後遺障害4級の認定を受けるために知っておきたい5つのこと

後遺障害4級の認定を受けるために知っておきたい5つのこと

3、後遺障害等級4級認定の場合に獲得できる損害賠償額について

(1)損害賠償総額の計算方法について

交通事故における損害賠償では、被害者が事故によって被った損害の種類(項目)ごとに賠償額(被害額)を算出し、それらを合計してその総額を算出することになります。

損害の項目の代表的なものとしては次のようなものが挙げられます(もちろんケースによってはここに挙げたもの以外の損害、例えば付添費用、死亡事故の場合の葬儀費用など様々なものが考えられます)。

  1. 治療費
  2. 通院交通費
  3. 休業損害
  4. 入通院慰謝料
  5. 後遺症慰謝料
  6. 後遺症による逸失利益

後遺障害が残らなかったケースでは1.~4.までの項目について考えればよいのですが、後遺障害が残った場合については5.の後遺症慰謝料と6.の逸失利益についても検討する必要があります。

ここでは、後遺障害に特有の損害である5.と6.について、後遺障害等級4級の場合につき説明することにしましょう。

(2)後遺障害等級4級が認定された場合の慰謝料の金額について

後遺障害が残った場合には、入通院慰謝料(4.)とは別に、後遺障害が残ってしまったことに対する慰謝料(5.後遺症慰謝料)も発生します。

訴訟時に損害賠償の算定基準として利用されているいわゆる赤い本の基準では、4級の後遺症慰謝料は1670万円が目安とされています。

(3)後遺障害等級4級が認定された場合の逸失利益について

後遺障害が残ってしまうと事故前よりも身体の自由が利かなくなりますから、その分仕事をする能力(労働能力)が減り、それに伴って収入も減ることが予測されます。

被害者としては、事故に遭わなければ得られたはずの賃金が事故に遭ったことによって得られなくなってしまうことになります。

将来得られたはずの利益を得られなくなったという被害者が受けるこの損害を逸失利益といいます。

後遺障害の程度が重ければ重いほど労働能力は失われることになりますから、逸失利益は後遺障害の程度に応じて算定されることになります。

具体的には、以下の式により算定されます。

逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

以下にこの式の内容について説明をしておきます。

①基礎収入額

減少する前の収入は人によって異なりますので事故前の収入を基礎とするのが原則です。

ただし、主婦や学生などのように具体的な収入がない人の場合には、賃金の実態に関する厚生労働省の調査結果をまとめた賃金センサスによる金額を基礎収入とします。

②労働能力喪失率

後遺障害の程度ごとに、労働能力が失われた割合を示したものが労働能力喪失率で、後遺障害の等級が高いほど労働能力喪失率も高くなります。具体的には下表のとおりです。

等級

労働能力喪失率

1級

100%

2級

100%

3級

100%

4級

92%

5級

79%

6級

67%

7級

56%

8級

45%

9級

35%

10級

27%

11級

20%

12級

14%

13級

9%

14級

5%

③ライプニッツ係数

後遺障害による逸失利益は、本来は被害者に将来発生する損害です。

被害者が毎月給料を受け取っているのであれば、事故後から被害者が退職するまでの間、毎月被害者に損害が発生することになります。

ただ、事故後長期間にわたって毎月ごとに賠償をさせるのでは賠償問題の解決に大変時間がかかることになりますし、加害者・被害者双方にとって大変わずらわしく不便です。

したがって、裁判実務上は、本来は将来にわたって順次発生するはずのこの損害(つまりまだ発生していない損害)を前倒しかつ一括で賠償させることとしています。

しかし、このように前倒しで賠償をさせることは、本来はまだ得られないはずの賠償金を早期に受け取れることになって、被害者に利得が生ずることになります。

例えば、被害者が賠償金を一括で受け取ってすぐに預金したとすれば、被害者が退職するまでの間にその預金から生ずる利息分を被害者が得をすることになります。

この被害者に生ずる利得を調整するために中間利息の控除という作業をする必要があり、そのために実務上利用されているのが「ライプニッツ係数」という係数です。

具体的には、労働能力喪失期間(事故から仕事をリタイアするまでの年数)に対応するライプニッツ係数を基礎収入額と労働能力喪失率に掛けることになります。

なお、被害者がいつまで仕事を続けるかは不確定な事実ですが、裁判実務上は67歳までは労働が可能であるとして労働能力喪失期間を算出しています。

つまり、

67歳-事故時の年齢=労働能力喪失期間(就労可能期間)

