地盤沈下に関する賠償責任とは?住宅の被害を受けたときの対処法

地盤沈下に関する賠償責任とは?住宅の被害を受けたときの対処法

3、地盤沈下の被害で業者に請求できる内容

本章では、地盤沈下の被害で業者の責任を追及できる場合に、具体的にどのような請求ができるのかについて解説します。

(1)履行の追完(無償での補修請求)

履行の追完とは、契約に適合した目的物を改めて引き渡してもらうことをいいます。

地盤沈下による住宅被害では、買主・注文者は売主・請負人に対して、地盤沈下で損傷した建物の補修工事や、可能であれば地盤改良工事のやり直しなどを請求できます。

(2)代金(報酬)の減額

履行の追完に必要な相当の期間を定めて補修工事などを請求したものの、期間内に履行が追完されなければ、買主・注文者は、不適合の程度に応じて売買代金あるいは請負報酬の減額を請求できます。

履行の追完がそもそも不可能な場合や、売主・請負人側が履行の追完を拒絶したような場合には、買主・注文者は、直ちに売買代金・請負報酬の減額を請求できます。

以上の場合、買主・注文者は、相当な期間を定めて催告する必要はありません。

(3)契約の解除

地盤沈下による住宅の損傷が激しく補修不能な場合には、買主・注文者は直ちに売買契約・請負契約を解除することが可能です。

補修可能な場合であっても、相当な期間を定めて補修等を請求したにもかかわらず、その期間内に補修等が行われない場合にも、契約解除が可能です。

売主・施工業者が補修等を拒絶した場合は、直ちに契約を解除できます。

契約の解除が認められると、契約はなかったことになりますので、売買代金・請負代金の返還も請求できます。

ただし、地盤沈下や建物の損傷の程度が、契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、契約解除が認められないこともあるため注意が必要です。

(4)損害賠償請求

上記(1)~(3)の請求をした場合もしなかった場合も、地盤沈下が原因で買主・注文者に損害が発生した場合には、売主・施工業者に対して損害賠償請求ができます。

賠償請求できる可能性がある損害としては、

  • 補修工事中の仮住まいの費用や引越費用
  • 不動産価値の減少分
  • 破損した家具などの時価
  • (地盤沈下が原因でケガや病気を発症した場合)治療費等
  • (補修工事を拒絶された場合)他の業者に依頼するための費用
  • (契約を解除した場合)登記費用

などが考えられます。

売主・施工業者に不法行為があった場合には、慰謝料の請求が可能な場合もあります。

4、地盤沈下で業者の責任を追及する方法

地盤沈下による住宅被害で売主・施工業者等の責任を追及するときは、以下の手順で手続きを進めていきましょう。

(1)調査と証拠の確保

まずは、地盤沈下の原因や、地盤沈下によってどれだけの損害が発生したのかを調査し、証拠化しておくことが重要です。

地盤の調査は専門の業者に依頼する必要がありますが、先ほども説明したように、地盤調査業者の実力差には大きなばらつきがあります。

建築紛争の解決実績が豊富な建築士や弁護士に相談し、業者を紹介してもらう方がよいでしょう。

建築士・弁護士に相談することで、どのようなポイントについて調査すればよいのかについてもアドバイスが受けられることが期待できます。

(2)内容証明郵便の送付

調査と証拠の確保ができたら、いよいよ相手方となる業者へ損害賠償等を請求します。

請求する方法に決まりはありませんが、最初に内容証明郵便を送付することが一般的です。

そうすることによって、こちらの本気度を伝えることができ、相手方業者も真剣に対応してくることが期待できるでしょう。

内容証明郵便を送付しておくことで、責任追及の期限内に相手方業者に通知をしたことを証拠化することにもなります。

(3)交渉

相手方が内容証明郵便に反応してきたら、トラブル解決のために交渉を行います。

任意の交渉で合意できれば、示談(和解)によってトラブルは解決します。

補修工事については、「新築住宅かし保険」「リフォームかし保険」「中古住宅かし保険」などの保険もありそのような保険を利用することでを前提に交渉による解決も十分に期待できるでしょう。

しかし、損害賠償については売主や施工業者がなかなか応じようとしないケースが少なくありません。

交渉がスムーズに進まない場合は、建築士・弁護士に依頼した方がよいでしょう。

弁護士は、依頼者に代わって業者と交渉してくれます。

(4)調停・あっせん・仲裁

業者との交渉がまとまらない場合には、裁判外紛争処理手続き(ADR)を利用することも有効です。

裁判外紛争処理手続き(ADR)とは、裁判によらず、民事上のトラブルを中立・公正な第三者の仲介のもとに話し合うことによって解決を図る手続きのことです。

具体的には、ADR機関による調停・あっせん・仲裁の手続きを利用することで、公正かつ柔軟な解決が期待できます。これらの手続きは、基本的に無料で利用できます。

住宅紛争に関するADR機関としては、主に次の2つのところがあります。

  • 住宅紛争審査会
  • 建設工事紛争審査会

(5)裁判

裁判外紛争処理手続き(ADR)は話し合いの手続きであるため、必ずしも納得のいく解決が得られるとは限りません。

業者との対立が厳しい場合には、裁判(訴訟)を起こすことが必要となるでしょう。

裁判では、地盤沈下に関する契約不適合や、業者の不法行為、ご自身が受けた損害などを証拠で立証していく必要があります。

住宅紛争に関する裁判手続きは専門性が非常に高く、手続きも複雑ですので、弁護士に依頼することをおすすめします。

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