差し押さえるものがない場合の強制執行はどうなるのだろう……。
借金の返済が苦しくなった人の中には、以上のようなことが気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
強制執行とは、簡単にいうと差押え手続きのことです。
結論からいいますと、差し押さえるものがない以上、強制執行を受けることはありません。
しかし、そうだからといって借金を放置していても返済義務が免除されるわけではありません。
給料や何らかの財産を得る場合には、差押えを受ける可能性が高いくなってしまいます。
今回は、
- 強制執行で差し押さえの対象となる財産は?
- 差し押さえるものがない場合の強制執行はどうなる?
- 差し押さえるものがない以上、借金を放置しても大丈夫?
などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が分かりやすく解説していきます。
この記事が、借金の返済が苦しくなり、差し押さえるものはないと思うけれど、借金をどのように処理すればよいのかとお悩みの方の手助けとなれば幸いです。
強制執行されたらどうなるかについては以下の関連記事をご覧ください。
1、差し押さえるものがない人も知っておくべき「強制執行」とは?
強制執行とは、何らかの金銭支払い義務を負った人(債務者)がお金を支払わない場合に、債権者の申立てに基づき債務者の財産を差押える手続きのことです。
債権者は、差し押さえられた財産を換金するなどして、強制的に債権の回収が可能です。
債権者としては、お金の支払いを請求できる法律上の権利を有していても、債務者が支払わなければ損をしてしまいます。
強制的に債権を回収する手段として、「強制執行」の手続きが民事執行で定められています。
銀行や消費者金融からの借金以外にも、
- クレジットカードの利用代金
- 個人からの借金
- 税金・社会保険料
- 公共料金
なども含めて、あらゆる金銭支払い義務について、滞納を続けた場合には債権者から強制執行を申し立てられる可能性があるのです。
2、どのような財産が強制執行で差し押さえられる?
では、強制執行を申し立てられた場合、どのような財産が差押えられるのでしょうか。
差押えの対象となる財産と、差押えが禁止されている財産とに分けてみていきましょう。
(1)差し押さえの対象となる主な財産
財産には、現金や債権、不動産、動産といった種類があります。
金銭的価値のある財産は、種類を問わず、後にご説明する差押禁止財産を除いてすべて、差押えの対象となります。
その中でも、特に差し押さえられることが多い財産は、以下の3つです。
- 給料
- 預貯金
- 不動産
多くの場合は、まず給料や預貯金が差し押さえられ、それでも債権全額を回収できなかったときに不動産が差し押さえられます。
なぜなら、給料と預貯金は多くの人が有している財産である上に、債権を回収する手続きが比較的容易だからです。
ただし、住宅ローンのように債権者が不動産に抵当権などの担保を設定している場合は、最初に不動産が差し押さえられます。
(2)差押禁止財産とは
差押禁止財産とは、債務者が最低限の生活を維持するために必要な財産として、法律で差押えが禁止されている財産のことです。
民事執行法で差押えが禁止されている財産として、主に以下のものがあります(同法第131条、第152条)。
- 生活に欠かせない衣服、寝具、家具、台所用具、畳、建具
- 1ヶ月分の生活に必要な食料及び燃料
- 66万円以下の現金
- 仕事に必要不可欠な器具など
- 給料、退職金、ボーナスのうち、原則として手取り額の4分の3に相当する金額
- 給料、退職金、ボーナスの手取り額が44万円を超える場合は、33万円
この他にも、公的年金の受給権(国民年金法、厚生年金法)や生活保護の受給権(生活保護法)についても、それぞれの法律で差押えが禁止されています。
このように、たとえ差し押さを受けたとしても、あらゆる財産が処分されるわけではなく、最低限の生活は保障されるようになっているのです。
配信: LEGAL MALL