今年こそ、夏バテに負けない!「東洋医学×食事」で考える夏バテの原因と対策

食欲がなくなり、だるさが増す「夏バテ」。東洋医学で考えると、夏バテは1年の疲れが影響しているそう。
夏を乗り切るための方法を、漢方薬剤師の樫出 恒代先生にお聞きしました!

夏バテはなぜ起こる?東洋医学で考える夏バテとは

写真:女性が辛そうに額に手を当てているイメージ

気温が上がり、空気が湿気を帯びる季節の到来。
食欲が落ち、気だるさが身体を覆う「夏バテ」の季節でもありますが、東洋医学の視点からみると、意外な発見がありました。

「東洋医学で夏バテは、1年を通した身体の巡り(めぐり)に関係した症状と考えられています。春や、さらには冬からの疲れが原因の場合も」と樫出先生は話します。

東洋医学でよく聞く、身体の“巡り”や“疲れ”とは、いったい何なのでしょうか

東洋医学では、1年を通した身体の状態を考える

身体は本来、春夏秋冬、4つの季節に自然と適応するようにできているそう。

「夏は汗をかき、ストレスも発散できる一番のデトックス季節。夏にデトックスできれば、秋には栄養補給に適した身体がつくられ、冬にはその栄養分を温存できるようになります。冬に保った栄養で、春のスタートにエネルギーを放出するというのが理想的な身体の状態ですが、その循環のどこかが欠けると“夏バテ”として症状に出てくるんです」と樫出先生。

つまり、夏バテの対策は春から。夏バテしやすい方などは、冬の段階から取り組むのがおすすめなのです。
でも不調に気づいた時点から、改善していく方法もあるそう。

東洋医学の、“巡り”や“疲れ”の意味

ちなみに、東洋医学でいう“巡り”とは、生命エネルギーである「氣」※1
と、栄養としてとらえる「血」、リンパ液などの「水」の3つが、互いに充分に補われ循環する様をあらわします。これらの氣―血―水の調和が乱れると、巡りが悪くなり、“疲れ”となって身体に表れるそう。生理的な疲れや体調不良はもちろん、巡りの悪さによってメンタル面にも影響があり休息を必要とする状態が、東洋医学的な“疲れ”といえます。

※1 「氣」という字は、部首が天の気(エネルギー)を、米が地の気を表しており、天と地の気の間に人がいるという状態を表している。氣が足りない時には、天の気である呼吸法を取り入れ、地の気が集約された旬の食物をいただくことで、身体中に氣をまわしていくことができると考えられている。

食欲不振にも理由がある

また、夏バテの症状というと、真っ先に食欲不振を思い浮かべる方が多いと思いますが、東洋医学的にはこれも当然のよう。

「胃腸はお腹の中心で、“氣”をつくって巡らせていく場所。氣が減ったり、氣の流れが乱れると胃腸に不調があらわれ、栄養分がうまく吸収できなくなります。胃腸が整ってこそ3度の食事を摂ることができますし、その食事から栄養素を吸収して氣や血としてまわしていくことができるんです」と樫出先生。

すでに夏バテの兆候があったり、巡りの悪さや疲れを感じている人は、どうしたらよいのでしょうか?
まずは以下に挙げるセルフチェックで、自分の身体の状態を確認してみましょう!

舌とお腹を確認!漢方的セルフチェックで、夏バテサインを見逃さない!

写真:女性が辛そうにお腹を押さえてるイメージ

樫出先生いわく、身体の状態を知るために、一般の方々にもできるチェック方法があるそう。

「舌の状態をみる舌診と、お腹を触る腹診は、はじめてでも行いやすいはず。最後のチェック項目と一緒に確認してみましょう」。

チェック1:舌診で夏バテチェック

【A】【B】

舌を鏡に映し、舌の表面にある舌苔(ぜったい)の状態を観察する。理想はきれいな薄ピンク色の舌で、うっすらと苔がついている状態。【A】のように白い舌苔があったり、灰色っぽい舌苔がついている場合は、身体が疲れ食欲不振に陥っている。【B】のように、舌の真ん中部分に苔が濃かったり、亀裂がある場合は、すでに胃腸が疲れているという現れ。

チェック2:腹診で胃腸チェック

ギュ~~~・・・

仰向けに寝て、へその下を両手で軽く押す。跳ね返るような弾力がなく、マシュマロのように沈み込む感触があれば、漢方的には腎※2
が弱っている証拠。体力・氣力が落ち、すでに夏バテに突入しているか、放っておくと夏バテになる可能性がある。へそ回りを軽く押して弾力がなかったり、冷えている時は胃腸の働きが落ちているサイン。

※2 東洋医学の「腎」は、成長や発育、生殖などにかかわる泌尿器、生殖器、腎臓の働きを指し、生命力のもとと考えられている。

チェック3:チェックリストで最終夏バテチェック

  • 朝は食欲がわかない
  • さっぱりしたものが食べたくなる
  • 冷たいものが食べたい
  • 食事のあと、すぐに眠くなる
  • 細切れの便が出る
  • 倦怠感がつづいている
  • 慢性的に眠気を感じる

舌を見て、お腹をさわり、さらに最後のチェック項目で該当するものが多いほど、巡りが悪く、疲れを溜めこんでいることがわかります。結果的に、これからの季節に身体がうまく慣れず、最終的に夏バテにいたってしまう可能性があります。

それでは、夏バテの予防や、症状の軽減のためには、何をすればよいのでしょうか?

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