「産後うつ」かも?と思ったら知っておくべき19のこと

「産後うつ」かも?と思ったら知っておくべき19のこと

7、産後うつの予防対策

産後うつを予防するには、出産前から産後うつという病気を知り、自分が産後うつになるかもしれないという前提で対処法を考えておくことが大事です。

例えば、一人で育児を抱え込まないためのサポート(自治体の支援サービスや家事代行サービス等)をあらかじめ調べておいたり、協力を頼める友人や家族にあらかじめお願いをしておいたりする等の準備が考えられます。

そして、実際に育児をするようになったら、全てを完璧にこなそうとせず、ある程度妥協することも必要です。 

8、産後うつの治療

それでも、産後うつの症状が出てしまったときには治療が必要です。産後うつは、うつ病の一種ですから、精神科や心療内科での治療が効果的です。治療といっても、薬物療法だけでなく、カウンセリング等の方法によっても症状を改善することが可能です。

9、産後うつの妻に対して夫がとるべき対応

また、妻が産後うつになってしまったときに最も大切なのは、パートナーである夫の行動です。産後最もつらいのは赤ちゃんではなく、母となった妻の方です。帰宅して赤ちゃんばかりに注意を向けるのではなく、慣れない育児で不安を抱え、また、不眠や疲労を抱えた妻の体調や気持ちに気を配ることが大切です。

そして、何より、パートナーである夫が妻の話を聞くなど積極的にコミュニケーションを取ったり、1週間に1度は妻が育児をから離れられるような時間を取ってあげたりすることも、産後うつを予防するのに効果的といえます。 

10、産後うつの相談先、カウンセリング機関

産後うつにならないため、また産後うつを悪化させないためには、悩みを抱えたまま一人で頑張るのではなく、まず、誰かに相談してみることも大事です。

日本助産師会の子育て・女性健康支援センターや日本保育協会のママさん110番(03-3222-2110)等では電話相談を行っていますので、少しでも悩みがある場合は、積極的に利用されると良いでしょう。

11、産後うつは何科?産後うつの病院

前述のように、産後うつはうつ病の一種ですから、病院で治療を受ける場合は、精神科や心療内科で治療を受けるのがよいといえます。また、全国にある精神保健福祉センターや自治体の保健センター、また出産をした産婦人科で相談を受けることも可能ですので、いきなり精神科等を受診するのに抵抗がある方は、まず相談しやすい機関に相談してみるのがよいでしょう。 

12、産後うつの薬の種類と注意点

カウンセリング等の方法によっても症状が改善されないときは、薬による治療も検討する必要があります。産後うつはうつ病の一種ですから、一般的には、抗うつ薬と精神安定薬が用いられます。抗うつ薬にも色々な種類がありますが、母乳で育児をされている場合は、必ず医師と相談して、副作用の少ない薬を選択するようにしましょう。

なお、抗うつ薬は、脳の神経物質を出す箇所に働きかける薬ですから、効果が表れるまで一定の時間がかかる場合が多いといえます。対して、精神安定薬は比較的即効性が期待されますので、投薬治療初期には、抗うつ薬と精神安定薬が併用されることが多いようです。

13、産後うつでの入院のメリットと注意点

カウンセリングや薬物療法でも症状が改善しないときは、入院による治療を検討しなければならない場合もあります。入院によって、家事や育児から一時的に離れられるため、環境的に症状を改善させやすいといえます。ただ、赤ちゃんから離れていることによって逆に不安が募っては入院する意味がありません。ですから、入院中の家事や育児を安心して任せられる家族の協力が欠かせないといえるでしょう。 

14、産後うつを理由に保育園に預けてもよい?

産後うつは、育児に対するストレスが積み重なっておきるものですから、一時的に育児から離れることも大事です。そのために、子供を保育園に預ける、という選択肢もあります。

その場合、産後うつであるという医師の診断書を自治体に提出することが必要です。

待機児童の問題もあり、診断書があれば必ず入園できるわけではありませんが、働いていないから保育園は入れられない等と始めから諦めずに、選択肢の一つとして検討してみましょう。

15、産後うつが離婚に発展しやすいケース

妻が産後うつになっているにもかかわらず、夫が育児に非協力的であったり、そもそも産後うつというものを全く理解しなかったりするような場合、妻が、この先この夫と一緒にいても幸せになれないというような絶望感を感じて、離婚を決意する場合もあるようです。

16、産後うつで離婚に至ること防ぐには

産後うつが原因で離婚に至ることを防ぐためには、夫にも産後うつという病気についての正しい知識を得てもらい、夫にも家事や育児について協力してもらうことが大切です。特に、産後は、妻が、ホルモンバランスの変化等に伴い、普段であれば気にならなかったことでも不満に思ってしまうような場合があり得ることを、あらかじめ認識しておくことが重要です。

17、産後うつで離婚を決める前に考えるべきこと

離婚は、通常の場合であっても、精神的、また経済的に大きな負担を伴います。まして、産後うつという辛い状況にある中で離婚を検討し、夫との間で、親権や養育費、財産分与等の話し合いをしなければならなくなるのは、大きな負担となり、より病状を悪化させることにもつながりかねません。

ですから、まずは産後うつの症状を改善させることを考えることが大切で、離婚するかどうかはその後の話といえるでしょう。

18、産後うつで離婚したい場合に知っておくべきこと

(1)離婚の流れ(協議、調停、裁判)

産後うつが原因でどうしても離婚をしたい場合は、まず夫と協議をする必要があります。夫が離婚に同意すればよいのですが、同意しない場合は、家庭裁判所での調停や裁判を検討する必要があります。

詳しくは、「「離婚したい!」と思ったら知っておきたい12のこと」をご参照ください。

(2)法定離婚事由

協議や家庭裁判所での調停でも離婚が成立しない場合は、裁判所に離婚を認めてもらう方法があります。ただ、裁判で離婚が認められるのは、不貞行為や3年以上の生死不明等といった法律に定められた離婚事由(法定離婚事由)がある場合に限られます。

詳しくは「法定離婚事由(原因)とは?相手が拒否しても離婚できる場合について」をご参照ください。

(3)自分の産後うつを理由とした離婚請求は認められる?

