臼歯を失うと脳の老化が進むことを発見

臼歯を失うと脳の老化が進むことを発見

国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの研究グループは、臼歯を喪失することが脳の老化を促進することを老齢マウスモデルで発見しました。このニュースについて柴原先生にお話を伺います。

柴原孝彦医師

監修歯科医師:
柴原 孝彦(東京歯科大学名誉教授)

1979年東京歯科大学卒業、2004年東京歯科大学主任教授、2012年東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長、2020年東京歯科大学名誉教授。
著書は「口腔顎顔面外科学(医歯薬出版)」「標準口腔外科学(医学書院)」「カラーアトラス コンサイス口腔外科学(学建書院)」「口腔がん検診 どうするの、どう診るの(クインテッセンス出版)」「衛生士のための看護学大意(医歯薬出版)」「かかりつけ歯科医からはじめる口腔がん検診step1/2/3(医歯薬出版)」「エナメル上皮腫の診療ガイドライン(学術社)」「薬剤・ビスフォスフォネート関連顎骨壊死MRONJ・BRONJ(クインテッセンス出版)」「知っておきたい舌がん(扶桑社)」「口腔がんについて患者さんに説明するときに使える本(医歯薬出版)」など。

国立長寿医療研究センターの研究グループが発表した内容とは?

国立長寿医療研究センターの研究グループが発表した内容について教えてください。

柴原先生

今回取り上げる国立長寿医療研究センター研究グループによる研究結果は、4月18日付で科学雑誌のScientific Reportsに掲載されましたものです。咀嚼は消化を助けるだけでなく、中枢神経系を刺激し、脳内温度の上昇、脳血流の改善、脳内代謝の活性化をもたらし、ひいては神経系を刺激して恒常性維持に寄与します。歯の喪失は、アルツハイマー病を含む様々な認知症や、パーキンソン病などの認知機能低下の危険因子とされています。マウスやラットのモデルにおいて、抜歯や流動食での生存が学習、認知、記憶機能の低下に及ぼす影響を行動生理学的に解析した研究はありましたが、これらの変化に伴う脳内の分子発現の変化について詳細に解析したものはありませんでした。研究グループは、今回の研究で海馬と視床下部の加齢に伴う変化を解明するために、視床下部と海馬の老化は臼歯喪失によって促進されるという仮説を検証しました。研究グループらは、18月齢の歳をとったマウスの上顎の両側にある第一臼歯を抜歯して、3か月後の認知行動や海馬や視床下部における分子発現の変化を検討しました。その結果、上顎の第一臼歯を失ったマウスでは自発的な行動量や空間作業記憶、運動協調性が顕著に低下したということです。また、海馬および視床下部における神経栄養因子や神経細胞の減少も観察されました。さらに、脳の老化の特徴の一つであるアストロサイトの増加が高い度合いに進むことも明らかになったということです。

研究内容への受け止めは?

今回発表された研究内容についての受け止めを教えてください。

柴原先生

マウスは齧歯類に属し、歯がないと致命的になると言われています。臼歯を抜歯してどの程度のダメージを生体に与えたかの状況が不明確です。つまり、齧歯類にとって歯は生命であり、認知症どころでない侵襲を生体にもたらす可能性があります。その議論(脳以外の器官における障害)、そして対照症例の明示と比較検討が必要と考えます。

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