脱税の時効成立が難しい理由とは?刑罰や時効について知るべきこと

脱税の時効成立が難しい理由とは?刑罰や時効について知るべきこと

3、脱税に時効はある?期間は何年?

本章では、脱税の時効について解説していきます。

時効にも、刑事事件としての時効(公訴時効)と、税務署との関係での時効とがありますので、それぞれについてご説明します。

(1)脱税の公訴時効期間は7年

刑事事件には、犯罪行為が行われてから一定の期間内に検察官が起訴できなければ、時効によって起訴できなくなる「公訴時効」という制度があります(刑事訴訟法第250条)。

時効期間は刑罰の重さに応じて定められており、脱税犯の時効期間は以下のとおりです。

  • ほ脱犯…7年
  • 受還付犯…7年
  • 単純無申告ほ脱犯…5年
  • 単純無申告犯…3年

以上の期間が経過するまでに起訴されなければ時効が成立し、処罰されることはなくなります。

その場合は逮捕、勾留されていても釈放されますし、前科もつきません。

(2)納税・追徴課税の時効期間は5年~7年

税務署との関係での時効には、「賦課権」の期限と、「徴収権」の時効とがあります。

賦課権とは、税務署が納税額を決定する権利のことで、「課税権」と言い換える分かりやすいでしょう。

賦課権の期限は申告期限から5年ですが、贈与税のみは6年とされています。ただし、偽りその他不正行為、つまり脱税行為があると7年となります。

これらの期限は正確にいうと「時効」ではなく「除斥期間」というものです。

除斥期間とは、時効のように完成が猶予されたり、更新されたりすることなく、定められた期間が経過すると確実に権利が消滅するものです。

もう一方の徴収権とは、確定した税額を税務署が取り立てることができる権利となります。

徴収権には消滅時効があり、時効期間は法定納期限から5年です。

ただし、消滅時効の期間は「更新」されることがあり、実際に時効が成立するケースは少ないのが実情です。この点については、後ほど「4」(4)で詳しく解説します。

税務署との関係での時効についてまとめますと、脱税の場合でも7年という賦課権の除斥期間があります。徴収権の時効期間(5年)は更新されやすいため、時効成立を期待することは難しいといえるでしょう。

4、脱税犯が時効で逃げ切るのは無理?

次に、脱税をしてしまった場合に時効で逃げ切ることができるのか、という問題について解説します。

(1)脱税は税務調査でほぼ公になる

税務署は、適正に税金を徴収するために、さまざまな調査を行う権限を有しています。

過少申告や無申告、申告漏れが疑われる場合には「税務調査」が行われるのです。

税務調査では、帳簿などの関係書類を徹底的に調べられ、さまざまな質問への回答や資力の提出も求められます。脱税が疑われる場合には、強制調査も行われます。

少額の過少申告や申告漏れなどは事実上見逃されることもあるかもしれません。

しかし、税務署は脱税の事案には特に目を光らせているため、不正はほぼ確実に公になると考えておかなければなりません。

(2)脱税の起訴率は極めて高い

脱税が発覚しても追徴課税さえ支払えばよいと考える人もいるかもしれませんが、そうはいきません。脱税犯の起訴率は極めて高いのです。

によると、所得税法違反・法人税法違反・消費税法違反の起訴件数は合計で208件、不起訴件数の合計は11件で、起訴率は95%となっています。

なお、相続税法違反の送検事例はありませんでした。

刑事事件全体で見ると、起訴件数10万6590件に対して不起訴件数15万2569件で、起訴率は41.1%にとどまっています(自動車による過失致死傷等および道路交通法等違反事件は除きます)。

刑事事件の中でも、脱税犯の起訴率がいかに高いかがお分かりいただけることでしょう。

脱税犯は、それだけ悪質な行為で、処罰する必要性が高いと考えられているのです。

(3)起訴されると有罪率も高い

日本の刑事裁判は、有罪率が99%を超えています。

つまり、脱税が発覚して送検、起訴されるとほとんど確率で有罪となり、処罰されると考えておく必要があります。

(4)納税・追徴課税の時効はリセットされることもある

脱税のペナルティを回避するために、時効成立を期待する人も少なくないことでしょう。

しかし、実際には脱税の時効が成立するケースは極めて少ないと言われています。なぜなら、消滅時効の期間には「更新」があるからです。一定の事由があると、それまでに進行していた時効期間がリセットされてゼロに戻るのです。その後は、また初めから時効期間が進行し始めます。

5年の間に税務署から請求を受けたり、一部でも税金を納付したり、納税の猶予を申請したりすると時効が更新され、そのときから5年が経過しなければ時効は成立しません。税務署も法律に従って適正に請求してきますので、基本的に消滅時効が成立することはないと考えるべきでしょう。

刑事事件における公訴時効についても、犯人が国外にいる場合と、犯人が逃げ隠れしているために起訴状が送達されなかったような場合、その間は時効が停止します。

結論として、脱税をしてしまったら時効成立を期待するのではなく、早めに申告して納税し、ペナルティをできる限り軽減することが得策であるといえます。

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