後遺障害診断書とは?後遺障害等級認定の決め手について解説

後遺障害診断書とは?後遺障害等級認定の決め手について解説

3、後遺障害等級認定を獲得しやすい後遺障害診断書の記入例

後遺障害に関する損害賠償請求で非常に重要な意味を持つ後遺障害診断書ですが、記載するのは医師です。

ご自身で自由に記載できるわけではありません。

では、後遺障害診断書にどのような記載があれば、後遺障害等級認定を獲得しやすいのでしょうか。

わかりやすいように、記入例をご紹介します。


この記入例は、交通事故でむち打ち症となり、ベリーベスト法律事務所に損害賠償請求を依頼され、後遺障害等級第12級を獲得した方の後遺障害診断書です。(ただし、プライバシーに差し支えのある部分は修正してあります。)

以下、この記入例をもとにしてポイントをご説明します。

(1)後遺障害等級認定の決め手となる3つの記入欄

上記の記入例には様々な記載がありますが、後遺障害等級認定との関係で特に重要な意味を持つのは、次の3つの記入欄です。

  • 自覚症状
  • 各部位の後遺障害の内容
  • 障害内容の憎悪・緩解の見通し

それぞれについて、具体的にご説明します。

(2)自覚症状

この欄には、被害者自身が感じる症状が記載されます。

実際に自覚症状があっても、この欄に記載されなければ、その症状はないものとして扱われてしまいます。

そのため、少しでも自覚症状があれば遠慮することなく、正確かつ具体的に医師に伝えることが必要です。

右手がしびれる、頭が痛い、頚部が痛い等、どの部位にどのような症状があるかを正確に医師に伝えるようにしましょう。

また、常に痛みがある場合でも、雨が続いたり、寒い時期になってくると「雨が降ると痛い」であったり「寒くなると痛い」などと訴えてしまう方が多いように思われます。

これでは、常に痛みがあることが分からなくなってしまうので、「常時痛いが、雨が降ると(寒くなると)特に痛みが増幅する」などと、痛みが出る「時」についても正確に伝えるように注意してください。

(3)各部位の後遺障害の内容

この欄には、レントゲンやMRI、CTなどの画像検査や、神経学的検査を踏まえた結果として医学的に判断される症状を記載されます。

自覚症状のみでは、極端にいうと患者の「気のせい」ということもあり得るので、この欄には医師からみた客観的な所見が記載されるのです。

自覚症状があっても、この欄にその症状の原因となる所見が記載されていなければ、後遺障害等級が非該当となったり、本来よりも低い等級に認定されてしまう可能性があります。

(4)障害内容の増悪・緩解の見通し

この欄には、残存した症状について、悪化傾向にあるかのか良化傾向にあるのか、時の経過に伴って改善する見込みがあるかなどについて、後遺障害診断書作成時点での医師の見解が記載されます。

自覚症状や他覚所見がきちんと記載されていても、この欄に「数年経てば緩解する見込みである」などと記載されると、後遺障害等級が非該当となる可能性が高くなりますので、「今後も症状は不変である」というニュアンスで書いてもらうのがベストということになります。

4、後遺障害等級認定を獲得しやすい後遺障害診断書を作成してもらうためのポイント

では、後遺障害等級認定を獲得しやすい後遺障害診断書を医師に作成してもらうためには、どうすればよいのでしょうか。

ここでは、後遺障害診断書作成の際に被害者自身が行える対処法をご紹介します。

(1)自覚症状を正確かつ具体的に伝える

前記「3(1)」でもお伝えしたように、自覚症状は正確かつ具体的に医師に伝える必要があります。

患者が話さなかったことを医師が診断書に書くことはありませんので、少しでも気になる症状があれば自分の方から医師に伝えなければなりません。

ただ、医師の中には患者の言葉にじっくりと耳を傾ける姿勢の乏しい人がいるかもしれません。

また、医師が忙しそうにしていると、口頭ではなかなか的確に自覚症状を説明しづらいという人もいるでしょう。

そんなときは、あらかじめ自覚症状を紙に書き出しておき、診察の際に医師に渡して確認してもらうのがおすすめです。

(2)必要な検査を受ける

前記「3(3)」で、「各部位の後遺障害の内容」の欄には、医師からみた客観的な所見が記載されるということを説明しました。

しかし、実際のところ、必要な検査が行われていないために適切な所見が記載されていないというケースが少なくありません。

記入例では、この欄に記載された「椎間板にヘルニア突出」などの所見の記載が決め手となって、後遺障害等級第12級が認定されていると思われます。

そのため、このケースで、そもそもMRI検査や神経学的検査が行われていなかったとしたら、後遺障害等級は非該当か、認定されても14級にとどまったことでしょう。

自覚症状の原因について医師から納得のいく説明がない場合は、「詳しく検査してください」と申し出ることが必要です。

(3)記入例を医師に渡す

後遺障害診断書を書いた経験が乏しい医師であれば、書き方の要領がわからないために、適切な後遺障害診断書を書けないという可能性があります。

医師であっても、すべての医師が後遺障害診断書の作成に慣れているわけではありません。

むしろ、これまでに後遺障害診断書など書いたことがないという医師も多いはずです。

主治医が後遺障害診断書の作成に慣れていないと思われる場合は、記入例を手渡すのもひとつの方法です。

ただし、「この通りに書いてください」と言って記載内容を指示することは避けてください。

あくまでも、「このように書いていただけるとありがたい」という態度で参考資料を提供するだけです。

(4)記入漏れがないか確認する

医師が後遺障害診断書を作成すると、被害者に直接手渡されます。

被害者はそれを保険会社の担当者に提出する(事前認定の場合)か、自分で直接自賠責保険会社に提出する(被害者請求の場合)ことによって、後遺障害等級認定の申請を行います。

ここで、申請をする前にご自身で後遺障害診断書の記載内容を見て、記入漏れがないかを確認することが重要です。

特に、前記「3」の(2)~(4)の欄にしっかりとした内容が記載されているかをご確認ください。

記入漏れがあったり、必要な検査が行われていないことに気付いた場合は、再度診察を受けて後遺障害診断書を書き直してもらう姿勢も大切です。

(5)弁護士のチェックを受ける

これまで、後遺障害診断書のチェックポイントについて触れてきましたが、作成された後遺障害診断書に記載された内容が適切かどうかを一般の方が判断するのは難しいものです。

そこで、後遺障害診断書を受け取ったら、弁護士にご相談の上、記載内容をチェックしてもらいましょう。

交通事故に詳しい弁護士なら、後遺障害診断書を見れば、後遺障害等級認定を獲得できるかどうか、何級に認定されそうかの見通しを判断することができます。

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