残業200時間は危険!続けた人の末路や残業代の金額・請求方法を解説

残業200時間は危険!続けた人の末路や残業代の金額・請求方法を解説

3、残業200時間の残業代はいくらになる?

残業を200時間もしていると残業代の金額が大きくなり、最低でも月に数十万円に達します。

ここでは、残業代がどの程度になるかシミュレーションしてみます(あくまで概算です)。

(1)時給1250円、朝型勤務、残業200時間のCさんの場合

Cさんの労働状況は次のとおりです。

  • 時給1250円(月給20万円程度)
  • 所定労働時間:月~金 8時~17時(休憩1時間)※法定休日は日曜日
  • 実際の勤務時間:月~土 6時~22時(休憩1時間)

→週90時間労働、時間外労働が週50時間、所定出勤日数が1ヶ月あたり20日間であると仮定すると、月200時間

中小企業の場合※中小企業の定義については労働基準法138条参照

1250円×200時間×1.25=31万2500円

大企業の場合

1250円×60時間×1.25+1250円×140時間×1.5=35万6250円

Cさんの場合、残業代の割増率がアップする

  • 深夜労働(22時から5時まで)
  • 休日労働

はありません。

それにもかかわらず、月給20万円程度で月200時間残業すると、残業代は30万円を超えます。

時間外労働の割増率は通常25%ですが、大企業勤めの場合には、月60時間を超える時間外労働の割増率は50%です。

2023年4月以降は、中小企業でも60時間を超える時間外労働の割増率が50%に変わります。

※会社は、労働者に対し、原則として、週1回の休日を与えることが法律上義務付けられており(労働基準法35条1項)、これを法定休日と呼んでいます。そして、下記4(4)のとおり、会社は、この法定休日に労働者を働かせた場合、35%の割増率で残業代を支払わなければなりません。

(2)時給2000円、夜型勤務、残業200時間のDさんの場合

Dさんの労働状況は次のとおりです。

  • 時給2000円(月給32万円程度)
  • 所定労働時間:月~金、9時~18時(休憩1時間)、法定休日は日曜日
  • 実際の勤務時間:月~金、9時~26時(休憩1時間)、土9時~20時(休憩1時間) 

→週90時間労働、時間外労働が週50時間(うち深夜労働20時間)、所定出勤日数が1ヶ月あたり20日間であると仮定すると、月200時間(うち深夜労働80時間)

中小企業の場合

2000円×200時間×1.25+2000円×80時間×0.25=54万円

大企業の場合

2000円×60時間×1.25+2000円×140時間×1.5+2000円×80時間×0.25=61万円

DさんはCさんに比べて給料が高い上に、深夜残業もしているため、金額がさらに大きくなっています。

4、残業200時間分の残業代を請求する前に〜残業代請求が可能な条件について

200時間もの残業をさせる会社では、法律を守る意識が薄く、残業代が全額支払われていない可能性が非常に高いです。

具体的な請求方法の紹介の前に、未払い残業代が発生するパターンについてご紹介します。

たとえば自分は管理職だから残業代の請求は不可能だと考えている人も「名ばかり管理職」であるのならば、未払い残業代の請求が可能です。

そういった請求が可能なパターンを確認していきましょう。

(1)所定労働時間を超えて働いた分に残業代が支払われていない

会社の就業規則などで定められている所定労働時間が、法定労働時間(1日8時間、週40時間)よりも少ないことがあります。

たとえば所定労働時間が9時~17時(休憩1時間)の場合です。この会社で18時まで働くと、17時~18時の残業は、法定労働時間の範囲内であるものの、会社の定めた所定労働時間を超えています。これを法内残業と呼びます。

法内残業には、就業規則等で割増賃金を支払う旨の規定がない限り、割増賃金は発生しないものの、通常の賃金は支払わなければなりません。

(2)法定労働時間を超えて働いても割増賃金が支払われない

法定労働時間を超えて労働すれば時間外労働となり、25%の割増賃金が発生します(労働基準法37条)。

大企業において時間外労働が月60時間を超えた場合には、超えた部分については割増率が50%になります。

(3)深夜労働をしても割増賃金が支払われない

22時~5時に労働した場合には割増賃金を支払わなければなりません。割増率は25%なので、通常の時給の1.25倍を支払う必要があります(労働基準法37条4項)。

また、深夜労働が時間外労働でもある場合には、割増率は合計して50%です。

(4)休日労働をしても割増賃金が支払われない

法定休日(週1日、労働基準法35条1項)に労働した場合には、35%の割増賃金の支払いが必要です。

休日に深夜労働をした場合には、割増率が合計60%になります。

法定休日ではないものの会社が休日としている日(法定外休日)に労働すると、休日労働にはなりません。基本的に通常の時間外労働として割増率が計算されます。

(5)労働時間に含まれるべき時間が労働時間とされていない

法律上は労働時間に含まれるべき時間が、実際にはカウントされていないケースがあります。

たとえば、

  • 制服への着替え時間
  • その場を離れることができない手待時間

などです。

これらが労働時間とされていないと、支給される賃金が少なくなってしまいます。

(6)退勤後に仕事をしている

退勤後に仕事を自宅に持ち帰って仕事をしている場合、労働時間となる可能性があります。

  • 会社が指示している
  • 黙認している

などのケースでは残業に当たる可能性があり、賃金支払いの対象になりえます。

(7)「名ばかり管理職」にあたる

「管理監督者」にあたる場合には、時間外労働や休日労働に割増賃金が発生しません(労働基準法41条2号)。

ただし、「店長」などの名前が与えられていても、実態として

  • 権限
  • 労働時間の自由性
  • 十分な待遇

が認められない場合には「名ばかり管理職」と呼ばれます。

この場合、会社は割増賃金を支払う必要があります。

(8)裁量労働制が適用され、まったく残業代が支払われていない

業務の性質上、労働者の裁量が広い場合には「裁量労働制」が適用されるケースがあります(労働基準法38条の3,4)。

この場合には、実際の労働時間にかかわらず事前に定めた労働時間で働いたものとみなされます。

ただし裁量労働制が適用されていても、深夜労働や休日労働の割増賃金は支払われなければなりません。

すべての残業代が支払われていないケースもあるので注意してください。

(9)裁量労働制の適用条件を満たしていない

裁量労働制を適用するには、業種や職務内容などに条件があります。「名ばかりSE」のように、実際には対象外であるのに裁量労働制を理由に残業代が支払われていないケースがみられます。

(10)変形労働時間制で残業代が支払われていない

変形労働時間制とは、一定の期間内で、特定の日や週については法定労働時間を超えた所定労働時間を定められる制度のことです(労働基準法32の2等)。

しかし、変形労働時間制でも定められた所定労働時間を超えれば、残業代の支払い義務があります。

一切残業代を不要とする制度ではないので変形労働時間制だからといって、残業代の請求を諦めることがないようにご注意ください。

(11)固定残業代制で、みなし残業時間以上に働いている

固定残業代制とは、あらかじめ定めた時間数は残業したものとみなして、定額の残業代を支給する制度です。しかし、定めた時間を超えた分については別途残業代が支払わなければなりません。「いくらでも残業させてよい制度だ」と考えている会社もあるので注意しましょう。

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