離婚調停とは?婚姻関係にある全ての人が知っておくべき全知識

離婚調停とは?婚姻関係にある全ての人が知っておくべき全知識

離婚調停とは、夫婦の離婚問題(親権者や養育費など)の決定について家庭裁判所で話し合うことによって解決を図る手続きです。

正式名称は「夫婦関係調整調停(離婚)」といいます。

夫婦だけでは離婚に関する話し合いがまとまらないときや、そもそも話し合いができないときには、離婚調停を申し立てることが有効です。

今回は、離婚調停について、

  • 離婚調停を申し立てて離婚したい人
  • 離婚調停を申し立てられたが離婚したくない人

どちらの立場の人にも知っておいていただきたいことを全般的に解説します。

この記事が、離婚調停で望ましい結果を獲得していただくための手助けとなれば幸いです。

離婚の基本的な知識について知りたい方は以下の記事もご覧ください。

1、そもそも離婚調停とは?

まずは、「離婚調停とは何か」ということについて、もう少し詳しくご説明します。

(1)調停委員を介して話し合う手続き

離婚調停は夫婦だけで離婚問題について話し合うのではなく、家庭裁判所において「調停委員」という人を介して話し合いを行う手続きです。

調停委員とは、トラブルの当事者双方の言い分に耳を傾け、どこが落とし所なのかを考え、両者が納得できる解決に導く役割をするために裁判所から選任される人のことです。

調停委員に資格などは必要ありませんが、以下のような地元の有識者の中から選ばれます。

  • 弁護士資格を有する者
  • 民事・家事の紛争解決に役立つ専門知識を有する者
  • 社会生活において豊富な知識を有する者
  • 年齢は40歳〜70歳くらい

離婚調停における調停委員も、この要件に従った方たちが選ばれることになりますが、他の民事調停と違う特色は、1名ずつ男女が選ばれるということです。

性別による考え方の偏りをなくすことを目的としています。

(2)離婚裁判との違い

離婚調停は裁判所(家庭裁判所)で行われる手続きですが、いわゆる「裁判」(訴訟)とは異なります。

裁判では、当事者が提出する主張と証拠をもとに、裁判所が判決を言い渡すという形で解決が図られます。

一方、調停では、裁判所が当事者双方に譲歩を促し、アドバイスや説得も交えて合意を導き出す役割を果たします。

つまり、トラブルの解決という同じ問題解決を目的としたものでありながら、

  • 裁判は第三者(裁判官)が結論を出すのに対して、調停は当事者の話し合いで結論を出す
  • 裁判は判決で決着をつけるのに対して、調停は当事者双方が納得できる結論に導く

という点が違うわけです。

(3)離婚調停の申立理由

離婚調停は離婚したい側が申し立てますが、その際に離婚したいと思う理由を申告する必要があります。

その理由が「申立理由」となります。

申立理由に特に制限はありませんが、家庭裁判所の定型の申立書を使用する場合は、以下の中から選ぶことになります(複数選択可)。

  1. 性格が合わない
  2. 異性関係
  3. 暴力をふるう
  4. 酒を飲み過ぎる
  5. 性的不調和
  6. 浪費する
  7. 病気
  8. 精神的に虐待する
  9. 家族をすててかえりみない
  10. 家族と折合いが悪い
  11. 同居に応じない
  12. 生活費を渡さない
  13. その他

調停では、申立人が選んだ申立理由を中心に話し合われることになりますので、具体的な事情を説明できるように準備しておくことが大切です。

離婚調停を申し立てられた側の人は、申立書のコピーが裁判所から送付されますので、申立理由を見て反論を検討することになります。

(4)離婚調停で決められること

離婚調停で決められることは、当然ながら第一に、

  • 離婚するかどうか

です。しかし、決められるべきことはそれだけではありません。

お互いに離婚することには合意していても、条件の内容について合意ができないというケースも多々あります。

たとえば、

  • 財産分与を行うか?行うとしたらいくらか
  • 子どもの親権をどちらが持つか?
  • 養育費を支払うか?支払うとしたらいくらか
  • 面会交流を実施するか?するとした場合その条件
  • 浮気やDVなどで離婚する場合は慰謝料を支払うか?支払うとしたらいくらか

