災害関連死とは?生き残った後にも油断せず、健康リスクに注意しよう

災害関連死とは?生き残った後にも油断せず、健康リスクに注意しよう

避難生活ではエコノミークラス症候群に注意を

ご自宅などで災害関連死に至ってしまった人が多く見られた熊本地震ですが、阪神淡路大震災などの過去の災害と比較すると、避難者数に対する災害関連死の割合は、それほど高くはない傾向でした。これは、これまでの災害を踏まえて、早い段階での医療救護活動が行われたり、エコノミークラス症候群の予防などが広まったおかげだと見られています。
エコノミークラス症候群を減らすことが、災害関連死を減らすことにも繋がるのです。
エコノミークラス症候群は、食事や水分を十分に取らない状態で、車などの狭い座席に長時間同じ姿勢のまま座っているなどして、足を動かさないことで血行不良となり、血液が固まることで発症します。さらに、その血栓(血のかたまり)が血管の中を流れて、肺に詰まって肺塞栓症などを誘発します。軽度の場合には、足や膝が腫れたり、ふくらはぎや太ももに激しい痛みを感じます。また、胸が痛い、呼吸が苦しいなどの症状を起こします。重度になると心臓発作のような症状が出るなどして、命を落とすことになります。こうした病気が、エコノミークラス症候群です。

阪神淡路大震災では、エコノミークラス症候群を発症し、亡くなった方が多数いたとみられています。
その背景には、避難所での高齢者のトイレ問題が潜んでいました。
阪神淡路大震災の際の避難所では、トイレの数が不足しており、しかも仮設トイレは居住スペースから遠くに設置されるケースが多く、このためにトイレを頻繁に利用するご高齢の方はトイレに行く回数を減らすために水分を摂ることを控えてしまう傾向にありました。また、車中泊避難や、避難所でも十分なスペースがとれずに窮屈な姿勢で長時間過ごすこともエコノミークラス症候群を引き起こす大きな要因となります。
エコノミークラス症候群で一度できた血栓は、消えにくいことも特徴です。2004年に発生した新潟県中越地震では、発災から2年後の2006年に検査を実施した際にも、検査を受けた人のうちの約4.7%に血栓が見られました。発災の翌年、2005年に血栓が見つかった人の4人に一人は、血栓が残り続けていたということになります。

エコノミークラス症候群を予防するには

被災後は、後片付けなどに追われて、喉の渇きを忘れがちです。また、避難所などではトイレの回数を少なくしようと、水分を摂ることを控えようとしてしまうかも知れません。しかし、水分を取るのを控えると血液が濃縮して血栓ができやすくなります。エコノミークラス症候群の予防のためには、水分を摂ることが大切です。ただし、アルコールは逆に脱水症状を引き起こすことにつながるので、飲酒は水分補給にはなりません。できるだけこまめに水を飲むなどして、水分補給するようにしましょう。

在宅避難などを考えている方は簡易トイレなどの備えを十分にしておくことで、トイレの心配を軽減できます。もちろん、自らの備えを避難所などに持参しても良いでしょう。
また、なるべく手足を伸ばして生活したり、軽い体操やストレッチ運動などを行なって体を動かすこともエコノミークラス症候群を予防することにつながります。4~5時間おきに意識して体を動かすようにしましょう。歩くだけでも効果的です。
ふくらはぎを軽く揉んだり、かかとの上げ下ろし運動をすることや、眠る時には足を上げることも、予防につながります。
ベルトをきつく締めないなど、ゆったりとした服装で過ごすことも、エコノミークラス症候群の予防の一つです。

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