3、面会交流を拒否できないケース
一方で、面会交流を拒否できないのはどのようなケースなのでしょうか。
ここまで説明したように、面会交流を拒否できるのは、相手方に会わせることが子供の福祉に反する場合でした。
ということは、相手方に会わせても子供の福祉に反しない場合には、面会交流を拒否することは認められないことになります。
親の都合によるもので、子供と直接関係のない理由が考えられます。具体的には、以下のような場合です。
(1)養育費を払っていない
養育費を支払うことは、面会交流実施の条件ではありません。
そのため、相手方が養育費を支払わないからといって面会交流を拒否することはできません。
逆にいえば、他の正当な理由で面会交流を拒否している場合に、相手方がそれを理由に養育費の支払いを拒むことも許されません。
養育費の支払いと面会交流をさせるかどうかは、全く別の問題として考える必要があります。
(2)面会相手方が有責配偶者だった
両親がどのような原因で離婚したのかは、子供には直接関係のないことです。
そのため、相手方が有責配偶者であったとしても、面会交流を拒否することはできません。
相手方の不倫やモラハラ、浪費などによって離婚した場合でも、相手方には自分の子供と面会交流をする権利があります。
面会交流の拒否が許されるのは、あくまでもそのような相手方と面会交流をさせることによって子供の福祉に反するような具体的なおそれが認められる場合のみです。
ご自身が有責配偶者であった場合にも、面会交流が子供の福祉に反する具体的なおそれがある場合には、面会交流を拒否することができます。
どちらが有責配偶者であったかということも、面会交流とは全く別の問題です。
(3)面会相手方が親権者にモラハラをする
離婚後も、元夫婦が面会交流などの用件で連絡を取り合う際に、相手方が親権者に暴言を吐くなどのモラハラをするケースが考えられます。
しかし、当事者間のモラハラも基本的には子供には直接関係のないことであり、両親の間でのモラハラがあるだけでは面会交流を拒否することはできません。
両親の間でモラハラがある場合でも、特に両親が激しく対立しているような場合には、面会交流に対して親権者自身の精神的負担が大きいといえます。
モラハラが原因で親権者の精神が不安定になってしまうことで、子供の養育に悪影響を及ぼすことも考えられます。
また、相手方が親権者を傷つける場面を子供が見聞きすることで、子供の精神状態に悪影響を及ぼすこともあるでしょう。
モラハラが原因で子供の福祉に反する程度に影響が大きいと判断される場合には、面会交流を拒否することも許されます。
4、一方的に面会交流を拒否した場合のリスク
ここまで、面会交流は正当な理由がなければ拒否できないことを説明してきました。
では、正当な理由がないにもかかわらず、一方的に面会交流を拒否した場合にはどのようなリスクがあるのでしょうか。
一方的な拒否は、相手方の面会交流権を不当に侵害するという点で違法となり、相手方から以下のような訴えを起こされる可能性があります。
(1)履行勧告
「履行勧告」とは、調停や審判で面会交流が認められている場合に、その内容を守らない当事者に対して家庭裁判所から指導や説得が行われることです。
相手方から履行勧告の申し立てが行われると、家庭裁判所から「面会交流を実施するように」との連絡が来ます。
もっとも、履行勧告は強制的なものではないので、応じなくてもペナルティがあるわけではありません。
(2)強制執行
履行勧告を無視していると、相手方から強制執行を申し立てられる可能性があります。
もっとも、強制執行とはいっても、子供が強制的に連れ出されて相手方と会わせられるわけではありません。
面会交流に応じなければ金銭の支払いを命じられるという形で、面会交流が強制されるのです。
このような強制執行のことを「間接強制」といいます。
支払いを命じられる金額は、収入やその他の事情を考慮して家庭裁判所が決めます。
面会交流の拒否1回につき、5万円~10万円程度が相場的です。
裁判所の決定ですので、子の金銭も支払わない場合には給料などの財産が差し押さえられるおそれがあります。
(3)損害賠償請求
一方的に面会交流を拒否することは、相手方の面会交流権を不当に侵害する不法行為であり、約束を守らない債務不履行です。
そのため、相手方から不法行為あるいは債務不履行に基づく損害賠償として、慰謝料を請求されるおそれもあります。
裁判例でも、このような損害賠償請求が認められた事例がいくつもあります。
慰謝料の相場は数十万円程度ですが、事情によってはさらに高額の慰謝料に支払いを命じられることもあるので注意しましょう。
配信: LEGAL MALL