「市販の着圧ストッキングは履かないより履いた方がいい程度」、足のむくみやこぶの改善には受診と治療が大前提

「市販の着圧ストッキングは履かないより履いた方がいい程度」、足のむくみやこぶの改善には受診と治療が大前提

商品によっては就寝中に着用する市販品の着圧ストッキング類。その使い方が医療用のストッキングに似ていることから、下肢静脈瘤の改善・予防もできるのではないかという期待をしてしまいます。はたして、そんなことが可能なのでしょうか。この問題に、「さかえ血管外科・循環器クリニック」の平本先生が回答します。

平本先生

監修医師:
平本 明徳(さかえ血管外科・循環器クリニック 院長)

名古屋市立大学医学部卒業。主に心臓血管外科の診療経験を積んだ後の2020年、愛知県名古屋市に「さかえ血管外科・循環器クリニック」開院。6000例以上の手術例を誇る下肢静脈瘤の日帰り治療に注力している。日本外科学会認定外科専門医、日本脈管学会認定脈管専門医・研修指導医、下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、日本静脈学会弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター。

市販品とは目的や用法が異なる場合も

市販品とは目的や用法が異なる場合も

編集部

市販されている美脚系のストッキングでも、下肢静脈瘤に効果的なのでしょうか?

平本先生

結論としては「履かないより、履いた方がいい程度」でしょうか。市販品には美脚目的の商品が多く、医療品よりも“締め付ける圧”が弱い印象です。また、医療品である弾性ストッキングには、「弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター」と呼ばれる専門職がいて、足のサイズの計測や履き方の指導をしてくれます。弾性ストッキングを薬局などで市販品のサイズに合わせて買うと、「サイズ違い」が起きるかもしれませんね。

編集部

本来の効果が得られないまま、日々を過ごしてしまうと?

平本先生

その可能性はあります。加えて、履くタイミングも問われます。市販品の中には「寝ているときの装着」を推奨している商品があるようです。これに対して弾性ストッキングは、日中、お仕事などをしているときに履くものです。医師からの説明がないまま、自宅でゴロゴロしているときに履いても、あまり意味はないでしょう。

編集部

足にたまった血液を「上に押し戻す」ことが目的ですからね?

平本先生

はい。寝ているとき、つまり、心臓と足の高さが同じときなら、血液は容易に循環します。足にこぶができるのは、血液の対流や停滞によるものです。そして、血液の対流や停滞は、立っているときに起こりがちです。

編集部

ただし、市販品で「たまたま」改善されることもあると?

平本先生

医療品の弾性ストッキングは圧が強いので、「なかなか履きづらい」という声もあります。まず市販品を試してみて、それで望んだ効果が得られれば、問題ないのではないでしょうか。ただし、「こぶが消えるような効果」はもともと望めません。むくみやだるさの改善程度でしょう。

治療不要説は「放置」を意味しない

治療不要説は「放置」を意味しない

編集部

下肢静脈瘤について、「過度な医療は控えるべき」との意見をみかけます。

平本先生

そうなのですが、放置していていいかというと、決してそんなことはないでしょう。ただ、死に直結する病気ではないため、治療の優先順位からすると「低め」なのかもしれません。その辺の考え方は、医師によって異なるようです。私個人の考え方は、「いずれ手術によって解決すべきだが、慌てる必要はなく、それまで弾性ストッキングなどで悪化防止しておきましょう」というものです。

編集部

気になってから本格的に治療をはじめても遅くないと?

平本先生

そうですね。患者さんが困っているのであれば、「見た目」も含めた“症状として”解決するべきでしょう。その一方、弾性ストッキングは患者さんが履くだけなので、医師からすると“医療”と認識しづらいのかもしれません。だからといって、「放置していてもいい」と思われたら、それは誤解です。

編集部

ところで、医院で扱っている弾性ストッキングって保険適用なのですか?

平本先生

いいえ。保険ウンヌンというより、あくまでも「販売している商品」という位置づけです。もちろん、診察は保険の範囲内でおこなえます。ですから、「保険の診察 + ストッキング代の実費」という形を取ります。この点も、「物販は治療に含まれない」という考え方の背景なのだと思われます。

編集部

いずれにしても、下肢静脈瘤になったら受診だけはしておいた方がいいですよね?

平本先生

ぜひ、下肢静脈瘤の治療を掲げている医院か血管外科にご相談ください。間違いなく言えるのは、「下肢静脈瘤は自然治癒しない」ということですね。正式に下肢静脈瘤と診断されたら、手術を受けるのはいつでもいいと思います。それまでの時間稼ぎとして弾性ストッキングを着用するのが、この病気への正しい向き合い方だと思います。

編集部

ちなみに、手術をしない方がいいケースってあるのでしょうか?

平本先生

はい、あります。足のこぶができているのは、「伏在静脈」という血管の“支流”です。これとは別に、「深部静脈」という血管の“本流”があります。この本流の血流障害の結果として支流にこぶができているとしたら、手術は見送ります。なぜなら、本流に血流障害がある状態では、支流の血流は非常に重要であり、その状態で支流の治療をおこなうと、足全体の静脈血流の障害が生じて、現状をより悪化させる可能性があるからです。“本流に異常が無く、支流に原因がある”場合のみ、手術が可能です。

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