コロナ禍における企業対応に関する7つのことを解説

コロナ禍における企業対応に関する7つのことを解説

5、労働者や顧客に感染者が出たときの企業としての対応

労働者に新型コロナウイルス感染症の陽性者等が発生したときの対応については、厚生労働省が職場の対応ルール(例)を示しています。

以下に、概要をお示ししました。

このようなルールを定めて、社内に周知徹底してください。

顧客に感染者が出た場合も、このルールをもとに、保健所の指示に従って対応してください。

なお、労働者・顧客いずれの場合でも、健康情報は、必要最小限の関係者限りの開示とすべきであり、保健所等の指示に従い、厳格に扱ってください。

家庭の中で、軽はずみに話題にするなど、もってのほかです。

情報が一気に拡散し、当該労働者や顧客に多大な迷惑がかかるだけではありません。

会社としての信用が、一気に失墜すると肝に銘じてください。

外食店については、一般社団法人日本フードサービス協会が「外食店における新型コロナウイルス感染者発生時の対応に関するガイドライン」を公表しています。

業務継続可否についても、丁寧に解説されています。

人事総務担当者としては、これも、ぜひ目を通しておいてください。

(1)厚生労働省の職場の対応ルール(案)の概要

①従業員から社内担当者への報告ルール

PCR検査実施が決まった時点で、従業員から所属長に報告、所属長は人事担当部門等の対策所管部に報告。

結果判明時には、陽性・陰性を問わず、報告する。

健康情報の取扱いは、必要最小限の関係者限りとする。

②従業員が陽性と判明したときの対応

保健所の指示に従い、濃厚接触者等の自宅待機を行うこと。

保健所の疫学的調査に備えて、事業場ごとに保健所との連絡担当者を定め、陽性者等の勤務状況や在籍する部署の座席表、フロアの見取り図を準備する。

③職場の消毒等

保健所の指示に従う。

特段の指示がない場合には、次の通り対応する。

(消毒の場所)

陽性者等が接触したと考えられる場所:机・椅子・使用機器、キャビネット、ドアノブ、照明スイッチ、床面や壁等

会社の共用スペース:食堂、ロッカールーム、トイレ等

(消毒薬、保護具、消毒後の手指の衛生等のルールの例も示されています。)

(2)一般社団法人日本フードサービス協会の患者発生時ガイドラインより(事業継続の部分)

一般的な衛生管理が実施されていれば、感染者が出たからといって業務停止や食品廃棄等の対応をとる必要はありません。

濃厚接触者の待機等で人員確保が困難になったり、消毒作業等で業務継続が困難な場合は休業が必要となります(店舗の休業を14日間とすることは、合理的な根拠がありません)。

お客様や他の労働者等に2次感染の可能性がある場合は、保健所の助言を踏まえて、何らかの方法で注意を喚起する必要もあります。

農林水産省で、感染者発生時の対応や事業継続についてガイドラインが定められていますので、これをベースに考えてください。

6、休業、休暇について、気をつけるべきこと

会社の事業そのものをストップするか、店舗を閉めるか、どのような場合に労働者を休ませるか、その場合の給料の補償をどうするか、様々な問題が出てきます。

新型コロナ特措法や助成金・補助金等については、リーガルモールの別記事で詳しく解説しています。

本項の末尾に掲載しています。

(1)店舗等休業の判断基準

①特別措置法や地方自治体からの要請・依頼の正確な把握

緊急事態宣言を受けて、各都道府県で、施設の使用停止及び催物の開催の停止要請が出されています。

自社の施設が該当するか把握してください。

新型コロナウイルス感染拡大防止のための東京都における緊急事態措置等

②結局は経営判断

ただし、①の要請・依頼に強制力はありません。

営業の継続可否は、事業者の判断に委ねられています。

要請・依頼の対象外の施設は、地域や顧客層、収益見込み等を考慮しての総合判断となるでしょう。

労働者が感染したり、来店客を感染させたりしたら、致命的な打撃になりかねません。

これも踏まえて、判断してください。

【参考】施設の使用制限の要請等について

新型コロナ特措法では、以下の通り、ステップを踏んで協力要請、制限要請、指示・公表と進むこととされていますが、応じなくても、罰則はありません。

そのため、罰則を設けるべきという検討が行われています。

なお、パチンコ店に対して、第3段階の施設名の公表まで行われている例があります。

「施設名が公表されたら、営業しているとわかるので、逆に客が集まるのではないか。」ともいわれていました。

しかし、地方公共団体の厳しい指導や地域住民等の厳しい批判を浴び、殆んど例外なく、休業に追い込まれているようです。

ⅰ)第1段階:法第24条第9項による協力の要請

ⅱ)第2段階:正当な理由がないにもかかわらず、①の要請に応じないとき

法第45条(感染を防止するための協力要請等)第2項に基づく、施設の使用の制限、若しくは停止又は催物の開催の制限要請

ⅲ)第3段階:正当な理由がないのに、②の要請に応じないとき

法第45条第3項に基づく指示を行い、これらの要請及び指示の公表を行う。

(新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(新型コロナウイルス感染症対策本部)三(3)3)施設の使用制限等より)

(2)労働者に休業するように要請できるか

①労働者への休業の要請には、休業手当補償義務

労働者を休業させる場合、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払う必要があります(労働基準法第26条)。