などです。

以上のすべての事項について、調停委員を介して話し合うことで当事者の意見をすり合わせていきます。

もっとも、当事者の意見が大きく食い違う場合、調停委員は過去の裁判例などを参照して当事者双方に譲歩を求めてきます。

そのため、結論は「相場」に近いものとなりがちです。

ですから、慰謝料や養育費などを一般的な額以上に支払ってほしいという場合は、離婚調停よりも協議離婚で一気に解決を図る方が有効な場合もあります。

離婚協議の際の交渉においては、有利に進めるために事前に弁護士のアドバイスを仰ぐことをおすすめします。

なお、調停では夫婦関係を再構築するための話し合いを行うこともできます。

その場合には、「夫婦関係調整調停(円満)」という調停を申し立てます。これがいわゆる「円満調停」です。

(5)離婚調停のメリット

離婚調停は話し合いの手続きですので、「離婚協議と大差ないのでは?」と感じる方もいらっしゃることでしょう。

しかし、離婚調停には以下の点で離婚協議とは異なる大きなメリットがあるといえます。

①調停委員を介するので話し合いがまとまりやすい

調停では、調停委員という第三者が間に入るので、当事者も冷静に話し合うことができます。

また、調停委員が専門知識や人生経験を踏まえたアドバイスや説得を交えて話し合いをリードするので、夫婦だけで話し合うよりも合意に至りやすくなります。

②相手と顔を合わせる必要がない

夫婦が離婚問題について直接話し合うと、どうしても感情的になりがちです。

しかし、調停では当事者が直接顔を合わせることはありません。

調停での話し合いは、当事者双方が交代で調停委員と話をするという形で進められます。

ですので、相手と面と向かって主張しにくいことでも、調停では憶せず主張することができます。

③強制執行が可能になる

離婚調停がまとまると、「調停調書」が取得できます。

調停調書は裁判の判決と同等の強い法的効力があります。

したがって、相手が約束を破って慰謝料や養育費を支払わないような場合には、強制執行手続きを申し立て、相手の給料や預金口座などを差し押さえて金銭を回収することが可能になります。

2、離婚調停を申し立てる方法

次に、実際に離婚調停を申し立てる方法についてご説明します。

(1)申し立てのタイミング~別居してからの方がよい?

離婚調停を申し立てるべきタイミングは、以下のとおりです。

  • 夫婦で離婚について話し合っても意見が噛み合わない
  • 顔を合わせると感情的になって冷静に話し合えない
  • 相手が話し合いに応じない
  • 相手のことが怖くて直接話し合えない

離婚調停を申し立てるには別居しなければならないのかという疑問をお持ちの方も多いですが、同居したままでも申し立ては可能です。

しかし、調停の進行中に夫婦が家庭内で顔を合わせると感情的になり、トラブルがエスカレートするおそれがあります。

そのため、別居してから離婚調停を申し立てるのが一般的となっています。

(2)申し立てる際の必要書類は?

離婚調停を申し立てる際は、以下の書類を揃える必要があります。

  • 夫婦関係調整調停申立書
  • 照会回答書
  • 事情説明書
  • 申立人の戸籍謄本
  • 連絡先等の届出書
  • 相手方の戸籍謄本
  • (年金分割についての調停を含む時)年金分割のための情報通知書

申し立てが受理されると、「夫婦関係調整調停申立書」は相手にも送付されますし、その他の書類も相手が家庭裁判所で閲覧・謄写することが可能になります。

相手に知られたくない情報(現住所や電話番号など)がある場合は、

  • 非開示の希望に関する申出書

も提出しておきましょう。

なお、提出書類に不備があると、裁判所で受け付けてもらえないこともあります。

スムーズに受理してもらうために、詳しい申し立て方法をこちらの記事でご確認ください。

申立書等の雛形と記入例もダウンロードできますので、ぜひご利用ください。

(3)どこに申し立てればいいの?

離婚調停の申立先は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。

例外的に、事前に夫婦間で調停をする家庭裁判所を決めていた場合には、その家庭裁判所に申し立てることもできます。

管轄裁判所の場所についてはこちらをご参照下さい。

管轄裁判所の場所についてはこちら

(4)申し立てにかかる費用は?

離婚調停の申し立てにかかる費用はわずかで、総額3,000円前後です。内訳は以下のとおりです。

  • 収入印紙代 1,200円
  • 切手代 800円前後(家庭裁判所により多少異なります)
  • 戸籍謄本取得費用 1通につき450円
  • 住民票取得費用 1通につき300円

ただし、弁護士に依頼して申し立てる場合には弁護士費用が別途必要となります。

弁護士費用をできる限り抑える方法については、こちらの記事をご参照ください。

(5)離婚調停は弁護士に依頼すべき?

離婚調停はご自身で行うこともできますし、弁護士に依頼することもできます。

夫婦間で離婚することについては合意できている場合で、離婚条件についても大筋では合意できているが細かな点で合意できないような場合は、ご自身で申し立てるのもよいでしょう。

しかし、それ以外の場合は弁護士に依頼した方が納得できる結果が得られやすいといえます。

弁護士に相談・依頼する場合は、離婚調停を得意とする弁護士を選ぶことが重要です。

弁護士の選び方について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

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