遺産分割調停の流れとは~調停で勝つために必要な3つのこと

遺産分割調停の流れとは~調停で勝つために必要な3つのこと

遺産分割調停をすることになったら、まずはその流れを掴んでおきましょう。

流れを掴むことで、事前に準備・対策をすることができ、不安も軽減されることで、調停をスムーズに進められることが期待できます。

そこで、この記事では、

  • 遺産分割調停の流れ

について具体的に説明していきます。ご参考になれば幸いです。

遺産分割の手続きについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

1、遺産分割調停の流れを見る前に〜遺産分割調停前にすべきこと

遺産分割調停の流れを見る前に、前提として遺産分割調停前に確認しておくべきことを説明します。

まず、「相続」とは、相続人が被相続人に属する一切の権利義務(一身専属的な権利義務を除く)を承継する仕組みのことをいいます。

そこで、ご家族が亡くなられた場合には、「誰が」相続するのかということと、「何を」相続するのかということが問題となり、必要に応じて調査を行います

(1)相続人・相続財産の調査

①相続人の調査

まず、相続人の調査とは、亡くなられた方にどのような相続人がいるかを調査することを言います。

相続人は自分たちが知っている家族だけであると思っていると、実は被相続人が過去に結婚しており子どもがいた場合や養子縁組をしていた場合、そして結婚はせずに認知だけしている子どもがいる場合など、自分たちの知らない相続人がいることが判明するケースもあります。

相続人を調査・確定するためには、亡くなられた方(被相続人)が生まれてから亡くなるまでの戸籍を取得し、確認する必要があります。

面倒な作業ではありますが、相続人の一部だけで遺産分割を行っても無効となってしまいますので、まずは相続人を正確に把握する必要があります。

②相続財産の調査

相続人の調査と並行して、相続財産を調査する必要があります。

被相続人が死亡当時保有していたすべての財産を調査する必要があります。

相続財産に関する情報は、遺産分割協議などで誰が何を承継するか決まった後に、相続人が相続財産を承継するために銀行や証券会社等で手続きを行う際にも必要です。

相続財産として考えられるのは、不動産、現金、銀行の預貯金、株式、自動車や高価な物品などの積極財産だけでなく、借金や保証債務、税金などの消極財産も含まれます。

不動産の場合には、まずは固定資産税納税通知書などを探します。納税通知書も不動産も見つからないけれど、どこかには不動産があるはずだという場合には、不動産があると思われる市区町村に当たりをつけて、当該市区町村で名寄帳を取り寄せます。

銀行預金であれば、キャッシュカードや銀行からの手紙等から取引銀行を特定し、当該銀行に預金の有無や残高について照会することができます。

(2)遺言の有無を確認

被相続人が「遺言」を残しているかどうかを調査しましょう。

「遺言」とは、被相続人が生前に自分の死後に財産の取り扱いについて意思を示した書面のことをいいます。

有効な遺言が残されている場合には、原則として被相続人の財産は遺言に従って遺産分割を進めることになりますので、相続が開始した場合には、速やかに遺言の有無を確認しておきましょう。

法務局以外で自筆証書遺言が見つかった場合には、開封をせずに、家庭裁判所で検認の手続きを受ける必要がありますので、注意しましょう。

(3)遺産分割協議

相続人と相続財産の確認ができ、遺言書がないという場合には、遺産分割協議を行います。

遺言書がある場合には、原則として遺言書のとおりに遺産分割を行いますが、相続人や受贈者等全員が同意した場合には、遺言書の内容と異なる遺産分割協議を行うことができます。

遺産分割協議とは、相続人全員が、誰がどの財産をどのように承継するかを話し合うものです。遺産分割協議では、相続人らの希望に沿って、話合いで分割を決定していくことになります。

ここで話し合いが決裂するなど、スムーズに遺産分割がまとまらない場合、いよいよ遺産分割調停へ進むことになります。

2、遺産分割調停の流れ

前述の遺産分割協議は任意での話し合いですので、内容に反対する相続人がいる場合には財産の帰属を決めることができません。話し合いで決着がつかない場合には、「遺産分割調停」を申し立てます。

「遺産分割調停」は、調停委員会(調停委員と裁判官)を介して話し合いを行う手続きです。この調停委員は地元の有識者から選任されており、弁護士が就任する場合もあります。