労働者の最低生活保障のための罰則つきの定めです(罰則:30万円以下の罰金。労働基準法第120条)。

補償義務を免れることができるのは、「不可抗力による場合だけ」と考えてください。

「不可抗力」というには、「事業の外部より発生した」だけでなく、「経営者として最大の注意を尽くしても、避けられなかった」という場合に限られます。

例えば、在宅勤務で対応可能かどうかも十分検討せずに、労働者に休業を命じた場合は、不可抗力とは言えず、休業手当の支払が必要となりえます(厚生労働省の新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)4-問1)。

前述のテレワークについての真摯な検討が、この意味からも必須です。

注意しておくべきは、休業が会社の故意・過失による場合には、賃金全額の支払義務が生じることです(民法第536条第2項)。

安易な休業は、会社にとって、大きなリスクになります。

会社だけで判断せず、人事労務の専門の弁護士の意見等も確認しながら、慎重に対応してください。

②労働者に有休取得を強いることはできない

有休は、労働者の権利であり、原則として、労働者の請求する時季に与えなければなりません。

会社が、一方的に取得を命ずることはできません。

(厚生労働省の新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)4-問9)

③予防的な休業の要請

会社が、感染症予防のために労働者に休むように求めたら、休業手当の支給が必要です。

労働者自身が、体調不良や感染予防のために休みたいのであれば、休業手当の支給は必要ではありません。

有休の取得を求めるのが現実的でしょう。

④労働者の感染

労働者が感染して休業する場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」ではなく、休業手当の支払いは不要です。

要件を満たしていれば、健康保険から傷病手当金が支給されます。

⑤学校の臨時休業の対応について

学校の臨時休業のため、労働者が子供の世話のため休みたい、と希望されることも増えています。

通常の有休と別に、特別休暇等も検討してください。

後述の助成金の対象になります。

(3)公的な支援(雇用調整助成金等)

助成金は、日々内容が更新されています。

本稿執筆時(5月18日)現在の主なものをご紹介します。

労働者の正規・非正規を問わず、助成の対象です。

これらの詳細は、本項末尾の記事を参照ください。

①雇用調整助成金

新型コロナウイルス感染症により影響を受ける会社が、労働者の雇用維持のため、一時的に労働者の休業、教育訓練又は出向等を行えば、休業手当、賃金等の相当部分が助成されます。

要件次第では、全額助成されることもあります。

これらも、順次助成率の引き上げや要件緩和等が進められています。

②新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金

小学校等が休校になり、親御さんがお子さんの世話のために休む場合に、会社が通常の有休とは別に、特別の有給休暇を付与すれば、休暇中の賃金全額が助成されます(上限額あり)。

③申請手続

申請手続は大変複雑です。

社会保険労務士・弁護士等の専門士業者やコンサルタントのサポートを検討してみてください。

なお、中小企業では、顧問税理士への相談を考える方も多いと思います。

しかし、これらの助成金は、人事労務に関わる問題であり、税理士は提出書類の作成代行等の取扱いはできません。

【厚生労働省】

①「雇用調整助成金」>新型コロナウイルス感染症について

②新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金・支援金の延長について

(4)その他各種の公的支援

新型コロナウイルスに関しては、矢継ぎ早に、様々な公的支援策が打ち出されています。

内閣官房では、これらを一覧化し、各種支援策へのリンクも設けています。

東京都でも、独自の検索サイトを設けています。

支援策の代表的なものをご紹介します。

会社の人事総務担当者としても、このような情報は、ぜひ社内で周知してください。

労働者の方向けのみならず、会社として存続するためのサポートも様々用意されています。

①給付

「特別定額給付金」:一律1人当たり10万円

「子育て世代への臨時特別給付金」:児童1人あたり1万円(申請手続不要)

「住居確保給付金」:休業による収入減で、住居を失う恐れがある方に、原則3か月、最長9か月の家賃相当額を支援

②貸付

「緊急小口資金・綜合支援資金」:収入減で、生活が苦しい方に、最大80万円(2人以上世帯)、最大65万円(単身世帯)を貸付。

③保険料や公共料金等の猶予・減免

国民健康保険料、介護保険料、国民年金保険料等の減免。

国税、地方税、各種公共料金等の支払猶予。

④中小・小規模事業者向けの支援策

以上の①から③は、個人向けの支援策ですが、次の内閣官房の一覧表の通り、中小・小規模事業者向けの支援策も様々用意されています。

「持続化給付金」:月の売上が50%以上減少した場合に、事業継続資金として、最大200万円が給付されます。

「実質無利子・無担保融資」:日本政策金融公庫等を通じて、3年間実質無利子、最長5年まで元本据置きの融資が受けられます。

地銀・信金・信組を通じた融資も、利用可能になっています。

「税・社会保険料等の納付猶予・減免」:国税・社会保険料の納付猶予や固定資産税・都市計画税の減免が受けられます。

【資料1】内閣官房:新型コロナウイルス感染症に伴う各種支援のご案内

【資料2】東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ

検索の仕方が工夫されており、ご自分に合った制度を探すことが容易にできます。

また、東京都独自の支援策もまとめられています。

(例えば、都の休業要請等に協力する中小事業者への東京都感染拡大防止協力金等です。)

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