相続放棄は、相続人全員がしてもいいのか?
全員が相続放棄したら遺産と借金はどうなるのだろう?
この記事をお読みの方の中にはそのようにお考えでネット検索してこのページにいらっしゃった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
亡くなった人が借金を残している場合には、相続人は相続放棄により借金の支払い義務を免れます。借金を払う立場の状況はなくなります。
相続放棄をすればその相続とは無縁になり気が楽になると思ってしまいがちですが、相続放棄する際には、注意しておかなければならない理由がいくつかあります。
ここでは、相続放棄の手続きを進める際に注意しておきたい点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。
この記事が相続放棄でお悩みの方のご参考になれば幸いです。
相続放棄について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
1、相続放棄を相続人の一部のみが行うのはズルイ?
相続放棄は、その名の通り、相続を放棄するということです。
被相続人に借金がある場合、プラスの財産より借金の方が多いような場合、借金の義務を負わないために相続自体を放棄するという使い方が一般です。
とすると、相続放棄を一部の相続人だけが行えば、放棄をしなかった相続人は、その分の借金をも負ってしまいます。
では、相続放棄は一部の相続人だけがすることはできないのでしょうか?
(1)限定承認は一部の相続人だけではできない
相続には3つの方法(単純承認、限定承認、相続放棄)があり、各自希望の方法を選べるようになっています。
このうち、特別な手続きが必要になるのは、限定承認と相続放棄です。限定承認については、相続人全員が揃って家庭裁判所に申述の手続きを行わなければなりません。相続人の中に1人でも単純承認を選択する人がいれば、限定承認はできないことになっています。
(2)相続放棄は1人でもできる
一方、相続放棄については、相続人全員で手続きする必要はなく、個々の相続人での手続きが可能です。
他の相続人が単純承認したら一緒に単純承認しなければならないということはなく、相続放棄するかどうかは自分の意思だけで選べます。
つまり、1つの相続について、単純承認する相続人と相続放棄する相続人の両方がいてもかまわないということです。
となると、借金が多い相続において、もし他の相続人が相続放棄をした場合、しなかった相続人はそのまま借金を丸かぶりする、ということにもなりかねないということです。
2、全員が相続放棄してもいい?
では、全員で相続放棄をしてしまうことはどうでしょうか?
誰も債務の責任をとらないとすることは道義に反するような気持ちになり、できないのではないか、という疑問も浮かぶかもしれません。
しかし、相続放棄をするかどうかは、他の相続人に関係なく、各相続人が個別に決められます。
たとえば、被相続人の妻、長男、次男の3人が相続人となっているケースで、妻と次男が相続放棄をした場合、長男は相続放棄ができなくなるわけではなく、長男も相続放棄が可能です。
全員相続放棄により相続人が1人もいなくなってしまっても、法律上の問題はないということです。
配信: LEGAL MALL