LOVE FOR NIPPON 東日本大震災から11年の取り組み (後編)

LOVE FOR NIPPON 東日本大震災から11年の取り組み (後編)

東日本大震災がおきた当初から被災地支援を続けてきたLOVE FOR NIPPON。前編では、代表理事のCANDLE JUNE(キャンドル ジュン)さんに福島で行ってきた活動についてお聞きしました。

後編では、震災当時と比べて変わってきた福島の現在の様子や、LOVE FOR NIPPONが行う未来のための活動についてお伺いします。

編集部 –
被災直後から活動を続けてきた視点で見ると、だいぶ変わってきたことや、なかなか変わらないことがあるかと思いますが、どのようなことに変化を感じるのでしょうか?

CANDLE JUNE –
東日本大震災での被害はさまざまな側面がありました。地震や津波による直接の被害、原子力発電所の事故、風評被害など、人によって受けた被害の大きさも内容も違いますし、国や自治体から受けられる補償が違うこともあります。
このように人それぞれに格差があることから、自分の受けた苦しみを他人と共有しにくい状況でした。

しかし、震災から10年を超えたころから、それぞれの体験を話すことが多くなってきたように思います。
その理由には、震災を知らない子どもたちが増えてきており、そうした子どもの感覚と自身の体験の間に生まれる、強い違和感がきっかけとなること。また、10年という年月の経過や、被害のあった場所がきれいに整備されたことによって、かつての被害状況が目に見えなくなっていることなどがあると思います。

県外の人たちは風評被害への影響を気にして、福島について語ることを避けるという側面があるかと思います。私自身もそういった加害者となっているかもしれないという意識をもち、被災者の人たちの声を県外の人たちに伝えるような活動もしています。
それに加えて、今後、原子力発電所で事故をおこさないための情報も発信するようにしています。そのためには「原子力発電所があると恐ろしいことがおきる」という恐怖を伝えることではなく、今後代替可能となる新しい取り組みなどを伝えることが大切です。
会津若松ではスマートシティ化や、会津電力による電力の地産地消がすでに始められています。また、LOVE FOR NIPPONでは「被災地応援でんき」といって福島でつくられた再生可能エネルギーを他の地域で購入できる仕組みにも関わっています。

被災地応援でんき – LOVE FOR NIPPON × みんな電力

こういった新しいテクノロジーとともに伝えることで、被災地の外の方にも原子力発電所とエネルギーの問題について考えてもらえるよう活動をしています。

©SONG OF THE EARTH 311 -FUKUSHIMA 2022-

編集部 –
SONG OF THE EARTH 311でキャンドルを灯すCANDLE 11THの他に、毎月11日にも福島の各地でCANDLE 11thが行われています。
キャンドルを灯すということは、CANDLE JUNEさんにとってどのようなメッセージがあるのでしょうか?

CANDLE JUNE –
LOVE FOR NIPPON では東日本大震災がおきた当初、主に物資提供の支援を行っていました。支援活動を続ける中で、津波で家族を亡くされた人たちから「6月11日の月命日にキャンドルナイトをやって欲しい」と言われたのが始まりです。
そのとき、キャンドルのカップにみんなの想いを書いて欲しいとお願いしたところ、いつもは明るい人たちなのに、書かれたメッセージの多くはとても悲痛なものでした。周りも同じように大変な状況の中で、自分だけ苦しい声を上げられないという心のストレスがあったのかと思います。

このとき、福島各地の方々はそれぞれに辛いことがあるけど、それを声にすることができないのであれば、キャンドルメッセージに無記名で書くことによって発信することができると考えるようになり、毎月11日にCANDLE 11thを続けることになりました。
福島各地でいろいろな人の想いを発信するために、毎月場所を変えて福島各地で開催をしています。

編集部 –
CANDLE JUNEさんは、以前から被災地などでキャンドルを灯す活動をされています。支援活動も相当精力的に活動をしていますが、東日本大震災に限らず、被災地にはどのような思いがあるのでしょうか?

CANDLE JUNE –
2001年に原爆の残り火とされている「平和の火」を広島で灯したのが始まりです。ダライ・ラマさんの呼びかけによって、世界中で開催された「聖なる音楽祭」の期間中に「平和の火」を自分のキャンドルに灯すことになりました。
「平和の火」は核兵器や戦争を無くしたいというメッセージを持っているのですが、この「平和の火」がとても可哀そうに思えました。核兵器や戦争を無くしたいといった願いが込められた火ですが、「消さないで欲しい」という想いのほうが強くなっていると感じました。私はそれまでにキャンドルを使った仕事を行う際に「灯すべき場所で、灯すべき時を」をルールとしていました。火はとても強く、恐ろしいものでもあります。正しい場所で、正しく灯すということを意識して、終わったら必ず消していましたが、この「平和の火」は消すことをゆるされない火のようにも感じました。一度私も灯した責任があるので、いつか自分がこの火を消そうと決めたのが始まりです。
それから、広島や長崎、沖縄、ニューヨーク、アフガニスタンなど戦争やテロの犠牲となった場所を巡りキャンドルを灯す旅をはじめ、「CANDLE ODYSSEY」と名付けて各地を灯してまわりました。この旅が被災地でもキャンドルを灯すきっかけとなりました。