それぞれの主張は、調停委員が聞き相手方に伝えるため、話し合いをする際に対立している相続人と直接顔を合わせることはありません。

調停の最初と最後、そして途中の重要な部分では顔を合わせることがありますが、一堂に会して話合いが行われることはないため、協議段階でまとまらなかった話合いをよりスムーズに進められるように設計されています。

(1)遺産分割調停の申立て

遺産分割調停申立書と関連資料を作成して、管轄の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。

①申立人

申立人になれるのは、

  • 共同相続人
  • 包括受遺者
  • 相続分譲受人

です。

包括受遺者とは、例えば遺言で割合を示して相続財産を与えられた人のことです。

なお、遺産分割の手続では共同相続人や包括受遺者、相続分譲受人全員が当事者となっていなければ無効となってしまいます。そこで申立人以外の相続人等については全員調停の相手方として申し立てなければなりません。

相続分を譲渡した共同相続人は遺産に対する持分を有さないため、原則として調停に参加する必要はありません。

②申立先

申立先は、相手方のうち1人の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者が合意で定めた家庭裁判所に対して申立書を提出することができます。

なお、遺産分割の審判を申し立てる場合には、被相続人の最後の住所地(相続開始地)を管轄する家庭裁判所か当事者が合意で定めた家庭裁判所に対して提出する必要がありますので注意が必要です。

③準備書類

それでは、遺産分割調停を申し立てる場合に必要となる書類はどのようなものでしょうか。

まずは「遺産分割申立書」です。

遺産分割調停の申立書についての詳細な説明はこちらの記事を確認してください。

また、申立書のほかにも様々な添付書類も必要です。この添付書類については、相続人が被相続人とどのような関係か(子か親かなど)によって異なります。また、申立てを行う裁判所の運用によっても異なります。そのため、具体的な添付書類の内容については、裁判所のHPをご確認いただくとともに、実際に申立てを行う家庭裁判所にお問い合わせください。

(2)遺産分割調停期日

遺産分割調停の申立書に問題がなければ、これが相手方の相続人らに送達されます。

遺産分割調停を実際に行う「調停期日」については、初回は裁判所側が指定して決定します。

その期日に両当事者は裁判所に出頭して、まずは2名の調停委員に対してあなたの主張を伝えていくことになります。

当事者の言い分については申立人と相手方が交互に調停室に入り調停委員に伝えます。一方が調停委員と話をしている間、他方当事者は控室で待機しており、交替で調停委員と話をします。

そのため、手続の最中は相手方と顔を合わせることなく、調停委員から相手方の主張や返答を伝えられることになります。

ただし、調停の初回と最終回、途中で中間合意をする際は、原則として、当事者全員で手続内容を確認するために一堂に会します。対立が深いなど直接顔を会わせることができないようであれば、場合によっては対応してくれることがありますので、事前や当日の最初に裁判所や調停委員に伝えましょう。

また、期日当日は、調停室で顔を会わせることを避けても、お互い同じ裁判所の中にいるため、手続の前後でばったり相手方と鉢合わせするという可能性はあります。顔を会わせると危険があるという場合には、事前に裁判所に相談し、対応してくれるようお願いするとよいでしょう。

(3)遺産分割調停の成立

調停は、数回の期日を重ねて成否を探っていくことになります。

期日を重ねてお互いが納得できる内容で調停が調うと、「調停調書」が作成されます。

この調停調書は法的には「債務名義」と呼ばれる書面ですので、この内容に従わない当事者がいても強制的に権利を実現することができる強力な効果を持つ書面となります。

調停が成立してしまうと、調停調書通りの遺産分割を行う必要がありますので、内容に納得できない場合には、成立前にその旨をきちんと調停委員に伝え、納得のいかない調停は成立させないようにしましょう。

調停でも話合いがまとまらず不調に終わった場合には、調停を取り下げない限り自動的に審判手続きに移行します。

遺産分割審判とは、相続人間で遺産分割が決められなかった場合に家庭裁判所が本案について行う終局的な判断のことをいいます。

家庭裁判所の審判が確定すれば、その内容にしたがって不動産登記名義の変更や預金の払い戻しなどの相続手続を行うことができます。

この「審判」についての詳しい解説についてはこちらの記事を確認してください。

関連記事: