遅延損害金の計算方法は?返済が遅れそうなときに重要な5つのこと

遅延損害金の計算方法は?返済が遅れそうなときに重要な5つのこと

遅延損害金の計算方法とは、どのようなものだろう……。

遅延損害金とは、借金の返済が遅れたときに請求されるお金のことです。

通常、遅延損害金の利率は、元々の利息よりも高いものです。

延滞を解消するまで遅延損害金が発生し続けるので、延滞が長引くと高額の請求を受けることになります。

ただでさえ返済が苦しいという場合には、遅延損害金の負担によってさらに返済が難しくなり、債務整理をせざるを得ないということもあるでしょう。

突発的な事情などでやむを得ず返済が遅れる場合でも、遅延損害金がいくらかかるのかを把握しておくことが大切です。

そのためには、遅延損害金の計算方法を知る必要があります。

今回は、

  • 遅延損害金の計算方法
  • 遅延損害金を支払えないとどうなるのか
  • 遅延損害金を支払えないときの対処法

などについて、借金問題の解決経験が豊富なベリーベスト法律事務所の弁護士が分かりやすく解説していきます。

この記事をお読みいただくことで遅延損害金の計算方法を理解していただき、計画的な返済に役立てていただければ幸いです。

遅延損害金については以下の関連記事をご覧ください。

1、遅延損害金の計算方法を解説する前に~そもそも遅延損害金とは?

まずは、遅延損害金とは何か、利率はどれくらいなのかについて確認しておきましょう。

(1)返済が遅れたときの違約金

遅延損害金とは、借金の返済が遅れたときに発生する違約金のことです。

約束どおりに返済しなかったことに対する、損害賠償金としての性質を有するお金です。

金融機関における実務では、「遅延利息」や「延滞利息」などと呼ばれることもあります。

法律上は、「債務不履行による賠償額の予定」と呼ばれています(利息制限法第4条1項)。

事前に、契約で「債務不履行による賠償額の予定」を定めていた場合に延滞すると、返済日の翌日から発生するのが遅延損害金です。

貸金業者からの借金だけでなく、

  • クレジットカードの利用代金
  • 各種ローン
  • 家賃
  • 携帯電話代
  • 親族や知人からの借金

などあらゆる金銭債務について、契約で遅延損害金を定めることが認められています。

(2)利息との違い

利息も、当事者の契約で定めた場合に発生するものですが、利息と遅延損害金とは性質の異なるお金です。

利息はお金を貸すというサービスによって貸主が受け取る運用利益であるのに対して、遅延損害金は約束どおりに返済しなかったことに対するペナルティです。

通常は、利息よりも遅延損害金の方が高い利率となっています。

(3)利率の相場は14.6%~20%

貸金業者からの借金における遅延損害金の利率は業者によって異なりますが、年14.6%~20%が相場となっています。

銀行カードローンでは年14.6%、消費者金融では年20%程度とされているのが一般的です。

金銭消費貸借契約(お金の貸し借り)における遅延損害金の利率の上限は、利息制限法で「利息の1.46倍まで」と定められています。

具体的には、以下のように借入額に応じて利息・遅延損害金の上限利率が異なります。

借入額

利息

遅延損害金

10万円未満

20%     

 29.2%   

10万円以上100万円未満

18%     

26.28%  

100万円以上

15%     

 21.9%   

ただし、利息制限法では貸金業者からの借金については、遅延損害金の上限利率を年20%までと定められているのです(同法第7条1項)。

対して、個人間でのお金の貸し借りについては、上記の表に記載した利率が適用されます。

2、遅延損害金の計算方法

遅延損害金の額は、次の計算式によって求めることができます。

滞納額(元金)×遅延損害金利率÷365日×滞納日数=遅延損害金

(閏年は366日で計算します。)

