後遺障害2級の認定を受ける方法や具体的対処法など徹底解説

後遺障害2級の認定を受ける方法や具体的対処法など徹底解説

3、後遺障害等級2級各号に該当する症状の具体的な説明

(1)第2級 介護を要する後遺障害

①「1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」

高次脳機能障害とは、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し」た場合の一例が、「高次脳機能障害」です。

ここにいう高次脳機能障害とは、脳外傷を原因とする、全般的な認知障害と人格変化が併存する症状を言います。

認知障害とは、記憶力・集中力・逐行力の障害、判断力の低下、病である認識の欠落などです。

具体的には、次のような認知行動ができなくなります。

新しいことを学習すること、複数の仕事を同時に処理すること、計画してこれを実行すること、周囲の状況に応じた適切な行動をすること、危険を予測・察知することなど。

人格変化とは、事故前と比較して、次のような状態が顕著となることです。

感情が変わり易く、不機嫌な状態が続く、攻撃性、暴言・暴力がみられる、幼稚である、羞恥心が低下している、多弁(饒舌)となり、自発性や活動力の低下、病的な嫉妬やねたみ、被害妄想などです。

交通事故における後遺障害等級認定は、労働災害における労災保険(労働者災害補償保険法)の給付を定める基準と同じであり、労災保険について定めた認定基準(障害等級認定基準)を交通事故にも用います。

高次脳機能障害についても、厚生労働省により「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」が定められています。

しかし、高次脳機能障害については、自賠責保険の方が先行して認定システムを充実させており、特別に、高次脳機能障害審査会を設置して、審査しています。

具体的には、「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について(報告書)」(平成23年3月4日付、自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会)という報告書に基づく運用がなされています。

その内容は、下記サイトで閲覧することができますが、医学的な専門的内容ですので、参考に留めて下さい。

http://www.giroj.or.jp/service/jibaiseki/tyousa/houkokusyo201103.pdf

「随時介護を要する」の「随時」とは、用語の意味としては、「いつでも」、「適宜」ですが、「常に介護を要するもの」が1級とされていることとの対比から、「必要なときに」の意味に解することができます。

これについては、次の基準が定められています。

a,重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの

b,高次脳機能障害による痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの

c,重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの

※「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」(厚生労働省)

  • 身体性機能障害

「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し」た場合のもう一例が、脳の損傷による身体性機能障害、すなわち「麻痺」です。

身体性機能障害のために随時介護が必要とするものとは、以下のものとされています。(「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」厚生労働省)

(ア)高度の片麻痺が認められるもの

(イ)中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの

(ア)及び(イ)の内容については、次を御覧ください。

  • 麻痺の程度

高度の麻痺

麻痺が高度とは、障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、障害のある上肢又は下肢の基本動作ができないものをいう。

基本動作とは、下肢においては歩行や立位、上肢においては物を持ち上げて移動させること。

具体例は下記です。

a,全強直又はこれに近い状態にあるもの

b,上肢においては、三大関節及び5つの手指のいずれの関節も自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの

c,下肢においては、三大関節のいずれも自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの

d,上肢においては、随意運動の顕著な障害により、障害を残した一上肢では物を持ち上げて移動させることができないもの

e,下肢においては、随意運動の顕著な障害により、一下肢の支持性及び随意的な運動性をほとんど失ったもの

中等度の麻痺

麻痺が中等度とは、障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、障害のある上肢又は下肢の基本動作にかなりの制限があるものをいう。

具体例は下記です。

a,上肢においては、障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね500g)を持ち上げることができないもの又は障害を残した一上肢では文字を書くことができないもの

b,下肢においては、障害を残した一下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの又は障害を残した両下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしには歩行が困難であるもの

  • 麻痺の範囲

a,四肢麻痺(両側の四肢の麻痺)

b,片麻痺(一側上下肢の麻痺)

c,単麻痺(上肢又は下肢の一肢のみの麻痺)

d,対麻痺(両下肢又は両上肢の麻痺)