戦争を始めるのにはたくさんの理由があるかと思いますが、いろいろな人の話を聞いていると、戦争を辞める理由はあまり考えられていないようにも思います。私は戦争をなくすために、具体的な「戦争をやめたほうがいい理由」を考えることが、大切なことなのではないかと考えています。
日本はかつて戦争によってひどいこともしたし、ひどい目にもあいました。唯一の被爆国であり、平和憲法を授かり、育んでもきています。その後に核の平和利用といわれた原子力発電所で事故がおきました。そう考えると、この経験をもとに核について具体的に考えることができるのは、日本人の宿命であると言えるのではないでしょうか?
平和を求めるためには道徳心だけに頼るのではなく、平和がもたらす経済的なメリットを考えてあげることも大切です。人は誰でも安心・安全を手に入れたいはずです。そういった欲求を実現することが、平和を求めることにつながっていくのではないでしょうか。
例えば、安全というと数値で表現できますが、安心はなかなか数値化しにくいものではあります。ただ、たくさんの視点で安全であることをチェックしていくことは安心につながっていくと思います。
危険なものは放射線量だけではなく、添加物、農薬、地盤など様々あり、テロや戦争がおこるリスクも存在します。こういった危険を避けるためにあらゆる分野で安全基準を設け、具体的に安心安全を求めることをできるようにします。この基準が価値となりビジネスとして経済に組み込まれると、戦争を排除し平和を求める状況はより強いものに変わってくるのではないでしょうか。

編集部 –
東日本大震災から2021年で10年となりました。先ほどのお話にありましたとおり、震災がおきた時に生まれていない、または記憶があまりない子どもも増えていると思います。被災地の子どもたちはどのような様子でしょうか?

CANDLE JUNE –
子どもたちはすごくポジティブで、こんな福島だからこそ学べる、発信できるという想いを持っている高校生や大学生が多くいます。当時、幼稚園生だった子が今は中学生となって語り部をしていることもあります。

大人が集まって話をすると、どうしても自分の立場の看板を背負って話をしてしまいますが、子どもは具体的でかつ無駄のない発信ができています。
また、大人同士のディスカッション行おうとすると、被災地でおきていることを知ってもらうことに時間を費やしてしまい、ディスカッションが始まるまでに時間がかかってしまいます。しかし、福島の子供たちは学校で震災を学び、ディスカッションをする環境で育っていることもあり、大人と比較してもとても優秀に感じています。
今は大人にお膳立てをしてもらっているけれども、社会に出て個人で同じような活動ができるのか?といった話がされるなど、将来を見据えて現実的に考える子供が多いことにも驚きます。

環境省にチャレンジアワードという、作文・論文コンクールを立ち上げてもらいました。そこでは福島でおきたことからの学びやこれからの未来のことを発表してもらうのですが、環境大臣賞、県知事賞などいくつかの賞を用意しています。
海外で話題の環境に対して戦う女学生を作るのではなく、何人かの受賞者を毎年輩出して多数の優秀な学生にスポットをあてることで、いずれその子たちが行政や国、国連や企業の中で社会活動のリーダシップとなることを期待しています。

編集部 –
もしかすると被災地の外の人にとっては、年月の経過とともに情報に触れる機会がもしかすると減ってくるかもしれません。
まだ大きな災害を経験したことがない方に、伝えたいことなどあればお話いただければと思います。

CANDLE JUNE –
まずは福島に来て、福島のことを知ってほしいと思います。
SONG OF THE EARTH 311ではたくさんのコンテンツを用意していますし、現地ツアーなども行っています。

最近よく、「3月11日は祝日にしませんか?」と言っているのですが、今年も金曜日でしたがたくさんの方々が有給をとって来場してくれました。祝日になる日を夢見て毎年参加される方々が増えてくれるといいなあと思っています。
SONG OF THE EARTH 311以外の場所にきてもらってもよいので「3月11日には福島にいます。」ということを個人が発信するようになって、たくさんの人に福島を知って欲しいと思います。

編集部 –
本日は、震災から現在にいたるまで、福島についてお話いただきありがとうございました。
やはり、実際に被災地を訪れて様子を見ると、確実にものの見え方は変わってくると思います。読者の方々も、SONG OF THE EARTH 311などを通じて、福島を訪れていただければと思います。

一般社団法人LOVE FOR NIPPON

SONG OF THE EARTH 311 – FUKUSHIMA 2022-

CANDLE JUNE

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moshimo ストック
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私たち moshimo ストックは「もしも」のための防災情報メディア。 最近、地震や台風がよく起きるようになって心配。 防災をしようと調べてみたものの、何から始めればいいの…? 私たちも始めは知ることがたくさんあって、防災ってちょっと難しいな…と思いました。 でも、ちょっと待って下さい! もし何の準備もなく災害にあってしまったら大変です。 防災は少しずつでも大丈夫、「もしも」のための準備を始めませんか?
私たち moshimo ストックは「もしも」のための防災情報メディア。 最近、地震や台風がよく起きるようになって心配。 防災をしようと調べてみたものの、何から始めればいいの…? 私たちも始めは知ることがたくさんあって、防災ってちょっと難しいな…と思いました。 でも、ちょっと待って下さい! もし何の準備もなく災害にあってしまったら大変です。 防災は少しずつでも大丈夫、「もしも」のための準備を始めませんか?