相続放棄は相続人全員がしてもいい?相続放棄の注意点7つ

相続放棄は相続人全員がしてもいい?相続放棄の注意点7つ

5、親族全員が相続放棄したら財産と借金は誰のものになるか?

相続人となり得る親族全員が相続放棄したら、財産と借金は誰のものになるのでしょうか?

(1)財産や借金の行き先が決まるまで相続財産管理人が管理

配偶者及び第3順位までの血族相続人全員が相続放棄をした場合、相続人が1人もいないことになります。

ただし、手続きをとるまでは、相続人不存在が確定していることにはなりません。

民法上は「相続人があることが明らかでない」財産として、「相続財産法人」が成立するものとされています(951条)。

相続財産法人が成立する場合には、相続財産法人を管理するための「相続財産管理人」が家庭裁判所によって選任されます。

相続人全員が相続放棄した相続財産は、行き先が決まるまで、相続財産管理人によって管理されることになります。

(2)借金については相続財産から債権者に弁済

相続財産管理人は、被相続人にお金を貸していた債権者や被相続人から遺言で遺贈を受けた受遺者に対し、定められた期間内に申し出をするよう公告を行います。

そして、申し出した債権者や受遺者には、相続財産から弁済(支払い)を行います。

ただし、受遺者に対しては、債権者に弁済した後でなければ弁済できません。

なお、資産よりも負債の方が多い債務超過のケースでは、債権者に対しては債権額に応じて按分配当することになります。

(3)財産は特別縁故者にわたることも

相続財産管理人は、相続人捜索の公告も行います。

そして、公告期間満了までに相続人が現れなければ、相続人不存在が確定します。

相続人不存在が確定した場合、被相続人の特別縁故者(長期間同居していた人や療養看護に努めた人など)に該当する人がいれば、財産分与の申し立てができます。

裁判所が特別縁故者と認め、財産分与の審判が確定したときには、相続財産の一部や全部が特別縁故者に引き継がれることになります。

最終的に残った相続財産があれば国のものになるため、相続財産管理人が国庫へ帰属させる手続きを行います。

(4)被相続人の借金は連帯保証人が支払い義務を負う

被相続人にお金を貸していた債権者は、相続財産から弁済を受けられなかった場合、連帯保証人に支払いを請求する可能性があります。

親族が連帯保証人になっている場合、相続放棄により主債務の支払い義務は免れますが、連帯保証債務を逃れることはできません。

たとえば、子が亡くなった親の借金の連帯保証人になっていた場合、子は相続放棄をしてもしなくても借金の支払い義務を負うことになります。

借金の支払いができない場合には、債務整理など別の方法を考える必要があります。

6、親族全員が相続放棄してもまだ終わりじゃない!管理責任とは?

「相続放棄したら終わり。何の責任もない」

というわけではありません。

管理責任というものがあります。この項目では管理責任について解説していきます。

(1)次の相続人に引き継ぐまで相続財産の管理責任がある

民法では、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」(940条)と定められています。

相続放棄をすれば、その相続とは関係がなくなりますから、財産を管理する必要もないと思ってしまいがちですが、そうではありません。

相続財産を現実に管理する人がいなくなれば困りますから、次の相続人に引き継ぐまでは、相続放棄をした人に相続財産を管理する責任があるとされています。

(2)全員相続放棄なら相続財産管理人選任まで管理責任を免れない

配偶者も第3順位までの相続人も全員が相続放棄した場合には、次に相続人になる人がいません。

そのため、相続放棄した人がずっと相続財産を管理し続けなければならないことになります。

たとえば、相続財産の中に空き家がある場合、相続放棄をしても他に相続人がいなければ、空き家を自分の家と同じように管理し続けなければならず、負担になることがあります。

相続財産の管理責任を逃れるためには、相続財産管理人の選任が必要です。

相続財産管理人が選任されれば、相続財産の管理を相続財産管理人に引き継ぐことができます。

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