裁判所に離婚を認めてもらうには、法定離婚事由が必要ですが、産後うつになったこと自体は、通常は法定離婚事由には該当しないと考えられます。

ただ、産後うつが原因で夫婦の仲が悪化し、別居に至ってしまったまま長期間が経過したような場合は、法定離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な事由」があると裁判所が判断する場合もあるでしょう。

(4)親権の獲得方法

一般的には子供が幼少の場合、親権者は母親になることが多いと言われています。しかし、産後うつが原因で、育児放棄をしてしまっていたり、子供を虐待してしまったりしているような場合は、子供が小さくても例外的に父親が親権者として定められる場合もあるので注意が必要です。

詳しくは「離婚時に調停で親権を獲得するために知っておくと有利な7つのこと」をご参照ください。 

(5)離婚で損しないためのお金の知識

婚姻費用

夫婦はたとえ別居していても、法律上生活を保持する義務がありますから、夫に対し、生活費(法律上「婚姻費用」といいます)を請求することが可能です。ですから、離婚が成立するまでの間は、この生活費を請求することを忘れないようにしましょう。

詳しくは「別居時に婚姻費用算定表を正しく利用して請求できる金額を計算する方法」をご参照ください。

 財産分与、年金分割

産後うつが原因で離婚する場合であっても、財産分与や年金分割は、通常の離婚の場合と同様に請求することが可能です。なお、財産分与や年金分割は離婚が成立した後であっても、2年以内であれば請求可能です。

ですから、話し合いが長引きそうな場合は、まず離婚を成立させることを最優先に考え、財産分与や年金分割は離婚成立の後から請求するという方法もあります。しかし、相手が離婚したがっている場合は、離婚成立前に条件交渉をしたほうが、好条件を引き出だしやすいでしょう。

詳しくは、「財産分与|離婚時にできるだけ高額を獲得するために知っておくべき全てのこと」と「離婚時の年金分割をできるだけ多く獲得するための全手順」をご参照ください。」をそれぞれご参照ください。

産後うつの慰謝料請求は認めれる?

産後うつになっただけで、夫に慰謝料を請求することは法律的には不可能です。ただ、夫があまりにも産後うつに対して無関心であったがために、妻のうつ症状が悪化したと認められる場合や、妻に対して言動がモラルハラスメントと評価でき、それが離婚の主たる原因である場合は、離婚に至った責任が夫にあることになり、慰謝料請求が可能な場合もあります。

ただ、一般的には、産後うつから離婚に至るようなケースにおいては、多かれ少なかれ、夫婦双方に離婚に至った原因があると判断されることが多いため、慰謝料は請求できない場合の方が多いといえるでしょう。

離婚慰謝料について詳しくは「離婚慰謝料の相場と弁護士が教える高額獲得する方法」をご参照ください。

養育費

離婚が成立した後は、夫婦ではなくなるので、生活費(婚姻費用)を請求することはできません。しかし、自分が子供を養育する場合は、相手に養育費を請求することができます。ですから、離婚をする際に、きちんと養育費の支払いについて約束を交わすか、家庭裁判所で養育費の額を決定してもらうことが大切です。

養育費の算定方法について詳しくは、「離婚時の養育費の相場とできるだけ多くの養育費をもらうための方法」をご参照ください。

19、離婚したくないのに夫から離婚請求されたら、認められてしまう?

法定離婚事由には、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」という規定があります。産後うつも精神病の一種ですから、これを理由に夫からの離婚請求が認められるのではないかと思われる方もいらっしゃると思います。

しかし、産後うつは、強度の精神病とはいえず、一般的には回復可能なものですから、産後うつになったことだけを理由に離婚が認められることはほとんどないといえるでしょう。

ただ、産後うつを発端として、長期間の別居状態が続いてしまっているような場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、裁判所が離婚を認める場合がないわけではありません。

まとめ

子供は夫婦の幸せの象徴ともいえます。と同時に、出産に伴い、どうしても、夫婦二人だけの生活から、子供を中心とした生活に舵を切らざるを得ません。

最近でこそ「イクメン」という言葉が市民権を得てきたように、育児に参加する男性の割合も増えてきてはいます。とはいえ、男性とは違って、出産という大仕事を経た女性は、心身共に大きなダメージを抱えている場合が少なくありません(動物では出産で力を使い果たして死んでしまうものも珍しくないのですから)。

頑張るのと無理をするのは違います。

夫婦に幸福をもたらすはずの出産が、かえって不幸を招いてしまうことの無いように、そして何より可愛い子供のためにも、まずは、母親自身のカラダとココロが健康であることを第一に考えてみてはいかがでしょうか。

監修者:萩原 達也弁護士

ベリーベスト法律事務所、代表弁護士の萩原 達也です。
国内最大級の拠点数を誇り、クオリティーの高いリーガルサービスを、日本全国津々浦々にて提供することをモットーにしています。
また、所属する中国、アメリカをはじめとする海外の弁護士資格保有者や、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも当事務所の大きな特徴です。

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