相続税の基礎控除とは?相続税で損しないための4つのこと

相続税の基礎控除とは?相続税で損しないための4つのこと

3、基礎控除額を増やすことによる節税方法

ここまでご覧頂いておわかりのとおり、基礎控除額を増やして節税するには、算入可能な法定相続人を増やすことだと気が付きましたでしょうか?

では、法定相続人を増やすには具体的にどうすべきか?

その方法として『養子縁組』の利用が挙げられます。

養子縁組は、法律上、被相続人の実子と同じ地位になりますので、結果として法定相続人の数を増やす事に繋がります。

民法では、養子縁組の制限はありませんが、それを相続税法にも当てはめますと、基礎控除額(生命保険金、死亡退職金の非課税制度適用がある場合は、当該非課税額含む。)が無制限に上がってしまい、本来の相続税法の趣旨に反してしまいます。

そこで、相続税法上は、相続人に実子がいる場合といない場合とでの基礎控除に加えられる養子の数に制限を設けております。

上記「2ー(2)基礎控除の具体例」を今一度ご確認下さい。

相続人が1人増えることにより、相続人1人あたりの受け取る相続財産が少なくなりますので税率区分が下がり、相続税も結果下がる可能性があります。

4、知っておきたいその他の相続税の節税方法

最後に、基礎控除以外の様々な特例控除を挙げますのでご参考になれば幸いです。

(1)生前贈与の活用

①暦年課税方式

暦年課税方式では、1年間、贈与によって取得した財産の合計額が110万円迄は基礎控除となり贈与税は掛りません。

ですので、例えば20年間、当該方式により特定の方一人に贈与を続けた場合、相続財産を2200万円減らす事が可能となります。

この方式は、贈与者と受贈者の関係は問いませんので、例えば、家族以外の方への贈与でも適用可能です。

ただし、相続発生3年以内に行われた贈与は、相続財産に加算されますので注意が必要です。

②相続時精算課税方式

相続時精算課税方式とは、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫へ2500万円まで生前贈与した場合、贈与税が掛らない控除です。なお、2500万円を超える部分については、一律20%の贈与税が課されます。

贈与財産の種類、金額、回数、年数に制限はありませんので、例えば一括で2500万円を子や孫に渡しても問題ありません。

相続税の計算は、次のとおりです。

ア:相続時の財産と既に贈与した贈与財産を合計する(相続税課税価格)。

イ:アによって算出された相続税課税価格に基づき、相続税額を算出

ウ:既に支払った贈与税額があれば、イの相続税額から差し引く

エ:相続税額が確定

※既に支払った贈与税額が相続税額を上回っている場合は、差額が還付されます。

具体例で見てみましょう。

(相続税計算の具体例)

父:62歳・相続時財産7000万円 子:32歳(父から生前に3000万円の贈与を受ける)

法定相続人は子1人のみ

ア:相続税課税価格(1億円)

生前贈与3000万円+相続時財産7000万円 = 1億円

イ:相続税額(1220万円)

1億円 – 3600万円(相続税基礎控除)=6400万円

6400万円 × 30% – 700万円 = 1220万円

ウ:既に支払った贈与税額(100万円)

3000万円 – 2500万円(相続時精算課税特別控除)= 500万円

500万円 × 20% = 100万円

エ:相続税確定額(1120万円)

イ ― ウ = 1120万円

贈与財産が住宅資金の場合には、贈与者の年齢制限は撤廃されますので、例えば、既に住宅ローンを組んでいる子へ住宅ローン繰り上げ返済用として現金を贈与するのも良いと思います。

当該制度は、贈与者ごとに選択できますので、例えば、父から2500万円、母からも2500万円の贈与を受けても、当該方式であればいずれも非課税となります。

なお、暦年課税方式との併用は出来ませんので注意が必要です。

③住宅取得資金贈与

父母や祖父母から20歳以上の子どもまたは孫が、自己が居住するための家屋の取得(リフォーム含む。)のため贈与された金銭が1500万円(住宅の内容によっては最大1000万円まで)までは贈与税が非課税となります。当該制度は、暦年課税との併用が可能ですのでプラス110万円の上乗せが可能となります。