借入残高の全額ではなく、あくまでも滞納した金額(元金)にのみ遅延損害金がかかることにご注意ください。

滞納していない部分は、まだ「遅延」していないので、遅延損害金ではなく通常の利息がかかります。

もっとも、後述のとおり、期限の利益を喪失した場合は借入残高の全額について返済義務が生じますので、借入残高の全額に遅延損害金がかかります。

どのようなケースでもこの計算式が適用されますが、分かりやすいように、いくつかのケースごとにポイントを解説していきます。

(1)消費者金融や銀行カードローンの借金の場合

先ほどもご説明したように、遅延損害金の利率が消費者金融では年20%程度、銀行カードローンでは年14.6%程度とされているのが一般的です。

ここでは、借入残高100万円、毎月の返済額が2万5,000円(うち元金部分は1万円)だとして、1ヶ月(30日)滞納した場合にかかる遅延損害金の額を計算してみます。

  • 年20%の場合:164円

1万円×0.2÷365日×30日=164円

  • 年18%の場合:148円

1万円×0.18÷365日×30日=148円

微々たる金額のようですが、滞納した翌月は通常の返済分2万5,000円に加え、「滞納した2万5,000円+遅延損害金」を支払わなければならず、返済は厳しくなります。

(2)クレジットカードでのショッピングの場合

クレジットカードでのショッピングにおける遅延損害金の利率は、年14.6%とされているのが一般的です。

カードショッピングには利息制限法ではなく消費者契約法が適用され、同法では遅延損害金の上限利率が年14.6%と定められています。

多くのカード会社は、この上限利率を適用しているのです。

仮に滞納額のうち元金部分が1万円で、遅延損害金の利率が年14.6%だとして、1ヶ月(30日)滞納した場合は、以下の計算式により遅延損害金は120円となります。

1万円×0.146÷365日×30日=120円

クレジットカードのキャッシングについては、利息制限法が適用されるため、多くのカード会社が遅延損害金の利率を年20%程度としていることにご注意ください。

(3)住宅ローンの場合

住宅ローンの利息は消費者金融からの借り入れやカードキャッシングよりも相当に低くなります。

ですが、利息制限法の適用により、遅延損害金の利率は年14.6%程度とされていることが一般的です。

住宅ローンの場合は元金が大きいことが多いため、遅延損害金も高額となりがちであることに注意が必要です。

ローン残高3,000万円、毎月の返済額が10万円(うち元金部分は5万円)だとして、1ヶ月(30日)滞納した場合は、以下の計算式により遅延損害金は600円となります。

5万円×0.146÷365日×30日=600円

(4)個人からの借金の場合

個人からの借金の場合は前記「1」(3)でご説明したように、貸金業者からの借金の場合とは遅延損害金の上限利率が異なることに注意が必要です。

ここでは、個人から10万円を無利息で借り入れ、毎月1万円ずつ返済していくこととし、遅延損害金については年26.28%と定めていたとします。

以上のような場合に1ヶ月(30日)滞納すると、以下の計算式により遅延損害金は216円です。

1万円×0.2628÷365日×30日=216円

契約で遅延損害金を定めていない場合でも、貸主は民事法定利率の年3%(民法第404条2項)で計算した遅延損害金を請求できます。

上記のケースにおいて年3%で計算すると、遅延損害金は25円となります。

1万円×0.03÷365日×30日=25円

(5)一括返済を請求されている場合

金融機関からの借金の場合、一般的に滞納を2~3ヶ月続けると一括返済を請求されます。

債権者から一括返済を請求されている場合には、借入残高の全額に対して遅延損害金がかかるようになります。

消費者金融からの借入残高100万円を滞納して一括返済の請求を受けた場合、遅延損害金の利率が年20%だとすると、遅延損害金は滞納期間に応じて以下のとおりです。

  • 1ヶ月(30日)滞納したとき

100万円×0.2÷365日×30日=1万6,438円

  • 6ヶ月(180日)滞納したとき

100万円×0.2÷365日×180日=9万8,630円

  • 1年(365日)滞納したとき

100万円×0.2÷365日×365日=20万円

遅延損害金が発生しても、早期に滞納を解消すれば微々たる負担で済みます。

しかし、滞納を続けるとこのように高額の遅延損害金が発生してしまうので、注意が必要です。

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