強姦冤罪事件はなぜ起こる?無実の罪で疑われたときに知るべき5つのこと

強姦冤罪事件はなぜ起こる?無実の罪で疑われたときに知るべき5つのこと

3、強姦冤罪事件はなぜ起こる?

世間の注目を集めた強姦冤罪事件を3つ紹介しましたが、未だ明るみになっていない冤罪事件もあることが考えられます。

強姦冤罪事件は、なぜ起こるのでしょうか?主な理由として、以下の3点が挙げられます。

(1)取り調べで自白を強要されることがある

日本の刑事事件の手続きでは、以前から取調官が脅しや暴行・偽計・誘導・泣き落としなどのさまざまな手段を使って、被疑者に対して自白を迫ることがあると言われてきました。

実際に、前記の氷見事件では誤認逮捕された男性が、取調官に対する恐怖心から、虚偽の自白をしています。

御殿場事件でも、少年らの主張によると取調官から自白を強要されたとのことです。

近年では、いくつもの冤罪事件が明るみに出てきたこともあり、捜査機関は無理な取り調べを行わないように注意しています。

ですが、現在でも何らかの手段で自白の強要が行われている可能性は大いにあります。

(2)被害者の供述が信用されやすい傾向にある

前項でご紹介した3つの強姦冤罪事件では、いずれも被告人が「被害者の供述は信用できない」と主張して無罪を争っています。

ですが、結果としてはことごとく、被告人の供述よりも被害者の供述の方が信用され、有罪判決が言い渡されました。

刑事裁判では一般的に、「被告人は刑罰を免れるために嘘をつく可能性がある」と考えられます。

一方で、「被害を受けた人がわざわざ嘘をつく可能性は低い」と考えられる傾向にあります。

強姦事件の場合、「恥を忍んで被害の事実を述べる女性が嘘をつくとは考えがたい」とされる傾向が強いように思われます。

大阪市強姦虚偽証言事件の第1審となった大阪地裁の判決では、

「弱冠14歳の少女がありもしない強姦被害等をでっち上げるまでして養父を告訴すること自体非常に考えにくい」

とされ、被告人の主張は一蹴されているのです。

(3)日本の刑事裁判の有罪率が極めて高い

日本の刑事裁判の有罪率は、毎年99%を超えています。

被疑者が捜査段階で虚偽の自白をして供述調書をとられてしまうと、刑事裁判で無罪を主張しても、自白調書が証拠として採用されてしまうケースがほとんどです。

自白が虚偽であることを法廷で立証することは、非常に難しいことになります。

法律上は、「疑わしきは罰せず」というのが刑事裁判の原則ですが、実際上は被告人・弁護人の主張を裁判所に認めてもらうことは容易ではありません。

4、こんな場合は冤罪になる?強姦冤罪事件のパターン

人違いで誤認逮捕され、有罪判決を受けたようなケースは明らかに冤罪です。

一方で、実際に性交等が行われたケースでは、冤罪かどうかの判断が難しいこともあります。

刑事裁判で争われることが多いケースとして、以下の3つのパターンがあります。

(1)相手が合意していた

強姦罪は、暴行または脅迫によって相手の意思を制圧し、強制的に性交等を行う犯罪なので、相手が合意していた場合には成立しません。

ただ、相手が行為当時には合意していたにもかかわらず、後になって「無理矢理だった」と訴えるケースがあります。

行為後に2人の関係がこじれて女性が腹いせのために強姦罪で訴えることや、周囲から問い詰められ、「無理矢理された」と答えることがあるようです。

性交等は密室内など人目に付かないところで行われることが通常であるため、「合意があったこと」を立証するのは難しいことが多いものです。

その場合、被害者とされる女性の供述が信用されたり、被告人の虚偽の自白調書が証拠として採用されたりすると冤罪が発生することになります。

(2)合意があると誤信して行為に及んだ

相手の合意がないのに、合意があると誤信して行為に及んだ場合は、強姦罪の故意がないため無罪となります。

ただ、このような言い訳を安易に認めると、あらゆる強姦事件が無罪となりかねません。

刑事裁判では行為当時の状況を一般人が見たときに、「合意があると行為者が信じることが通常かどうか」が判断されます。

被害者とされる女性の供述が信用されやすいことと、被告人の虚偽の自白調書が証拠として採用されやすいことから、冤罪が発生する可能性が十分にあるといえます。

(3)酒に酔っていて行為を覚えていない

酒に酔って前後不覚の状態に陥った人が、合意のない相手と強制的に性交等に及ぶことがあります。

刑法では心神喪失者の行為は罰しないと定めらており(同法第39条1項)、理論上はこの場合も無罪となります。

意識のない状態での行為について、責任を問うことはできないからです。

しかし、この条文を安易に適用すると、酒に酔った人の行為がすべて許されることにもなりかねません。

刑事裁判では、「前後不覚の状態に陥るほど酒を飲んだ行為」を問題視します。

責任を問うことができない状態にいたる原因を自ら作り出し、犯行に及んだ場合は完全な責任を問うべきであると考えられ、有罪とされます。

以上のような考え方のことを「原因において自由な行為の理論」といいます。

行為者が「酒に酔って覚えていない」と主張しても、自らが酒を飲んで前後不覚の状態となり、強姦罪に該当する行為をした以上、冤罪とはなりません。

ただし、例えば相手や第三者から無理矢理に酒を飲まされた場合のように、「原因」を自ら作ったわけではないケースでは、冤罪となる可能性もあります。

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