3、親権喪失の手続きとは?わかりやすく解説
それでは、実際の親権喪失の申し立てはどのような流れで行われるのでしょうか。
手続きのポイントをまとめてご紹介していきます。
(1)申し立てできる人
親権喪失の申し立てを行うことができるのは、次の立場にある人です。
- 子ども本人
- 子どもの親族
- 未成年後見人
- 未成年後見監督人
- 検察官
(2)必要なもの
親権停止の申し立ては、次の書類等を揃えた上で、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所で行います。
- 申立書
- 子どもの戸籍謄本
- 現在の親権者の戸籍謄本(子どもと同じ戸籍に入っている場合は不要)
- 申立人の戸籍謄本(子ども本人または検察官が申立人の場合は不要)
- 申し立ての理由を示す資料
- 認印
このほか、窓口で申立人の身分証明書を提示する必要がありますので忘れないようにしましょう。
(3)審判までの流れ
申し立てから審判までの基本的な流れは以下の通りです。
- 家庭裁判所に申し立てを行う
- 申し立てが受理されると、家庭裁判所から申立人に審問期日(詳しい事情を聞くための日取り)が通知される
- 審問当日、親権者が現在どのように親権を行使しているかを裁判所に伝える
- 申立人の訴えに対して、親権者からの反論を聞くための審問期日が親権者に通知される
- 審問当日、裁判所が親権者の言い分を聞く
- 家庭裁判所調査官が実際に子ども本人や親族などの関係者と話し、調査を行う
- 調査結果をふまえて申立人・親権者の両方から意見を聞く
- 最終的な審判を行う
4、似て非なる親権関連制度は2つ
民法には、親権喪失と少し似ている制度が他にも2つ存在します。
それぞれの特徴や親権喪失との違い、実際にどのようなケースで認められるものなのか具体例もあわせてご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
(1)親権停止
親権停止は平成23年に導入されたばかりのまだ比較的新しい制度で、親権者によって子どもの利益が害されているときに、最大2年間の期限付きで親権を停止することができるという内容のものです。
親権停止が新設されるまで、親権を制限する制度には今回もご紹介している親権喪失しかなく、これには期限も特に設けられていなかったことから、親子関係を半永久的に断絶してしまう恐れがあると考えられていました。
そのため周囲の人間も申し立てには躊躇してしまうことがほとんどで、対応が遅れた結果さらなる悲劇を招くといったケースも決して少なくはなかったのです。
こういった背景から誕生した親権停止は、最大2年間で親子関係の修復を目指していくことに重きが置かれており、虐待を受けている子どもを守る一時的な措置としても広く活用されています。
実際、制度導入から6年が経過した平成29年には、親権喪失の119件を大きく上回る231件の申し立てがあり、そのうち親権停止が認められたのは67件、却下が32件、審判前の取り下げが124件、その他が8件という結果です。
(2)管理権喪失
管理権喪失とは、親権のうち子どもの財産を管理する権利である「財産管理権」のみを行使できなくするための制度で、たとえば親が子どもの貯金を自分のために使い込んでしまった場合などに認められるケースがあります。
親権全体ではなくあくまでも財産管理権のみの喪失なので、親権者が身上監護権を持っている場合、引き続き子どもと一緒に暮らすこと自体はできるでしょう。
配信: LEGAL MALL