「虐待」に気づいたらどうすればいい?

第2回 もしかして虐待? そのとき大人がすべきこと
「もしかして虐待? でもよそのおうちのことに口出しするのもはばかられるし…」

友人や知人、近所の親子を見て、そんなモヤモヤした思いにとらわれたことはないだろうか? 日本では「他人の家庭のことには口を出さない」という風潮があるが、そのせいで家庭という密室で幼い子が圧倒的強者による親から暴力を受けて死に至る事件が相次いでいる。

もしもあなたの身近に、殴られたようなアザや切り傷をつけられた子どもがいたら。虐待の現場を実際に目撃してしまったら。被害を受けている子どもを救うために、私たち周囲の大人にできることはないのだろうか?

社会福祉士、精神保健福祉士、学校心理士などの資格を持ち、児童虐待の現場に詳しい亀田秀子さんに話を聞いた。

「『虐待?』と思うことがあったら、迷わずに専門機関に相談しましょう。ひとりで抱えていても、事態は改善されません。まずはお住まいの区市町村を担当する児童相談所か福祉事務所、または子ども家庭支援センターに連絡をしましょう」(亀田さん 以下同)

まだあまり知られていないが、2015年7月から児童相談所の全国共通ダイヤルが、今までの10ケタの番号から3ケタの「189(いちはやく)」に変更された。「189」にかけると近くの児童相談所につながる仕組みだ。

「『私が電話したことがバレたら逆恨みされるかもしれない』という心配をされる方もいますが、通告・相談は匿名で行うこともできますし、内容に関する秘密は必ず守られます。もしも虐待を疑うケースがあれば、まずは189に電話をしてください」

泣く男の子

●児童虐待の通告はすべての国民の義務

窓口は児童相談所だけではない。

「児童相談所のほかにも、子ども虐待防止センター(社会福祉法人)、子ども虐待防止ネットワーク(NPO法人)、児童虐待防止協会(NPO法人)でも虐待相談のホットラインをもうけているので、相談してみてください」

通報は電話でも手紙でもOK。仮に通報した後で「虐待ではなかった」という事実が判明しても、もちろん通報した人に罰則などは一切ない。

「それ、虐待じゃないですか」と勇気を出して直接介入しても、解決につながる可能性はきわめて低い。むしろ、親側の反発を招いて、さらに虐待が悪化してしまうケースもあるという。まずは専門家に相談して支援を委ねるのが確実だ。

そもそも虐待を心配しての通告は、余計なおせっかいではない。実は私たち大人の「義務」でもあるのだ。

「あまり知られていないことですが、実は児童虐待の通告はすべての国民に課せられた義務なのです(児童福祉法第25条・児童虐待の防止等に関する法律第6条)。『よその家のことだから』と見て見ぬ振りをするのではなく、気づいたときはすぐに通報してください」

もしも身近で子どもの虐待を発見したり、様子がおかしいなと思ったりすることがあったら、まずは「189」に電話を! あなたの一本の電話が、その子の命を救うきっかけになるのかもしれないのだから。
(阿部花恵+ノオト)

お話をお聞きした人

亀田秀子
亀田秀子
十文字学園女子大学(非常勤講師)、 春日部市教育相談センター(学校心理士) 、子ども相談研究所♪天使のとまり木♪
社会福祉士・精神保健福祉士・学校心理士 。公立小学校教員を経て、教育センターのスクールソーシャルワーカー・学校心理士としてカウンセリング、相談援助を展開。
社会福祉士・精神保健福祉士・学校心理士 。公立小学校教員を経て、教育センターのスクールソーシャルワーカー・学校心理士としてカウンセリング、相談援助を展開。