相続について弁護士に相談すべき6つのケースとは

相続について弁護士に相談すべき6つのケースとは

相続について弁護士に相談したいけれど、弁護士に相談する具体的なメリットってどんなものだろう……。

「わが家には弁護士に相続の手続きをお願いするほどの遺産はない」

「相続トラブルはお金持ちの家庭だけの問題だ」

と思う人は少なくないかもしれません。

しかし、実際には、目立った資産のない一般家庭の方がより相続トラブルが発生する確率が高くなっています。

裁判所が公表している「司法統計」によると、毎年、遺産分割を争っている件数のうち約75%は遺産総額5,000万円以内の家庭が占めています。

平成30年の統計では、以下のようになっています。

  • 総数 7,507件
  • 遺産総額1,000万円以下 2,476件(33.0%)
  • 遺産総額5,000万円以下 3,249件(43.3%)

引用元:裁判所|司法統計 平成30年度家事事件編 第52表

このように、遺産分割を争っている全件数のうち76.3%は遺産総額5,000万円以下の家庭が占めているのです。そうすると、むしろ一般家庭の方が相続トラブルに備える必要性が高いということもいえるでしょう。

また、

「うちは家族の仲が良いから相続トラブルとは関係がない」

と思う人も多いですが、油断は禁物です。身近な人間同士である故に平等意識が強く、相続トラブルが発生することは珍しくありません。

ひとたびトラブルが発生すると、感情的な争いがエスカレートし、いつまでたっても相続に決着がつかず、やっとのことで相続問題が終わった際にはわだかまりを残してしまうということもあります。

他方、人間関係上のトラブルが発生しなくても、限られた時間の中で複雑な相続手続きを進めるのは難しいこともあるでしょう。

さらには、

  • 不公平な内容の遺言書があった
  • 亡くなった方に多額の借金があった

などの事情で相続手続きをどのようにすればよいのか、わからなくなるケースも少なくありません。

そこで今回は、

  • 遺産相続を弁護士に依頼すべき場合とは
  • 遺産相続を依頼する弁護士の選び方とは
  • 遺産相続の弁護士費用の相場とは

といった問題について解説していきます。

すでに何らかの相続トラブルでお困りの方にも、今後の相続手続きの準備を進めている方にも、この記事がご参考になれば幸いです。

相続の相談について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

1、相続の手続きを弁護士に依頼すべき6つの場合

まずは、相続の手続きを弁護士に依頼する必要性が高いケースを6つご紹介します。

以下のケースに該当する場合は、弁護士への依頼を検討されることをおすすめします。

(1)遺産分割協議がうまく進まないとき

相続人の間で遺産分割協議がうまく進まないときは、相続を弁護士に依頼すべき典型的な場面といえます。

遺産分割協議がうまくいかない原因としては、相続人同士が感情的に対立している場合の他にも、金銭的に困っている相続人がいる場合や、簡単には分割できない相続財産(マイホームなど)がある場合などが考えられます。

いずれの場合も、弁護士が間に入り、専門的な見地から冷静に対処することで遺産分割協議をスムーズに進めることが期待できます。

(2)納得のいかない遺言があるとき

被相続人が遺した遺言の内容に納得がいかないときも、弁護士に相続を相談・依頼すべき場面です。

法律的な知識が十分ではない被相続人の遺言の場合は、「遺留分」について配慮のない遺言が残っている可能性もあります。

また、特定の相続人に有利な遺言がある場合は、遺言書の有効性を含めて問題になる可能性もあります。

(3)被相続人に多額の借金があるとき

亡くなった家族に多額の借金がある(かもしれない)ときにも、早期の対応が必要です。

相続放棄をするためには、原則として相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に手続きをしなければならないからです。

しかし、家族が亡くなってからは、さまざまなことに翻弄されてしまう方が多いでしょう。

葬儀や遺品の整理、親族への挨拶などを済ませていたらあっというまに3ヶ月が経ってしまい、「それから借金が残っていることに気がついた」ということは、よくあることです。

特に、被相続人と別世帯であった場合には、被相続人の家計状況を把握していなかったり、督促状が被相続人の住居に送られているために借金に気づくのが遅れたということがあります。

弁護士にご相談・ご依頼いただければ、被相続人がなくなってから3か月以内に借金の有無について調査が終わらない場合や、3か月を超えた後に借金の存在に気付いた場合なども適切なアドバイスを行います。

(4)家族・親族が多い場合や行方不明者がいる場合

家族関係が複雑なときには、一般の人には「誰が相続人になるのかわからない」という場合もあるかもしれません。

民法の条文を確認すれば相続順位についての規定もありますが、「直系尊属」、「代襲」と難しい言葉がならんでおり、非常に分かりにくくなっています。

そのようなときには、早めに弁護士に相談しておくことで、相続人を正しく把握し、適切に相続手続きを行えるようになります。

また、相続人と思われる人のなかに連絡の取れない人がいる場合には、早めの対応が必要です。

連絡の取れない相続人がいれば、相続の手続きを進められないからです。

弁護士は、相続人の探索や、相続人が見つからなかった場合の対処方法(不在者財産管理人を置く、失踪宣告)についてもアドバイスをします。

(5)相続人が海外に居住していたとき、相続財産が海外にあるとき

最近では、日本を離れて生活をする人も増えています。

相続人が海外で暮らしている場合でも、相続手続きの中には全員の協力がないと進めることのできないものがあります。

しかし、海外で暮らしている人の場合には、印鑑証明や住民票そのものの取得ができず別の書類を用意しなければならない等国内で完結する相続手続きとは異なる特殊な手続きを行わなければならない場面があります。

