総務の責任者30代
経営者が突然「景気付けだ、社名を変えるぞ!手続は任せる!」と言い出しました。
社名変更といえば、商号変更です。そんな簡単なことではないでしょう。手続を間違ったら大変です。類似商号などとして、ケチをつけられても困ります。
どうすればよいのでしょうか?
商号を変えるのは、単なる手続論ではなく、会社の未来を築く礎です。
本稿では、商号変更のルール、商号の決め方のヒント、商号変更の手続のポイントなどを、わかりやすく解説します。
この記事が、新商号によるあなたの会社の新しい出発の起点となることを願っています。
(なお本稿では、会社など法人の商号変更について解説いたします。個人の屋号や商号については、特に触れておりません。)
1、商号のルール
まず、商号を決める際の基本的なルールを確認しておきましょう。
(1)商号とはそもそも何か(商標との違い)
会社の商号とは、会社が営業上、自己を表示するために用いる名称です。どんな名称を用いるかは、原則として自由です(商号選定自由の原則(商法第11条、会社法第6条1項))。
但し、いくつか守るべきルールがあり、次項以下で説明します。
なお、商号と似た言葉で「商標」があります。
前述のように「商号」は、会社が営業上、自己を表示するための名称であり、法務局が管轄します。
一方、「商標」は、商品やサービスに付けられるマーク(標識)であり、特許庁が管轄します。
著名な商標を自社の商号として勝手に使ったりしたら、不正な対応として厳しい制裁があります。
商号選定の際には、登録済みの商標等についてもチェックが必要になります。
(表の出典)東京都知的財産総合センター「中小企業経営者のための商標マニュアル」
*「権利の及ぶ範囲」について特に注意が必要です。
「商号」:かつては、同一の市町村内については、同一営業目的で、他の会社と同一もしくは類似する商号は登記できませんでした。
現在では、この規制は撤廃され、同一番地でない限り、自由に商号を決定できます。
逆に言えば、商号は権利として、それほど強く守られてはいません。商号を本当に守りたいのならば、「商標」として登録してしまうのも一つの手です(後述)。
「商標」:この権利は、日本全国に及び、強く保護されます。
例えば、遠隔地の名産品の商標であることを知らずに、自社製品等に使ってしまうと、商標権の侵害になります。
(2)商号決定で守るべきルール(その1「会社」の種類の明記)
①会社の種類を明示すること(会社法第6条)。
株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従って、商号の中に会社の種類を表さなければいけません。
②会社でないものが、会社と誤認されるような名称・商号を用いてはいけない(会社法第7条)。
③他の会社と誤認されるような商号を用いてはいけない(会社法第8条)。
(3)守るべきルール(その2:同一商号・同一本店の禁止)
他の人が既に登記した商号と同一で、かつ、その営業所(会社にあっては、本店)の所在場所が、当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、登記できません(商業登記法第27条)。
(4)守るべきルール(その3:使用できる文字が限られている。)
商号の登記に用いることができるのは、日本文字のほか、ローマ字その他の符号で法務大臣の指定するものに限られます(商業登記規則第50条、平成14年法務省告示315号)。
(参考)法務省「商号にローマ字等を用いることについて」
商号の登記に用いることができる符号(概要)
(1)ローマ字(大文字及び小文字)
(2)アラビヤ数字
(3) 「&」(アンパサンド)
「’」(アポストロフィー)
「,」(コンマ)
「-」(ハイフン)
「.」(ピリオド)
「・」(中点)
(5)守るべきルール(その4:他にも注意事項がある。)
上記以外に、商号の決定・使用については、公序良俗違反や不正目的での使用禁止という大原則があります。
①公序良俗に反する商号は、使用できない(民法第90条)。
どのような商号が公序良俗に反するかは、会社の事業目的との関連をも考慮して、個別に判断する必要があります。
②不正の目的による商号使用は禁止(会社法第8条)
不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある商号を使用することは禁じられています(会社法第8条第1項)。
③不正競争防止法による制限(同法第2条第1号、2号など)
他人の商号や類似の商号などを勝手に用いて、他人の商品や営業と混同させる行為や、自己の商品等の表示について、他人の著名な商品等表示や類似のものを使用するのは「不正競争」であり、不正競争防止法により禁止されています。
商号のみならず商標についても、同様に規制されます。
(参考)不正競争防止法は公正な競争を守るための法律です。
様々な類型の行為を「不正競争」として、民事上の制裁や刑事罰など厳しい規制を課しています。
詳細は次をご覧ください。経済産業省「不正競争防止法の概要」
2、商号変更〜新しい商号の決め方のヒント
あなたの会社にふさわしい商号を、どのように決めていけばよいでしょうか。
(1)商号に入れることを考えるべき事項
例えば次のような項目が考えられます。
①事業内容
代表的な商品やサービスがあるならば、それにちなんだ名前も商号にふさわしいでしょう。
いくつもの事業をやっている場合なら、代表的な事業の名称にするのか、もっと大きな括りの名前をつけるか、なども検討しましょう。
②地名
現住所に限りません。創業の地などゆかりの地名を入れることも考えられます。
③個人事業時代の屋号・商号
法人成りしたばかりなら、個人事業時代の屋号・商号を使う、あるいは創業者など会社として大切な方の名前を使うなどです。
④会社の経営理念や夢を取り込む
会社として、世の中に訴えかけたい経営理念や夢などがあるなら、商号に取り入れることを考えてみましょう。
(2)選定者のセンスが問われる
大切なことは、社内の人にも社外の人にも親しみやすく、すぐ意味がわかることです。
しゃれた横文字・外国語などは、特別な事業でない限りお薦めできません。
何をやっている会社なのかすぐわからない、というのは「営業上、自己を表示する」という商号本来の意味から外れます。
発音しやすいことも大事なポイントです。口に出して発音しやすいこと、聴いてみて心地よく感ずることなども大事なポイントです。
(3)5Iの法則(ファイブ・アイのほうそく)
効果的な広告表現、販促物の制作表現の基本理念として必要な5要素です。
このようなポイントからも検討してみてください。
Idea(アイデア)、Inpact(インパクト)、Interest(興味)、Information(情報)、Impulsion(衝動)の頭文字を取ったものです。
配信: LEGAL MALL