※脳の損傷による麻痺については、abcが生じ、通常dが生じることはない。

脳の損傷による身体性機能障害の等級認定については、次の各点も注意点とされています。

a,麻痺の程度及び介護の有無と程度により障害等級を認定すること。

b,麻痺の程度は、運動障害の程度をもって判断すること。

c,麻痺の範囲及びその程度は、身体的所見及びMRI、CT等によって裏付けることのできることを要すること。

d,麻痺には運動障害及び感覚障害があるが、脳損傷により運動障害が生じた場合には通常運動障害の範囲に一致した感覚障害(感覚脱失又は感覚鈍麻等)が随伴すること。

②「2号   胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」

これに該当するのは、呼吸機能に障害を残したものです。

介護を要する2級2号の呼吸器障害に該当するか否かは、次の4種類の検査によって判定されます。

 

検査名

内容

動脈血酸素分圧

動脈血中の酸素量を圧力で測定する

動脈血炭酸ガス分圧

動脈血中の二酸化炭素量を圧力で測定する

スパイロメトリー

スパイロメーター(計測器)で呼吸量を測定する

呼吸困難の程度

呼吸困難の具体的な症状

呼吸器の後遺障害は、①動脈血酸素分圧と②動脈血炭酸ガス分圧の検査によって判定されます。

ただし、①及び②による等級が、③及び④により判定された等級に比して低い場合は、③及び④により判定された等級となります.

①動脈血酸素分圧及び②動脈血炭酸ガス分圧により第2級2号と認定される要件

①動脈血 酸素分圧

②動脈血 炭酸ガス分圧

 

37トル以上43トル以下

左の数値以外

50トル以下

1級から3級(※)

50トル超60トル以下

 

 

1級から3級(※)

 

「トル(Torr)」とは、圧力の単位です。

(※)1級から3級にあたる場合のうち、随時介護を要する場合が2級2号となります。

③スパイロメトリー及び④呼吸困難の程度により第2級2号と認定される要件

次の(A)及び(B)の両方を充たしたうえで、随時介護が必要な場合です。

(A)スパイロメトリー

(B)呼吸困難の程度

%1秒量が35以下又は%肺活量が40以下

呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないもの

「%1秒量」(パーセント1秒りょう)とは、努力性肺活量(最大吸気位から最大呼気位まで一気に吐き出した空気)のうち、最初の1秒間に吐き出した空気量を、その予測値に対する割合で示したもの。

「%肺活量」(パーセント肺活量)とは、予測された肺活量に対する、実際の肺活量の割合。

(2)第2級 後遺障害(介護を要しないもの)

①「1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.2以下になったもの」

②「2号 両眼の視力が0.02以下になったもの」

視力については、同表に「屈折異状のあるものについては、矯正視力について測定する。」と規定されています。

屈折異状とは、近視、遠視、乱視です。したがって、ここでは、眼鏡やコンタクトレンズを用いた矯正視力が0.02以下になった場合をいいます。

③「3号 両上肢を手関節以上で失ったもの」

上肢は、肩からひじ、ひじから手首、手首から手のひらに分けることができます。手関節とは手首です。

つまり「手関節以上で失った」とは、手首よりも上の部分からの欠損です。一方、「両上肢をひじ関節以上で失った」場合、つまりひじ関節よりも上の欠損は、第1級3号に該当すると定められています。

したがって、第2級3号は、ひじ部分は残っているが、そこから手首までの間で切断された欠損を指します。

④「4号 両下肢を足関節以上で失ったもの」

下肢は、股関節からひざ関節、ひざ関節から足首、足首から先の部分に分けることができます。足関節とは足首です。

つまり「足関節以上で失った」とは、足首よりも上の部分からの欠損です。一方、「両下肢をひざ関節以上で失った」場合、つまりひざ関節よりも上の欠損は、第1級5号に該当すると定められています。

したがって、第2級4号は、ひざ部分は残っているが、そこから足首までの間で切断された欠損を指します。

4、後遺障害等級1級認定の場合に獲得できる損害賠償額について

(1)損害賠償総額の計算方法について

交通事故における損害賠償額の計算方法については、ネットなどで、自賠責基準、保険会社基準、弁護士基準、裁判所基準などという名称で、異なる基準が存在し、弁護士記基準、裁判所基準が最も高額で被害者に有利であるが、弁護士に依頼しない限り、弁護士基準の賠償は得られないなどと紹介されています。

