親権喪失とは?親権を失わせる親権喪失について弁護士が徹底解説!

親権喪失とは?親権を失わせる親権喪失について弁護士が徹底解説!

親権喪失はどう行われるのでしょうか。

子どもの健やかな成長を守り、大人になるまでの財産を適切に管理するために設けられている「親権」は、通常子どもの父母が共同で行使できるものです。

しかし、たとえば「しつけと称して暴力・暴言を繰り返す」「小さな子どもを長時間1人で放置する」など、児童虐待が常習化しているようなケースでは、最悪の場合親権喪失に至ってしまうこともあります。

そこで今回は、

  • そもそも親権とは?
  • どんな場合に親権喪失が認められる?
  • 親権喪失になるとどうなる?
  • 親権喪失の手続きの流れは?
  • 喪失した親権を取り戻せるって本当?

これらの疑問に、ひとつひとつ詳しくお答えしていきます。

「ついカッとなって子どもに手を出してしまう」

「このままでは子どもを取り上げられてしまうのではないか」

そんな不安を抱えるみなさんにとって、この記事が現在の親権を維持し、子どもとの幸せな生活を守るためのお役に立てば幸いです。

1、親権喪失について知る前に|「親権」とは

まずは、最初に押さえておきたい親権の基本からチェックしていきましょう。

(1)「親権」とは?

親権とは、以下の民法820条で定められている通り、子どもの世話や教育を行う権利であると同時に義務でもあります。

第八百二十条 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

 (引用)https://elaws.e-gov.go.jp

また、平成23年の民法改正で、それまでにはなかった「子の利益のために」という文言が追加されていますが、この背景には世間的にも近年注目を集めている児童虐待の増加があり、子の監護・教育の目的を法律上でも「子の利益のため」と明確に規定することによって、その増加に歯止めをかける効果が期待されています。

①身上監護権

先ほどの民法820条に続く821~823条では、さらに具体的な子の監護・教育の内容が定められており、次の3つの権利をまとめて「身上監護権」と呼びます。

  1. 居所指定権:親権者が子どもの住まいを指定する権利
  2. 懲戒権:親権者が子どもにしつけを行う権利
  3. 職業許可権:親権者が子どもが職に就くことを許可する権利

ただし、2つ目の懲戒権に関しては、児童虐待を防ぐ目的から現在見直しが行われており、たとえ親であっても子どもへの体罰は禁止とする方向で話が進んでいます。続報を待ちましょう。

②財産管理権

身上監護権ともうひとつ、親権の概念を支える上で大きな柱となっているのが、こちらの財産管理権です。

第八百二十四条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

 (引用)https://elaws.e-gov.go.jp

ここで示されている「管理」には財産を処分することも含まれていますが、その扱いには親権者自身の財産の管理と同等の注意義務が定められています。(民法827条)

また、続く民法828条では、子の養育や財産の管理にかかった費用は子の財産の収益と相殺できることが記されており、これを「収益権」と呼ぶこともあります。

(2)親権に服する「子」とは?

そもそも、ここまで見てきた親権を行使される「子」とは、法律上どのように定められているのでしょうか。

その答えは民法818条1項にあります。

第八百十八条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。

 (引用)https://elaws.e-gov.go.jp

つまり親権に服するのは「未成年」の子を指しますが、未成年でも婚姻した場合は民法上成年に達したとみなされ、親権の対象外となるので覚えておきましょう。

(3)親権者は誰?

続いて、「親権者」についても考えられるケースをご紹介していきます。

①実子に対する親権者

一般的には、子の実の両親が共同親権者となります。

②養子に対する親権者

子が養子の場合は、その養父母が親権者となります。

③離婚した夫婦の子どもの親権者

夫婦が離婚するときには、子どもの親権をどちらが持つのかを事前に話し合って決めなければなりません。

話し合いで決着がつかず調停や裁判で親権を争うことになるパターンもあり、その際には裁判所が親権者を決定します。

ただし、子どもが生まれる前に離婚に至った場合には、原則として母親が親権者となります。

これは出生後、父母の話し合いや審判によって父親に変更することも可能です。

④非嫡出子の親権者

法律上、婚姻関係のない男女の間に生まれた子どものことを非嫡出子といい、この場合の親権者は母親となります。

父親が自分の子であることを認知し、話し合いや審判の結果によっては父親に変更することも可能です。

⑤父母が死亡した場合の親権者

父母が死亡した場合、子の親権者はいなくなり、代わりに民法838条で定められている「後見」が開始されます。

この制度によって選出された未成年後見人は子の法定代理人となるため、たとえば子どもが高校や大学へ進学するときの願書や、一人暮らしの部屋を借りるときの契約などに同意できるようになります。

未成年後見人は家庭裁判所の審判で決定し、一般的にはおじやおばなどの親族が選ばれるケースが多いでしょう。

2、親権喪失とは?やさしく解説

ここからは、今回のメインテーマである親権喪失について詳しく解説していきます。

(1)どんな場合に親権喪失になるの?

親権喪失とは、文字通り民法で定められた親権を失うことを指し、子ども本人や親族、未成年後見人などから請求を受けた家庭裁判所の審判によって決定します。

第八百三十四条 父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

 (引用)https://elaws.e-gov.go.jp

ここで気になるのが「一体どんな場合に親権喪失が認められるのか?」という疑問ですが、参考までにいくつか具体例を見ていきましょう。

①父または母による虐待・悪意の遺棄があるとき

    • 子どもに暴力を振るっている
    • 子どもに食事を与えない
    • 具合の悪い子どもを病院に連れて行かない など

②父または母による親権の行使が著しく困難、または不適当であるとき

    • 重度の疾患や中毒症状(薬物・アルコールなど)がある
    • 服役中である など

重要なのは、これらの状況によって「子の利益を著しく害する」ということが親権喪失の大きな要件になっていることです。

親権喪失は、親子関係にとってこれ以上ないと言っても過言ではないくらい、強いインパクトをもたらす審判になります。

そのため裁判所も慎重に判断を行う傾向があり、公開されているデータによると平成29年に親権喪失が認められたケースは119件の申請のうち28件でした。

(参考)http://www.courts.go.jp/vcms_lf/20180420zigyakugaikyou_h29.pdf

(2)親権喪失になるとどうなるの?

親権喪失が決定すると、まるで自分がもう子どもの親ではなくなってしまったかのようなショックを受ける方も珍しくありませんが、法律上の親子であることに変わりはなく、状況としては離婚によって親権を相手に譲ったほうの親のケースと似ています。

実際の生活では、子どもと一緒に暮らすことができなくなる、子どもの日々の教育や財産の管理を行うことができなくなるという点が大きな変化になるかと思いますが、必要に応じて養育費の支払いを行ったり、面会が認められたりするケースもあるでしょう。

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