3、保釈保証金の額はどのように決まるか
保釈保証金の額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければなりません(刑事訴訟法93条2項)。実務上は、そのほか被告人の生活環境、身元引受人の有無などを考慮して、裁判官が決定します。
例えば、重大な犯罪を行い、それが裁判で認められる可能性が十分な場合には、実刑判決となる可能性も高まりますから、その分、裁判から逃げ出してしまおうという意欲も高まります。このような場合には保釈保証金の額も高額となります。
また、被告人が何十億の資産を持っているのに、200万円を納付させても、被告人がそれを捨てて逃亡することも考えられますから、そのような被告人には、逃亡を躊躇させる程度の額(例えば、数千万、数億円)の保釈保証金が設定されることになります。
逆に、被告人の資産・収入が特段高額であるという事情がなく、執行猶予が見込まれる場合には、200万円から300万円程度の金額が設定されることが多いというのが一般的な感覚だと思われます。
保釈保証金は、基本的には裁判官が職権で決めるものですが、現実の問題としては、被告人又はその親族、友人等で調達することができる範囲の金額でなければ、保釈を許可されても、勾留の執行を停止できません。そこで、実際上、弁護士は、依頼者と支払うことができる範囲を協議しておき、担当裁判官と事前に面談して、その範囲で許可が得られるよう交渉しています。
4、保釈金の相場
保釈保証金の相場は一般的な事件では150万円から300万円程度といわれています。
しかし、前にも述べたように、保釈保証金の額は、犯罪の性質や、その人の資産状態等によって大きく差が出てきます。ここで、いわゆる著名事件の保釈保証金について紹介します。(保釈保証金の額は、必ずしも公表されるわけではないので、過去の新聞記事等をもとに作成しています。従いまして、以下の表は参考程度に受け止めて頂ければと思います。)。
保釈保証金の額 | 公訴事実 | |
浅田満(食肉卸大手ハンナン元会長) | 20億円 | 牛肉偽装事件で詐欺や補助金適正化法違反 |
田中角栄 | 2億円 | ロッキード事件 |
堀江貴文 | 3億円(第一審判決後、2億円の追加納付) | ライブドア事件 |
小室哲哉 | 3000万円 | 自身の楽曲の著作権についての詐欺事件 |
野村沙知代 | 5000万円 | 脱税 |
清原和博(元プロ野球選手) | 500万円 | 覚せい剤取締法違反 |
清原氏の保釈保証金が500万円ときいて驚いた方もいらっしゃったかもしれません。確かに、一般的な相場よりは高額ですが、著名な事件と比較するとそこまで高額でないことが分かります。
配信: LEGAL MALL