また、遺産の中に海外にある財産が含まれるときには、日本と財産のある国のどちらの国の法律で相続手続きをする必要があるかという問題が発生することもあります。

そのため、これらのケースでは、特に相続案件の経験が豊富な弁護士のサポートが必須ともいえます。

(6)生前に相続税の節税対策をしたいとき

相続税の問題は、多くの方が感心を持っていることではないかと思います。

相続税の相談は税理士に、と考えている方が多いと思いますが、実際に相続税の対策をするにあたっては、税金独自の問題だけではなくて、法的な処理が必要になることもありますし、相談する中でその他の問題に気づくということも珍しくありません。

よって、万が一に備えるという意味では、弁護士事務所で相続全般について相談をしておくということも有効でしょう。

また、ベリーベスト法律事務所では、専任の税理士が所属していますので、弁護士にも税理士にもご相談いただけます。

また、実際の案件の中で弁護士と税理士が連携することもできますので、安心してお任せいただけます。

2、遺産相続を弁護士に依頼するメリット

以上のように、遺産相続を弁護士に依頼すべきケースは意外に多くありますが、それでも「家庭内の問題で弁護士に頼むのは大げさだ」とお考えの方も少なくないことでしょう。

そこで、ここでは遺産相続を弁護士に依頼するメリットをご紹介します。

以下のメリットをお読みになって、メリットを享受したいとお思いになれば、弁護士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。

(1)相続手続きを仕切っているあなたへのメリット

相続人が何名かいる場合は、そのうちの誰かがリードしなければ相続手続きは進まないものです。

長男や長女といった年長の方が相続手続きを仕切ることが多いように思いますが、相続の手続きは内容が非常に多くて複雑なため、進め方がわからないまま進めていくのはとても難しいものです。

そんなとき、弁護士に依頼すると以下のようなメリットを受けることができます。

①複雑な手続きをすべて任せることができる

相続手続きを進めていくためには、数多くの煩雑な作業が必要になります。

相続人間に何らトラブルがない場合でも、おおよそ以下のような手続をしなければなりません。

  • 相続人の調査
  • 相続財産の調査
  • 相続人間の話し合い(遺産分割協議)
  • 遺産分割協議書の作成
  • 相続登記や金融機関等での諸手続き

弁護士に依頼すれば、これらの複雑な手続きをすべて任せることができます。

②気付きにくい問題の解決が可能になる

ご自分で相続手続きを進める場合、気を付けていても重要な問題に気付かず、そのためにトラブルを招いてしまうおそれがあります。

例えば、「長男にすべての遺産を相続させる」という遺言書があったとしても、他の相続人には「遺留分」という最低限相続する分が保障されています。

それに気付かないで遺産の相続登記などを済ませてしまうと、他の相続人から遺留分を主張されたときに多額の金銭を支払わなければならないこともあります。

また、被相続人が認知した子どもや前妻との間の子どもがいる場合はこれらの子どもも相続人として遺産分割協議に参加させなければなりません。

気づかないまま、または、気づいていたものの参加させないまま遺産分割協議を終わらせてしまった場合には、遺産分割協議が無効となるなど、後からトラブルが発生する可能性が高いです。

相続手続きの穴をなくしてトラブルの発生を防ぐためには、弁護士のサポートを受けることが大切になります。

③遺産分割後のトラブルを防止する

遺産分割協議がまとまったと思っても、その後に思わぬトラブルが発生することは少なくありません。

よくあるのは、遺産分割協議後に、合意した内容とは異なる主張をする相続人が出てくることです。

このようなトラブルは、相続人全員による遺産分割協議書を正しく作成することで防止することができます。

弁護士に依頼していれば、後々にトラブルが発生する可能性も見越して、トラブルを防止するための適切な手続きをとることが可能になります。

(2)相続での権利侵害を防ぎたい・損害を回復したいあなたへのメリット

他方で、相続手続きを長男や長女に任せていたところ、遺言や遺産分割協議において自分の権利を侵害されたり、侵害されそうになっている方もいらっしゃることでしょう。

そんな方にとっても、弁護士に依頼するメリットは大きいものといえます。

①自分の権利を正確に知ることができる

各相続人にどのような権利があるのかは、民法にすべて定められています。

しかし、複雑で細かいルールがたくさんあるため、具体的な状況において自分が何を主張できるのかは、一般の方には分かりにくいでしょう。

ルールを正しく知らなければ、権利の侵害にすら気付かないおそれがあります。

そんなときは、弁護士に相談することで、自分にどんな権利があり、何を主張できるのかを知ることができ、適切に対処することができます。

②自分で交渉する必要がなくなる

自分の権利を正確に把握できたとしても、その権利を実現するためには正しく主張して、他の相続人と話し合わなければならないこともあります。

ただ、このような権利の主張は言い出しにくいこともあるでしょうし、話し合いには時間も要し、精神的負担が大きいこともあるでしょう。

弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として他の相続人との話し合いを代行してくれます。

自分で交渉する必要がなくなるため、時間的にも精神的にも負担が大幅に軽減されます。

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