しかし、この説明は、間違いです。

まず、自賠責保険(同共済)における賠償額は、「自動車損害賠償責任保険の保険金及び自動車損害賠償責任共済金等の支払基準」(平成13年金融庁国土交通省告示第1号)に定められています。

これは、自賠責という強制保険から支払われるものなので、最低保障の意味合いが強く、低額であるのは当然です。

次に、かつては各保険会社に共通する基準として、「自動車対人賠償保険支払基準」という統一支払基準が作成されていました。しかし、これは保険の自由化に伴い、平成9年に廃止されています。

現在は、各保険会社(及び共済組合)が自社の内部資料としての基準を持つだけで、それは、あくまで各社の業務準則ですから外部に公表するものではありません。

次に、弁護士会は、支払基準を掲載した、次のような各種の文献を公表しています。

  1. 「交通事故損害額算定基準」(財団法人日弁連交通事故相談センター編)
  2. 「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」(財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)
  3. 「交通事故損害賠償算定のしおり」(大阪弁護士会交通事故委員会編)
  4. 「交通事故損害賠償額算定基準」(財団法人日弁連交通事故相談センター愛知県支部編)

書籍の性格としては、1(通称「青い本」)が全国版、2(通称「赤い本」)が東京地裁民事交通部版、3が大阪地裁民事交通部版、4が名古屋地裁民事交通部版とされています。

そして、事実上、2(通称「赤い本」)が、東京地裁民事交通部をはじめ、多数の裁判所で重視されている資料です。

「弁護士基準」などと称されている数値は、この「赤い本」を指しているようです。

しかし、弁護士基準なる数値によって賠償額が決まるなら、このように複数の支払基準が存在する必要はありませんし、赤い本を残して、他の文献は消滅しているはずですが、そうなっていません。

赤い本の数字を含め、これら支払基準は、実務では、たたき台に過ぎません。

目安になる何らの数値もなければ、議論が進まないので、何らかの数値は設定しておかなくてはなりませんが、裁判所も、弁護士も、保険会社も、これに拘束されているわけではないのです。

損害賠償額は、交通事故事案ごとの具体的な事情に照らして決まるものです。

(2)後遺障害等級2級が認定された場合の慰謝料の金額について

後遺障害の等級は、損害賠償金のうち、慰謝料(後遺障害慰謝料)、逸失利益に影響します。

後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったこと自体の精神的損害に対する賠償で、等級に応じた金額が支払われます。

①自賠責基準での慰謝料

自賠責保険における後遺障害等級2級の後遺障害慰謝料

別表一(介護を要

する後遺障害)

原則

1163万円

被扶養者がいる場合

1333万円

初期費用等

上記各金額に、205万円加算

別表二

原則

958万円

 

被扶養者がいる場合

1128万円

なお、上記金額は、強制保険である自賠責から支払われる分であって、賠償額の上限ではないことは説明しました。

②弁護士基準での慰謝料

赤い本、青い本による後遺障害等級2級の後遺障害慰謝料

赤い本

2370万円

青い本

2300~2700万円

後遺障害慰謝料は、自賠責保険の等級別保険金額(上限)の8割から9割程度というのが、弁護士の一般的な相場感覚と言われてきました。

2級の自賠責保険額(上限)は、要介護3000万円、非介護2590万ですから、その90%というと、約2700万円から約2300万円となります。

上記の青い本の金額が、多くの弁護士の相場感覚に一致していることになります。

(3)後遺障害等2級が認定された場合の逸失利益について

逸失利益とは、労働を継続することで、将来にわたり得られたはずの経済的利益です。

後遺障害が認められると、等級に応じて、労働能力の喪失、つまり働く力が失われたと認められ、これに対する賠償が与えられます。

①逸失利益の計算方法

逸失利益の賠償額は、次の算式で計算します。

逸失利益=(年収額☓労働能力喪失率☓喪失期間)-中間利息

まず、「年収額☓労働能力喪失率☓喪失期間」の部分を説明します。例えば、年収1,000万円の人が、働く力が5割となった(喪失率50%)、事故がなければ後10年は働けたという場合、1,000万円☓(100分の50)☓10年=5,000万円となります。