ということになります。

(4)損害計算シミュレーション

以上を前提に、年収400万円、事故時の年齢40歳の被害者Aさんが4級の後遺障害を負った場合の逸失利益を計算してみましょう。

①後遺症慰謝料

4級の後遺症慰謝料の目安はすでに述べたとおり1670万円です。

②逸失利益

4級の労働能力喪失率は92%(=0.92)、労働能力喪失期間は40歳から67歳までの27年間でこれに対応するライプニッツ係数は14.6430となりますので、先ほどの計算式にこれらの数値を代入してみます。

400万円×0.92×14.6430=5388万6240円

③合計

1670万円+5388万6240円=7068万6240円

Aさんは後遺障害関係の賠償金として7068万6240円の賠償を受けることができることになります。もちろんAさんはこれに加えて、3(1)①~④に関する賠償金も受け取れます。

4、適切な後遺障害等級認定の獲得方法

(1)申請手続きは被害者請求で

後遺障害等級の認定を受けるには、損害保険料率算出機構に等級認定の申請を行う必要がありますが、この等級認定の手続きは自賠責保険の請求手続きの一環として行われます。

この手続きの方法としては、①事前認定と②被害者請求の2種類の方法があります。

このうち、①の事前認定は加害者側の保険会社を通して行うもので、被害者は医師に後遺障害診断書を作成してもらうのみで大変楽に手続きができるのがメリットです。

②の被害者請求は、被害者自身が自賠責保険の請求手続きを行い、それに伴って等級認定を受けるもので、①に比べると被害者自身が書類を揃えて手続きを行う必要がある分面倒ではあります。

ただ、後遺障害等級認定に当たっては、認定の資料となる診断書やカルテなどの内容が十分なものであるとは限りません。

例えば、医師が後遺障害診断書を作成し慣れていないために不十分もしくは不適切な記載が行われてしまうケースもあります。

事前認定によるとこのようなケースで不足する資料を被害者が補足することができず不利な認定が行われてしまうことがあるのに対して、被害者請求によれば等級認定のために提出する資料を被害者自身がコントロールすることができますので不利な認定を防ぐことができる可能性が高まります。

したがって、等級認定を受ける際には、面倒ではあっても被害者請求によることが望ましいでしょう。

(2)適切な後遺障害等級認定を受けるためのポイント

先ほども述べたとおり、被害者請求により等級認定を受けることが適切な後遺障害等級認定を受けるためのポイントの一つですが、その他にも次のようなポイントがあります。

①通院時から医師に症状を明確に伝えること

当然ですが、治療を受けるごとに医師が作成するカルテの記載内容も等級認定の資料となります。

カルテ上の症状に関する記載内容が適切になされていなければ認定にあたって不利になるおそれがありますから、通院時からその時点での自分の症状について医師に正確に伝えておく必要があります。

②後遺障害診断書の内容のチェック

医師によっては後遺障害診断書の作成に慣れてない人もいます。

後遺障害等級認定に使用される後遺障害診断書は独特の体裁のもので、通常の診断書とは記載内容が大きく異なります。

医師に後遺障害診断書を作成してもらったら、よくその内容を確認し、できれば弁護士に内容をチェックしてもらいましょう。

③弁護士への依頼

場合によっては、被害者請求時に弁護士に依頼した方がよいことがあります。

これについては次項に詳しく説明します。

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