SDGsと防災教育④ 〜 避難所の生活

SDGsと防災教育④ 〜 避難所の生活

劣悪な環境にある日本の避難所

災害時には避難所が開設されます。大雨による洪水や土砂災害が予想される場合は災害が発生する前に開設されます。テレビのニュースでは、公民館などに身を寄せている避難者が毛布にくるまって寝転んでいる映像が流されます。ほとんどの場合、避難者は少なく、部屋の隅っこなどで所在なげに過ごしています。地震や津波の場合は、災害発生後に避難所が開設されます。家屋の倒壊や流出によって住む場所を失った多くの人々が避難所に身を寄せます。着の身着のままでの避難者がすし詰め状態になる避難所が少なくありません。
東日本大震災の2年半後の2013年(平成 25 年)8月、災害対策基本法が改正され、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」が策定されました。これを受けて内閣府(防災担当)は、2016年(平成28年)4月、「避難所運営ガイドライン」を作成しています。このガイドラインは、「被災者の健康を維持するために『避難所の質の向上』を目指す」ために作成されたものです。その中で、「東日本大震災では、避難所における『生活の質』には課題が多く、水、食料、トイレ等は不十分で、暖房は限定的であり、狭い空間での生活によって、多くの被災者が体調を崩す恐れと隣り合わせの生活であった」と、避難所の劣悪な環境を認めています。その後の熊本地震では、劣悪な環境の避難所を避けて車中泊やテント生活をする被災者も多く、「体調を崩す」どころか、多くの震災関連死を招くほど、被災者・避難者の生活環境は劣悪なまま放置されてしまいました。
国の法律やガイドラインに「良好な生活環境の確保」とか「避難所の質の向上」と明記しなければならないほど、日本の避難所問題は深刻なのです。

(参考)内閣府 防災情報のページ 災害関連死について

SDGsと避難所

外務省のHPで見ると、SDGsの17の目標の中に「3.すべての人に健康と福祉を」があります。英文では“Ensure healthy lives and promote well-being for all at all ages”と書かれており、「すべての年齢のすべての人々に健康的な生活を確保し、幸福で健康な状態を促進する」と訳せばいいのでしょうか。 Well-beingに含まれる「幸福」という意味合いが、外務省の日本語訳には使われていないのが気になりますが、この健康で幸福な状態こそ、避難所が目指すべきものだと思います。ところが日本の避難所はひたすら我慢を強いるところになってしまっています。
「6.安全な水とトイレを世界中に」も「世界中に」を除けば、避難所の必須条件です。英語では“Ensure access to water and sanitation for all”(すべての人々に水と衛生設備の利用を確保する)となっており、ここでもfor allを「世界中に」、sanitationを「トイレ」と訳してしまう感性には疑問符が付きますが、allを避難所にいるすべての人々に置き換えてみると、この目標も日本の避難所が目指すべきものだと理解できます。

関連記事: