バス事故に遭遇した際の賠償請求で損しない6つの知識【弁護士監修】

バス事故に遭遇した際の賠償請求で損しない6つの知識【弁護士監修】

バス事故に巻き込まれてしまったら、どうすればよいでしょうか。

ある日、突然、家族がバスに乗っていて怪我をした、死亡したという場合、家族に代わってあなたができることは何でしょうか。

規制緩和、低価格競争、外国人観光客の増加などの社会的な影響により、バス業界の需要は伸びているといわれています。

しかし、他方で、バスによる悲惨な交通事故で犠牲者が出てしまう現実も後を絶ちません。

政府による抜本的な対策や体制の立て直しもなされておらず、いつバスによる交通事故に巻き込まれるか分からない状況にあるといえます。

そこで、今回は、

  • 家族がバスによる交通事故に巻き込まれた場合の損害(被害)の賠償請求の方法

などについて、ベリーベスト法律事務所の交通事故専門チームの弁護士が解説したいと思います。

この記事がバス事故による交通事故に巻き込まれ、不安、不満を抱えている方にとっての一助となれば幸いです。

また、こちらの関連記事では交通事故での被害者が損をしないための知識について解説しています。突然の交通事故に遭遇されお困りの方は、こちらの記事もあわせてご参考いただければと思います。

1、バス事故が発生する背景とは?

まず、バス事故が発生する背景から探ってみたいと思います。

(1)バス事故発生件数

バス事故(乗合バス、貸切バス)の発生件数は年々減少傾向にあります。

統計資料によると、

  • 平成26年 1972件
  • 平成27年 1772件
  • 平成28年 1556件

でした。

しかし、保有台数1万台あたりのバスを含む事業用車両の交通事故件数は自動車(道路交通法施行規則第2条に定める大型自動車、中型自動車、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車)の4.1倍と、交通事故発生率は普通の車に比べ高めとなっています。

(2)どのようなバス事故が多いのか

①乗合バス

平成28年度中に発生した乗合バスの交通事故は、以下のような件数となっています。

  • 「車内事故」(単独事故) 394件(全体の31.8%)
  • 「追突事故」 177件

②貸切バス

平成28年度中に発生した貸切バスの交通事故は、以下のような件数となっています。

  • 「追突事故」 107件(全体の35.5%)
  • 「すれ違い、左折、右折時衝突」 56件
  • 「車内事故」 6件

参照:国土交通省 事業用自動車の交通事故統計の概要(平成28年度版)

(3)なぜバス事故が起きてしまうのか

では、なぜ、バス事故が起きてしまうのでしょうか。

直接の原因は運転手のミスにあることは当然ですが、そのミスが発生してしまった背景を考える必要があるようです。

①運転手の過労や体調急変

人手不足の影響もあって、運転手によっては、連勤が続き、1日の睡眠時間が極端に短い過酷な勤務を強いられているようです。

国土交通省が平成29年にバス運転手約7083人を対象に行ったアンケートでは、その25%の人が1日の睡眠時間が5時間未満と回答しています。

また、健康状態に起因するバスの事故報告件数は、事業者の意識の高まり等を受け年々増加傾向にあり、平成28年度は161件とのことで、うち13件は運転手の意識障害等で運転操作が不能となったケースでした。

②バス会社の労働環境が悪化

人手不足はバス会社の労働環境の悪化が原因のようです。

厚生労働省の調べによると、平成28年度におけるバス運転者の年間労働時間平均は2520時間と全産業労働者平均の2124時間を大きく上回っています。

にもかかわらず、バス運転者の平均所得は448万円と全産業の490万円を大きく下回っています。

また、バス運転においては、休息時間(勤務と勤務の間の時間で、労働者が自由に使える時間)を8時間以上設けないといけないのですが、約2割のバス運転者が8時間未満となっており、労働環境の過酷さがうかがえます。

③無理がある運行計画

平成27年7月14日、三重県四日市市の高速道路において、貸切バスが前を走っていた大型トラックに衝突し、その弾みでガードレールを突き破り、約2メートル下の畑まで転落し、貸切バスの乗客21名と大型トラックの運転手に重軽症を負わせる交通事故がありました。

事故後の調査では、事故の原因は、運行指示書自体が運行の実態に沿っていなかったこと、運転手が無理な運行指示であることを認識しながらバスを運転していたことなどにあると指摘されています。

2、近年のバス事故

ここでは、近年起きたバス事故の例をご紹介いたします。

(1)名神高速の事故

令和元年5月24日午後4時40分頃、滋賀県草津市内の名神高速道路上り草津ジャンクション付近で、大型観光バスがワゴン車に追突して玉突き事故を発生させ、17人を死傷させた交通事故。

事故の原因は、バス運転手の前方不注視とみられています。

(2)軽井沢スキーバス事故

平成28年1月15日午前1時55分頃、長野県北佐久軍軽井沢町の国道入山峠付近で、大型観光バスがガードレールをなぎ倒し、道路脇に転落して、乗員・乗客41人中15人を死亡させ、生存者全員を負傷させた交通事故。

この事故をきっかけに、貸切バスにドライブレコーダー設置が義務付けられました。

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