既存のプログラムと学校独自の工夫の融合

既存のプログラムと学校独自の工夫の融合

「りゅうこう」と「はやり」

防災教育には流行があります。「りゅうこう」と読めば反対語は「不易」、つまり変わらないものです。「はやり」と読めば「廃り」が対義語です。一時は流行っているけどすぐに忘れられてしまうものですね。教育にはこういった「不易」と「廃り」があります。あの時みんなとても関心を持っていたけど、もうだれも見向きもしなくなってしまった教育活動も少なくありません。一方で、アナログの時代からICT、GIGAスクール(※1)の時代になっても変わらない本質的な教育もあります。
防災教育にも流行があります。何年も実践を積み上げてきた学校は、地域や専門機関とつながりながら、何時間もかけて総合的に学ぶ防災学習の単元を確立していますが、初めてとりくむ学校は既存のプログラムを活用する、それも1~2時間で完結するものを実施してみることから始めるようです。

※1 GIGAスクール Global and Innovation Gateway for All 児童生徒向けの1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する事業。文部科学省が進めている。課題は、ネット環境の整備や端末の保管・メンテナンス・ソフトの充実などの施設・設備面と、教育内容の充実。ただタブレットで調べてコピペして発表するだけではなく、いかに対話的で深い学びにつなげるか、全国で実践が進められている。

既存のゲーミングプログラムと発展型の創造

それでも人気のプログラムには「防災教育力」があります。今人気があるのは「クロスロード」や「HUG」といった思考を深める課題解決型のプログラムです。最初の一歩はこれらのゲーミングプログラムを行ってみることですが、何度か実施していく中で、次のステップへと進むとりくみも生まれています。
「クロスロード」は災害時に直面する二者択一の場面でどちらをとるかを考え、参加者の選択と考えを共有するものです。この判断を迫る二者択一の設問を学習者が考えて作るとりくみも生まれています。地域で発生する実際の災害の様相を学び、困りごとを想像するのです。
「HUG」は避難所運営ゲームです(Hinanzyo Unei Game)。優しく抱きしめる(英語でhug)とも重なります。静岡県が開発したものですが、ゲーム中に与えられる情報が地域の実情に合っていない場合もあります。そこで、自分たちの地域独自のHUGを開発する動きもあります。高校生が行政、自治会と連携して実際の情報を使ったHUGを作成している事例もあります。また、紙上のゲームではなく、実際に体育館などを使ってリアル避難所運営ゲームを体験する実践もあります。
マイ・タイムラインも最近人気が出てきました。マイ・タイムラインは住民一人ひとりの固有の防災行動計画を指しています。大雨によって洪水などのリスクが迫る中、自分自身がとらなければならない防災行動を時系列に整理するものです。水害は地域によってその様相が変わります。洪水、土石流、がけ崩れ、地滑りなど、地域の実情に合わせて様々なバージョンが開発されています。

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