山梨で日本のテーブルワインを目指す/47都道府県 SAKE FILE 02

山梨で日本のテーブルワインを目指す/47都道府県 SAKE FILE 02

“つよぽん”の愛称で日本ワインファンから慕われる小林剛士さんの「室伏ワイナリー」。山梨市牧丘町の室伏の地で、誰もが入手しやすい至福のテーブルワインを目指してワインを造っています。

〈YAMANASHI/WINE〉室伏ワイナリー

小林さんは果実味に対して樽の風味が強く出過ぎないように心を砕く。そのため500?の中樽が18樽もある。中樽が豊富なワイナリーは珍しい。揃えられた発酵用のタンクも小規模ワイナリーとしては破格の大きさ

昨年10月、山梨市牧丘町の“室伏”(むろぶし)の地に1軒のワイナリーが誕生。“つよぽん”の愛称で日本ワインファンから慕われる小林剛士さんの室伏ワイナリーです。

小林さんは山梨の勝沼醸造、四恩醸造で実績を積み、2016年、自身の会社「共栄堂」のブランド名でのワインを造りを開始。


今までは、三養醸造で委託醸造してワイン造りを続けていましたが、いよいよ自分自身のワイナリーの完成に漕ぎ着けました。

室伏ワイナリーは室伏という字名に因む

小林さんのワイン造りの根っこにあるのは、農家さんもワイナリーも共に栄えてほしいという思い。同県北杜市の過疎集落、増富に生まれ育った彼にとって田畑が消えることは村が消えてしまうことを意味します。

農家さんとワイナリーの共存は必須。社名に実家が営むよろず屋の屋号、「共栄堂」を使っているのもそのためで、農家さんからの購入ブドウでのワイン造りを大切にしています。

念願のワイナリーを持った小林さん。目指すは食卓に上る日本のテーブルワインです。稀少価値は嫌いだと言い、「バイアスなしに、自分のワイン、日本ワインの本質を見てもらって楽しんでもらえば本物」と言います。

最近の日本の小規模ワイナリーのワインは、極少量生産で入手困難なものが多い中、彼が考える生産量は1アイテムにつき、5000本から1万本です。

1月4日発売の新酒。基本的には冬と春と秋の年3回のリリースを予定

さらに飲み手が何本か買えるようらと通常のアイテムは1000円台という嬉しいお手頃価格。少し熟成させたものでも2000円台前半。どんなに高くとも2500円以内に収まるようにしたいそう。

「企業努力をすれば、日本ワインでも農家さんから適正価格でブドウを買って1000円台でおいしいものができるんです」と小林さんは断言します。

小林順さんと松村欣明さんが新たにワイン造りに参画 

そして、2022年1月4日。待望の室伏ワイナリー初仕込みのワインが登場。

白、赤、橙(オレンジワイン)の3アイテムに加え、地域を限定して販売される2アイテムが勢揃い。

野生酵母で造られたワインたちは、彼曰く、「赤は軽く、白は強く」という味わい。

今まで発売された共栄堂のワインのラベル。小林さんはラベルをアーティストの発表の場と考えており、今年は印章作家の作品がラベルデザインに

みずみずしい果実味が喉をすーっと通る赤、じんわりと口中で飲みごたえを感じさせる白やオレンジワイン。いずれも親しみやすさだけではなく、魅力ある個性を放っています。

価格や生産量、そして味わいの上でも多くの人が入手しやすい上質なテーブルワインを造っていこうとしている小林さん。

農家さんや飲み手、伝え手への愛情あふれる彼のワインを飲めば、日本ワインに魅力が感じられるに違いありません。

室伏ワイナリー 注目の1本 「K21_FY_DD」

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