7、相続財産管理人を決める方法とその役割
最後に、相続財産管理人を決める方法とその役割について説明していきます。
(1)相続財産管理人の選任には申立てが必要
上述のとおり、相続財産管理人は、相続放棄により相続人がいなくなった相続財産を管理するために重要な役割を果たします。
しかし、相続人が1人もいない場合でも、自動的に相続財産管理人が選任されるわけではありません。
相続財産管理人を選任してもらうには、利害関係人または検察官が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続財産管理人選任の申立て」をする必要があります。
利害関係人とは、債権者や債務者、特別縁故者などになります。
(2)相続財産管理人になれる人
相続財産管理人選任申立ての際に、相続財産管理人の候補者を指定して申立てすることもできますが、必ず候補者が選任されるわけではありません。
多くの場合、裁判所が保有している候補者リストにもとづき、弁護士が相続財産管理人に選任されます。
(3)相続財産管理人選任申立ての必要書類
相続財産管理人選任申立てには、次のような書類が必要になります。
①申立書
裁判所のホームページからダウンロードできます。記入例含めて詳しくはそちらをご参照下さい。
②戸籍謄本
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本のほか、相続人が1人もいないことがわかる範囲の戸籍謄本が必要です。
なお、相続放棄があった場合には裁判所内でわかりますから、相続放棄申述受理証明書等の提出は必要ありません。
③被相続人の住民票除票または戸籍附票
被相続人の最後の住所地を証明するために必要です。
④財産関係の資料
相続財産の内容がわかる資料として、不動産の登記事項証明書や預貯金の残高証明書が必要です。
⑤利害関係を証明する資料
債権者が申し立てる場合には、金銭消費貸借契約書のコピーなどを添付します。
⑥相続財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
相続財産管理人の候補者を指定して申立てをする場合には、その人の住民票または戸籍附票を提出します。
(4)相続財産管理人選任申立てにかかる費用
相続財産管理人選任申立てをするときには、申し立て手数料として800円を収入印紙で納めなければならないほか、官報広告料約3,800円、郵便切手(裁判所によって異なるが2,000円程度)が必要になります。
さらに、相続財産管理人の報酬も相続財産から支払われることになりますが、相続財産が少ない場合には報酬を確保できない可能性があるため、予納金として100万円程度を裁判所に払わなければならないケースが多くなっています。
まとめ
相続があったとき、相続人になるはずの人が全員相続放棄をした場合にも、亡くなった人の借金や財産がなくなるわけではありません。
借金や財産の帰属先を決めるためには、相続財産管理人を選任する手続きをとる必要があります。
相続財産管理人選任には費用がかかるため、相続財産が少ない場合には、債権者も敢えて手続きをとらないことがあります。
一方で、相続財産管理人が選任されなければ、相続放棄した相続人にとっては、相続財産の管理責任を逃れられないというデメリットがあります。
相続放棄により相続人がいなくなる場合には、弁護士のアドバイスを受けながら、具体的な対処方法を考えるのがおすすめです。
監修者:萩原 達也弁護士
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