、執行猶予が付く場合もあります)。
②道路交通法違反
スピード違反を犯した場合は、事故になっていない場合であっても、道路交通法違反となり、やはり刑事罰を受ける可能性があります。
ただ、スピード違反の場合、超過速度が、一般道で時速30km未満、高速道路で40km未満の場合は、交通反則通告制度(反則金制度)の対象となり、反則金を納めることで刑事罰を免れることができます。
しかし、前記以上の速度違反については、過失運転致死傷罪と同様、警察や検察の取り調べを経て、検察官が起訴をするかどうかを判断します。
スピード違反の法定刑は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金です。
なお、スピード違反の場合で、検察官が、罰金刑が相当であると判断した場合、違反者本人の同意があれば、正式起訴ではなく略式起訴ですませる場合もあります。
略式起訴の場合、起訴と同時に裁判所から略式命令が出され、その場で罰金を納めれば手続きが終了するので、正式裁判を受ける必要はなくなります。
スピード違反を犯して交通事故を起こし、相手方に怪我をさせてしまった場合は、前記の過失運転致死傷罪と道路交通法違反(速度超過)の両方の罪が成立します。
自動車運転過失致死傷罪と道路交通法違反(速度超過)の両方の罪が成立して起訴された場合、懲役10年6か月以下又は罰金110万円以下の範囲で刑事罰が与えられます(執行猶予がつくこともあります)。
③危険運転致死傷罪
スピード違反で交通事故を起こして相手方に怪我をさせてしまった場合に、そのスピード違反の程度が、「進行を制御することが困難な高速度」である場合、危険運転致死傷罪が成立する可能性があります。
危険運転致死傷罪の法定刑は15年以下の懲役と定められており、非常の重い犯罪の一つとされています。
「進行を制御することが困難な高速度」かどうかは、単にスピードだけでなく、走行していた道路の状況等によって個別に判断されますが、一般的に、直進道路では法定速度を時速50km以上超過した場合、カーブ等では時速40km以上超過した場合に適用が検討されることが多いようです。
(2)物損事故の場合
物損事故の場合、特に刑事罰はありません。
ただ、民事上、相手の車両の修理代等については、過失割合に応じた損害賠償義務が生じます。
この損害賠償義務については、自賠責保険は使えませんので、加入している任意保険を利用するか、自身で負担しなければならないことに注意が必要です。
配信: LEGAL MALL