ある日突然発生する交通事故に巻き込まれた被害者は、加害者のみに責任があると思ってしまいがちです。
しかし、被害者であっても過失が認められるケースが少なくありません。
被害者に過失が認められると、受け取れる賠償額は減少します。
予想外の過失が認められて損をしないために、示談交渉にあたっては過失や過失割合に関する正確な知識を持ち、保険会社と適切に交渉しなければなりません。
そこで今回は、
- 過失や過失割合とはどのようなものか
- 過失割合によって賠償金の支払い額にどのような影響があるのか
- 過失割合について加害者側と意見が食い違う場合はどうすればいいのか
上記の点について解説していきます。
交通事故における示談については以下の関連記事もご覧ください。
1、事故の過失割合が賠償金の支払い額に及ぼす影響
まずは、過失割合に関する基本から解説していきます。
(1)過失割合とは
過失割合とは、発生した交通事故について、加害者と被害者双方にどの程度の落ち度(過失)があるのかを割合として示したもののことをいいます。
交通事故も様々なケースがあるため、交通事故の主な原因を作った加害者に、常に100%の損害賠償義務を負わせることは、公平とは言えないケースが多々あります。
そこで、被害者の過失の程度に応じて損害の負担を分担し、公平になるよう調整する必要があるのです。
そのため、交通事故の損害賠償においては、必ず加害者と被害者との過失割合を決めて発生した損害の分担を決めて調整しているのです。
(2)過失割合はどのようにして決まるのか
残念ながら交通事故は、毎日のように多数発生しています。多数の事故ごとに過失割合を一から話し合って決めていてはコストがかかりすぎますし、ほぼ同じ事故であるにも関わらず過失割合にバラつきが出てしまい不公平な結果となりかねません。
そこで、過失割合を判断する際には、過去の判例の過失割合を基本としつつ、個別の事故の特殊事情に応じた修正を加えて判断していくといった方法(「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(別冊判例タイムズ38号)」参照)を用いることが一般的です。
(3)過失割合によって賠償金の受取額が減る
例えば、ある被害者が、交通事故により100万円の損害を受けたとします。
過失が認定されない場合、被害者は、損害と同額である100万円の賠償を受ける権利があります。
一方で、過失割合が加害者90対被害者10なら10%減の90万円の賠償を受ける権利へと減額されます。
さらに、過失割合が加害者80対被害者20であれば、20%減の80万円に減額されます。
被害者は、減額された結果、賠償を受けられなかった10万円や20万円の損害を、自己負担するか、自分が加入している保険によって補うこととなります。
2、事故の過失割合によって被害者に支払い義務が生じることも
被害者側にも過失が認められると、加害者側に生じた損害を被害者が賠償しなければならない責任が発生します。
被害者が受け取る賠償金と加害者に支払う賠償金は、清算して差額のみが支払われることが多いため、場合によっては、事故に遭った被害者が、加害者に対して賠償金の支払いをすることにもなりうるのです。
例えば、被害者の損害額が100万円、加害者の損害額が500万円、過失割合が被害者20対加害者80のケースを考えてみましょう。
- 被害者が支払うべき賠償額 100万円
(加害者の損害額500万円×過失20%)
- 加害者が支払うべき賠償額 80万円
(被害者の損害額100万円×過失80%)
このケースでは、清算処理の結果、被害者は20万円の賠償金を加害者に支払う義務が生じます。
もっとも、任意保険に加入していれば、被害者が支払うべき賠償額である100万円については、対人賠償保険か対物賠償保険によって賄うことができますので、80万円を丸々受け取ることができるのが通常です。
配信: LEGAL MALL