平成31年6月30日までに契約した住宅取得に適用されます。

なお、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得して実際に居住し、または未完成や未入居の場合であっても、完成後すぐに居住することが確実であり、かつ、贈与を受けた方のその年の所得が2000万円以下であることに注意が必要です。

(2)相続税の配偶者控除

残された配偶者の将来の生活等を保障するため、配偶者には1億6000万円までは相続税が非課税となっております。また、仮に1億6000万円超の相続であっても、法定相続分までであれば同じく非課税となります。

この制度は、数次相続の際に注意が必要です。一次相続で相続税を出来る限り発生させないために配偶者へ多額の相続をしますと、その時の相続の際には相続税が掛らずに済みますが、二次相続がそう遠くない時期に訪れる予定の場合、二次相続で多額の相続税が発生する場合があります。

なお、当該控除を受けるためには、原則、相続税の申告(相続開始を知った日の翌日から10カ月以内)までに遺産分割が決まっている必要があります。

(3)不動産の活用

相続で最も多い財産は、不動産、特に土地です。となると、土地の評価額を下げることが出来れば、自然と相続税も下がります。

①小規模宅地等の評価減の特例(特定居住用宅地)

被相続人が居住していた土地について、ある一定条件の方が相続することで、当該土地の相続税評価額を80%減額できる特例です。なお、土地の面積の上限は330㎡です。

一定条件とは、次のとおりです。

  • 配偶者:無条件で80%減額となります。
  • 被相続人と同居の子:相続申告期限まで当該土地を所有・居住し続けることで80%減額となります。
  • 被相続人と同居していない子:相続申告期限までに当該土地を所有しており、かつ、当該子またはその配偶者が所有する家に居住していないこと

②マンション投資

例えば、マンションの一室を貸付け用として購入した場合、土地の相続税評価額が50%減額となります。

そもそも、不動産の相続税の計算方法は、路線価をもとに算出することとなり、通常、路線価は時価の8割程度ですので、これだけでも相続税が抑えられ、さらに、貸付け用として当該特例が適用された場合、そこからさらに50%減額となります。

ですが、あくまでも投資ですのでリスクももちろんあります。

例えば、購入した投資マンションの価値が下がってしまっては意味がありません。購入する際は、近くに新たにマンション建設の予定が無いかなどを把握することが重要です。

また、節税効果を高めるためにローンを組んで投資マンションを購入することも結構多く見受けられますが、このようなローンは変動金利タイプが主流となっていますので、将来の金利上昇リスクを背負うこととなります。

(4)生命保険の活用

生命保険受取金には、相続税非課税枠が設けられております。

『非課税額=500万円×法定相続人の数』

つまり、法定相続人の数が多い程、節税効果が発揮されますので、先ほどの養子縁組の利用により非課税枠が拡がります。

例えば、法定相続人3人の場合、500万円×3人=1500万円が保険金受取金の非課税額となりますが、実際の受取人が1人の場合であっても、1500万円までが非課税となります。

なお、この制度を利用するためには、保険の加入方法に一定の条件があります。

保険契約者・保険料支払い者が被相続人で、保険金受取人が相続人であることが条件です。

例えば、夫婦・子ども2人の家庭の場合、夫が保険契約者・保険料支払い者で保険契約をする場合、保険金受取人は子どもにしておくと節税効果がより高くなると思います。

万が一、夫が亡くなった場合、妻は配偶者控除が適用されますので1億6000万円まで、または、法定相続分までは非課税となりますので、そもそも妻は相続税が掛りません。

ですので、子どもに相続税が掛ってくる可能性がある場合は、妻ではなく子どもを保険金受取人にしておくと節税効果が最大限発揮されると思います。

また、保険にもいろいろ種類がありますが、満期が無い終身保険であれば、確実に保険金を受け取ることが出来ますので節税対策の為には有効かと思います。

先ほどの家族構成の例で見た場合、例えば、夫が1500万円の現金預貯金がある場合、課税対象の相続財産となりますが、これを一時払いの終身保険の保険料にすれば、相続税が非課税となります。

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