3、相続放棄したからといって借金や財産が消えるわけではない
相続放棄により相続人がいなくなった場合でも、被相続人の借金や財産が消えてなくなるわけではありません。
たとえば、被相続人に多少なりとも財産があれば、債権者は手続きをとることにより、その財産から借金を回収することができます。
最終的に財産が余れば、その財産は国に帰属します。
借金については、連帯保証人がいれば、連帯保証人が負担せざるを得ないこともあります。
このように、相続人全員が相続放棄をした場合には、借金や財産の行き先が相続人以外のところになります。
4、第一順位の相続人全員が相続放棄したら別の人が相続人に!親族から恨まれないためにやるべきこととは?
「3」で確認したように、全員が相続放棄をしたとしても、債権者への責任については深く考えなくて良いようです。
しかし、相続放棄は、もう1つ問題があるのです。
相続放棄をすると、別の方が相続人になる、ということです。あなたが相続放棄をしたことにより別の方が相続人になり借金を負ってしまうことになるのですから、このような相続では迷惑がかかることは必至です。その結果、恨まれてしまうかもしれません。
どういうことか、みて行きましょう。
(1)相続人の順位
人が亡くなったとき、誰が相続人になるかについては民法で定められています。
民法上の相続人は「法定相続人」と呼ばれ、「配偶者相続人」と「血族相続人」の2種類に分かれます。
配偶者相続人とは被相続人の配偶者のことです。
配偶者相続人はいたとしても1人だけで、どんな場合でも必ず相続人になります。
一方、血族相続人には次のような優先順位が定められており、第2順位以降の人は先順位の人がいない場合のみ相続人になることができます。血族相続人は複数いることがあります。
- 第1順位 子(亡くなっていれば孫など)
- 第2順位 直系尊属(父母や祖父母のうち最も親等が近い人)
- 第3順位 兄弟姉妹(亡くなっていれば甥・姪)
(2)同順位の人全員が相続放棄をすれば相続資格が後順位に移る
民法には、「相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」旨の規定があります(939条)。
相続放棄をした人は相続人ではなかったことになりますから、同順位の人全員が相続放棄をすれば、相続資格が後順位の人に移ります。
たとえば、第1順位の子が3人いて3人とも相続放棄した場合、第1順位の相続人はいなかったことになります。
この場合、第2順位の父母が生きていれば、父母が相続人になります。
もし第2順位の父母や祖父母全員が亡くなっている場合、もしくは父母や祖父母がいるけれど全員が相続放棄をした場合には、第3順位の兄弟姉妹に相続資格が移ります。
(3)相続放棄により新たに相続人となる人には連絡が必要
相続放棄をするのは、被相続人が借金を残しているケースが多いと思います。
相続放棄をすれば自分は相続人でなくなり借金の負担を免れますが、最初は相続人でなかった後順位の人が相続人になり、借金の負担を引き継いでしまうことがあります。
このような場合には、相続放棄をする旨を後順位の人にも伝え、その人にも相続放棄をしてもらわなければ、トラブルになってしまいます。
被相続人に借金がある場合の相続放棄は、他の親族への影響を考慮し、必要な連絡を怠らないようにしましょう。
配信: LEGAL MALL