年収額は、手取りではなく、サラリーマンの場合は、税金や社会保険などの各種控除をする前の総所得額で計算します。

税金や社会保険料などは、本来は、収入を得た者が、その収入の中から支払うものであり、加害者や保険会社が支払うものではないからです。尚、現在の実務では、交通事故の損害賠償金は非課税扱いです。

次に、労働能力喪失率は、後遺障害によって失われたとされる労働する能力で、労働災害補償のための労働能力喪失表を利用することは説明しました。

後遺障害2級の喪失率は、100%(100分の100)です。

次に喪失期間とは、労働能力を喪失していなければ、完全な状態で働き収入をあげることができたはずの年数です。

通常は、67歳まで働くものとして考えます(但し、事案によります)。例えば、40歳で受傷したときは、喪失期間は、27年となります。

最後に、中間利息について説明します。逸失利益の賠償は、本来、将来に渡って働いて得られる収入を補償してもらうものです。

つまり、事故がなければ、収入を得られるのは、将来の話であるのに、事故のために、今、一時金として、収入を貰えるのです。

将来にわたって、毎月、一定額ずつ収入を得る場合とその総額を一時金として、今、受取る場合の大きな違いは、今受け取った一時金を一度に全部使ってしまわない限り、理論上は、利息がついて金額が増える可能性があるということです。

しかし、損害賠償は、あくまで損失を補てんするものですから、被害者に利益を得させる必要はありません。

そこで、この利息分(中間利息)を、逸失利益の賠償額から差し引きするのです。これを中間利息の控除といいます。

中間利息を控除するための計算式には、複数の方式があるのですが、現在の実務は、複利計算を用いるライプニッツ方式が用いられます。

ライプニッツ方式で用いられるのが、ライプニッツ係数という数値ですが、その実際の計算方法は複雑ですし、知る必要もありません。

次の2点を知っていれば、十分です。

(その1)

ライプニッツ係数を用いた逸失利益の計算方法

逸失利益=

年収額☓労働能力喪失率☓「被害者の年齢に応じたライプニッツ係数」

(その2)

上記の「被害者の年齢に応じたライプニッツ係数」とは、「自動車損害賠償責任保険の保険金及び自動車損害賠償責任共済金等の支払基準」(平成13年金融庁国土交通省告示第1号)の別表Ⅱ-1の表に記載された数値です。

同表は、国土交通省の下記サイトでダウンロードできます。

http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/syuro.pdf

同表は、「被害者の年齢」、「就労可能年数」(67歳までの年数)と、それに対応したライプニッツ係数が一覧表となっています。受傷時の被害者の年齢に対応する係数を用いて計算するだけです。

②具体的な逸失利益の計算事例

例えば、年収500万円、年齢45歳、喪失率50%の場合、同別表Ⅱ-1の対応するライプニッツ係数は、13.163です。

逸失利益=500万円☓50%☓13.163=3290万7500円

2級のケースでみてみましょう。

年収700万円、年齢52歳、喪失率100%の場合、同別表Ⅱ-1の対応するライプニッツ係数は、10.38です

逸失利益=700万円☓100%☓10.38=7266万円

(4)損害計算シミュレーション

後遺障害等級2級の場合 労働能力喪失率は、100%(即ち1分の1)ですから、年収に、受傷時年齢に対応するライプニッツ係数を乗ずるだけで、逸失利益が算出されます。とても簡単な計算となります。

これに、後遺障害慰謝料が(仮に赤い本基準とすると)2370万円です。

いくつか計算例を示します。                      

年収

年齢

係数

逸失利益

慰謝料

合計額

600万

48

12.085

7251万

2370万

9621万

650万

50

11.274

7328.1万

2370万

9698.1万

700万

55

9.899

6929.3万

2370万

9299.3万

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